第131話 お馬さん

 ここの精霊樹はまだマシだった。自分でしっかりと立っているし、輝きもある。今までの精霊樹の事を思えば、ずっと元気な方だ。

 それでも、ハルが詠唱すると輝きが全然違ってくる。精霊樹自体が輝き出す。


「ハルちゃん、精霊樹が元気になったなー」

「おう」


 カエデも見える様になったから、嬉しいらしい。目をキラキラさせながら見ている。

 カエデは何もできないけれど、今まで見えないものがコハルの裏ワザで見える様になった。それだけでも大きく気持ちが違うらしい。


「ひぽ、しぇいりぇいじゅうを呼んれくりぇ」

「ぶも」


 待ってましたと、ヒポポが一歩前に出る。


「ぶも!」


 ヒポポが一鳴きすると、出て来た精霊獣。意外にも大型だった。


「うおッ、でけーな」

「ふむ、元気だな」

「あれか? 騎士団の基地の中だからか?」

「リヒト様、関係ありますか?」

「いや、だって騎士団は乗るだろう?」

「確かにそうですね」


 そこに現れた一頭の精霊獣。それは馬さんだった。いつもは小さな精霊獣なのに。

 体は白というよりも、淡いブルーに光っている。

 出てくるなり、ヒヒーンと一鳴きしてブルルルと顔を振りながら鼻を鳴らした。そして、迷わずハルに顔を擦り付ける。

 その背中には、体に似付かわしくない小さな葉っぱが2枚。羽の様に並んでいる。この小さな葉っぱで飛んでいるのか? 力不足ではないのか?

 尻尾の先端にも、葉っぱが2枚だ。ヒョコヒョコと動いている。

 額の白斑が鼻筋の方に流れて入っていて、瞳は優しく澄んでいる。体躯も申し分ない。元気な精霊獣だ。

 ハルの手を舐めていたかと思うと、ハムハムと咥えている。


「アハハハ! 腹減ったのか? おやちゅ食うか?」

「ぶもッ」

「え、しょうなのか?」


 ヒポポが何か言っている。


「ハル、ヒポポは何て言ってんだ?」

「しぇいりぇいじゅうは、おやちゅを食べねーって」


 そりゃそうだ。と、言ってもヒポポはがっつり食べているが。


「ハルちゃんが、ヒールしてあげたから元気になったのよぅ」

「しゅしゅ、しょうなのか?」

「そうよぅ〜」


 ミーレの腕の中からピョンと飛び降り、シュタッと地面に着地したかと思ったら、元の大きな白虎の姿に戻っていた。


「ふぅ〜、やっぱこの方がいいわぁ〜」


 グググッと体全体で伸びをしている。この国では仕方ない。もう少しの我慢だ。やっと3層までやって来た。あとは2層と城のある中央だ。


「コハル、植えておくか?」

「はいなのれす。ここも植えるなのれす」


 何処からか、コハルが精霊樹の実を取り出した。


「どんどん植えるなのれす」


 次から次へと、コハルの手から地面へと吸い込まれていく。


「何回見ても神秘的やなぁ」

「見惚れちゃうわよね」

「な、ミーレ姐さんそうやんな」

「乗りぇねーのかな?」

「ハル、精霊獣だぞ」

「らって、ひぽにも乗りゅじょ」


 確かにそうだ。ヒポポも精霊獣だ。ちょっぴり変わったお惚けカバさんではない。


「長老、頼むなのれす」

「よし、任せなさい」


 長老が魔法杖を出した。また思いきりやるのだろう。この国の精霊樹は元気がないから、それくらいで丁度良いのだろう。と、いう事にしておこう。


「ピュリフィケーション……ヒール」


 長老がそう軽く詠唱すると、辺り一帯に白い光が降りてくる。そして、たった今コハルが植たばかりの精霊樹の実からポコンと芽が出てグングンと若木へと成長していく。


「長老、半端ねーな」

「リヒトでも出来るだろうよ」

「いや、敵わねーな」


 リヒトが素直に、長老には敵わないと言っている。

 流石、エルフ族の長老だ。長老は魔法を使うだけでなく、魔道具や魔法杖、それにステータスタグを作ったりしている。

 その所為もあるのだろう。魔力操作が飛び抜けて上手い。

 例えば、長老とリヒトが同じ魔力量だったとしても、長老の方がより効率よく魔力を使えるのだ。

 それは、経験値の差だ。年の功ともいう。


「ひぽ、しぇいりぇいじゅうをよんれくりぇ」

「ぶももッ」


 もう慣れたものだ。ヒポポがここは自分の番だよと、一歩前に出る。


「ぶもッ」


 ヒポポが一鳴きすると、今コハルが植えたばかりの精霊樹から精霊獣が飛び出してきた。


「アハハハ、元気いーな!」

「これは、見事だな」

「素敵じゃない」


 精霊樹から出てきたのは、見事な毛並みのお馬さんだ。だが、色がカラフルだ。

 淡いブルーに光っているお馬さんが一番多いが、他にも真っ白だったり、クリームイエローだったり。かなりカラフルだ。

 どのお馬さんも、背中と尻尾には2枚の葉っぱがヒョコヒョコと動いている。

 そして、嬉しそうに空中を駆けている。


「きりぇーらな」

「ハルちゃん、そうね」

「みんな元気なのれす」

「ぶも」

「にゃぁー! なんか感動するにゃぁー!」

「カエデったら、ふふふ」

「本当、感動するわよね! 涙が出ちゃうわ」


 白い奴はよくそう言っているが、いつも涙を流してはいない。

 今は皆が精霊樹や精霊獣が見えている。その所為か、これまでより盛り上がっている。感動のシーンらしいぞ。


「いつもこんな事をしていたんだな」

「そうですね、リヒト様。見えると全然違いますね」

「本当だ。大切な事をしているんだって思うな」

「本当ね。ハルもしっかりしなきゃ」

「アハハハ。ミーレ、ハルかよ」

「だって、いつもワールドマップが見れないとか言ってるじゃないですか」

「確かにな」


 そうだよ、ハルちゃん。ミーレが言う様に、そろそろしっかりワールドマップを活用できるようになろう。




 ◇◇◇


お読みいただき有難うございます!

ハルちゃんのイラストがどんどん出来上がってきています。

早く皆様に見て頂きたいぃ!

公開可能になったら、直ぐにお知らせしますね。

楽しみにして頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします!

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