第117話 シュシュとは違う

「おー、はりねじゅみ!」

「小さくて、可愛いなぁ〜」


 見える様になったカエデだ。やはり、見えているとテンションが違う。

 ハルと一緒になって、可愛いと盛り上がっている。


「ピーピー」

「お? ないてんのか?」

「ハルちゃん、聞こえたやんな?」

「おー。ぴーぴー」

「アハハハ、ハルちゃんそれ鳴き真似なんか?」

「しょうら。ぴーぴー」

「なんでお尻振るねん。ハルちゃん、めちゃ可愛いやん。アハハハ!」


 ハルが鳴き真似をしながら、お尻を振っている。ハルちゃん、よくお尻を振ってるよね。癖なのか? 可愛いぞぅ。


「コハル、植えるか?」

「はいなのれす」


 コハルが両手を広げ、次から次へと精霊樹の実を取り出す。クリスタルのりんごの形をした精霊樹の実は、フワリと浮いて地面へと吸い込まれて行く。


「どんどん植えるなのれす」


 コハルが精霊樹の実を、植えているのもカエデにとっては新鮮だった。


「マジかぁ。あんな風に実が吸い込まれていくんや。コハル、凄いんやなぁ」

「ね、とっても神秘的でしょう〜?」

「ほんまやなぁ」


 カエデが見惚れているぞ。何故にシュシュが自慢しているのか?


「長老、お願いなのれす」

「任せなさい」


 ああ、また長老はやり過ぎるのだろう。

 長老が、魔法杖を出した。

 長老の魔法杖は、グリーンにゴールドが煌めく球体がついたエンブレムだ。勿論、世界樹の枝で出来ている。

 その杖を掲げて静かに詠唱する。

 いつも軽く詠唱している様に見えるのだが効果は絶大だ。


「ピュリフィケーション……ヒール」


 精霊樹だけでなく、辺り一面にキラキラと光りながら白い光が降りていく。

 すると、地面に吸い込まれていった精霊樹の実。そこからポコンポコンと芽が出てグングンと伸びていき若木になり、見る見るうちに成木となった。元気にキラキラと光っている。


「うわぁ〜、長老スゲーやん」


 いちいちカエデが感嘆の声を上げている。初めて見るから反応が新鮮なのだな。


「今まで、全然見えへんかったんやけど、こんな凄い事をハルちゃんや長老はしてたんやなぁ」


 そうなのだよ。ただ、お尻を振っていただけではないのだ。ね、ハルちゃん。

 そして、またヒポポが一鳴きする。


「ぶもぉ」


 すると、たった今成木となったばかりの精霊樹から、ワラワラと精霊獣が出てきた。

 小さなハリネズミがいっぱいだ。しかも、色とりどりだ。精霊獣というのは、色とりどりが基本なのか?

 いや、ヒポポは普通のカバさんと同じ色をしているぞ。


「ピーピー」

「キューキュー」


 と、鳴きながらハルとヒポポに近寄ろうと、パタパタと背中の羽を動かしている。が、進んでいない。


「アハハハ、進めてねーじゃん」

「かぁわいいなぁ〜。ぴーぴー、きゅーきゅー」

「ハルちゃんは精霊獣にも好かれてるんやなぁ」

「なんだ、カエデ」

「だってリヒト様。精霊獣がみんなハルちゃん目指してるやん」

「おう、そうだな」

「ハルもちびっ子だもの」

「ミーレ姐さん、それ意味分からんわ」

「あら、そう?」

「そうやで。ちびっ子やからと、違うと思うで?」

「そうかしら? ハルもちびっ子で可愛いじゃない」

「え、そんな感じなんか?」

「アハハハ、そんな事はないだろう。ハルの加護だよ」

「きっと、そうですね」

「ほら、ミーレ姐さん。リヒト様とルシカ兄さんがああ言ってるで」

「なんでもいいのよ、可愛いから」

「うわぁ〜、ミーレ姐さんってめちゃ大雑把なんやな」


 ミーレは今まで、そう思っていたのか? それは誰よりもお惚けだぞ。

 リヒトが言う様に、ハルの加護に間違いないだろう。だが、それだけでもないらしい。

 ハル自身が持つ性格もあるのだろう。


「ひぽ、しぇいりぇいじょうおーが来たか聞いてくりぇ」

「ぶも」


 ヒポポが、ぶもぶもと頭を動かしながら、精霊獣に話しかけている。

 ねえねえ、精霊女王来たかな? とか、聞いているのだろうか?


「ぶもぶも」

「しょっか。けろ、じゅっとまえなんらな」

「ぶも」

「ハル、ずっと前に来たのか?」

「じーちゃん、しょうら。きっと何百年も前なんらろうな」

「そうかも知れんな」


 精霊獣が言う『ずっと前』の感覚が分からない。どうやら、数百年単位らしいのだが。

 しかし、精霊女王はやはりアンスティノス大公国の精霊樹を回っていたらしい事は確かだ。


「めちゃ良いもん見せてもらったわ」

「だな。見えると全然違うな」

「イオス兄さんもそう思うんや?」

「ああ。俺だって殆ど見えていなかったからな」

「これから、コハル先輩って呼ばなあかんわ」

「でしょう〜、コハル先輩は格が違うのよぅ〜」

「ま、シュシュとは全然違うて事は確かやんな」

「何よ、カエデ」


 おやおや、カエデちゃん。一言余計だったね。

 シュシュはもう面倒なのか、ずっと小さなままでミーレに大人しく抱かれている。言う事は一人前だが。


「よし、おっけーぐりゅぐりゅ」

「アハハハ、ハルそれ何だよ」

「もう、らいじょぶらって事ら」


 ハルちゃん、説明できないよね。この世界にはGoo◯leなんてないから。


「ハル、戻ろうか」

「おー。ひぽ、こはりゅ、ありがちょな」

「はいなのれす」

「ぶもッ」


 コハルとヒポポはハルの亜空間に入って行った。

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