第64話 アヴィー先生参加
「ふぅ~、しょりぇほろりぇもねーな」
「ないなのれす」
このちびっ子コンビは一体何を考えているのか。伸ばした人差し指にフーッと息を吹きかけている。これは、ハルの入れ知恵だな。この世界には獣を仕留める為のライフル銃はあっても、ピストルはない。
「ちょっちやってみたかったんら」
「なのれす」
「ハル、よく考えたな」
「じーちゃん、しょお?」
「ああ、そのまま魔法の弾を飛ばしているのか?」
「しょうら。ばきゅんッてな」
「ばきゅんなのれす」
「やだ、ハルちゃん天才!」
「自分もやりたい! 教えてぇ~!」
はいはい、姦しいお惚けチームだ。
「じーちゃん、ありぇたべりぇゆのか?」
「おう、少し肉質は硬いがな。食べられるぞ。何より毛皮が良い値で売れる」
「しょうなのか!?」
「この村に置いていきましょうか?」
「ルシカ、肉は良いのか?」
「はい、沢山持ってますから」
気前の良い事だ。ヒューマンにとっては嬉しい事だろう。
せっせとマジックバッグに収納しているイオス。
「毛皮のダメージがほとんどないからな、これは高値で売れるぞ」
「そりゃ、ハルのばきゅんのお陰だな」
「もうちょっち命中しゃしぇねーとらな」
「充分だろう」
「しょっか?」
「ああ」
頼んできた放牧地の持ち主の家に戻ると驚かれた事は言うまでもない。
「もう討伐されたのですかッ!?」
「ああ、群れがいたぞ。全部持ってきた。イオス」
「はい、長老」
イオスが、次から次へとマジックバッグからレッドウルフを出す。
「これで食われたカペルの分位はあるだろう。肉も食えるしな」
「長老様、そのような事は!」
「いやいや、ワシ達は充分に食料を持っているんだ。それに色々分けてもらいたいしな」
「そんな事でよろしければ、いくらでもお持ちください!」
まあ相変わらずの結末だ。
格安で、チーズや乳製品を分けてもらい次の層へと移動だ。
「やっちゃ、ちーじゅがいっぱいら」
「ふふふ、ハルは好きですね」
「うん、しゅき。トロットロなのがしゅき」
「あたちも好きなのれす」
「ぶも?」
コハルとヒポポが何もない空間に、また顔だけ出している。ヒポポは食べた事がないから疑問形なのだろう。
「次に行くか」
「にーくしゃん、元気かな?」
「元気にしているだろうよ。転移するぞ。皆集まってくれるか」
長老は杖を出し、半円を描く。すると光と共に一行の姿は消えていた。
そして、出てきたのが……
「うぉッ! びっくりしました! お久しぶりです!」
ニークの店の裏に出てきた。丁度、ニークも裏にいて突然現れた長老達に驚いている。
「アハハハ、ニークすまんな。偶々この裏庭に出たんだ」
「長老も皆さんもお元気そうですね」
「おう。ニークもな。変わりないか?」
「はい。今アヴィー先生がこの国に来ているでしょう。何かと気を掛けて下さっています。ハルくんも元気そうだね」
「げんきら。にーくしゃんも」
「はい、元気ですよ」
アヴィー先生がいなくても、1人で立派にやっているらしい。
「アヴィーにも知らせておかんと、また叱られるな」
長老がパーピを飛ばす。どうやら長老もアヴィー先生には弱いらしい。
「りゅしか、りゅしか」
「はい、ハル。どうしました?」
「はりゃへったじょ」
「そうですね、夕食にしましょう」
「ルシカ兄さん、手伝うわ」
「はい、お願いします」
「じゃあ、家の方に行きましょうか」
「そうだな、ニーク。出来るだけワシのそばに来てくれ」
「待ってください。鍵をかけてきますね」
長老の転移でサクッと家の方にやって来た一行。ニークはまだ転移に慣れないので項垂れている。そして、ルシカが皆にお茶を出している。
「色んな場所に行かれていると聞きました」
「しょうら。いりょんなとこに行ったじょ」
と、その時白い光が現れた。
「ハルちゃん!」
「あー! ばーちゃん!」
早速、アヴィー先生が転移でやって来た。アヴィー先生もハルには弱い。
「早く会いたかったわ! 何してたのよぉ!」
「いりょいりょら。うまいもんも食った」
「あら、あたしも食べたかったわ」
何を食べたのかも話していないぞ。
アヴィー先生が、ハルをギュッと抱き締める。
「あははは、ばーちゃん!」
「ハルちゃん!」
ハルも嬉しそうにくっついている。素直に甘える様になった。もう、リヒト達と最初に会った頃の警戒心丸出しのハルはどこにもいない。
とっても素直な可愛いちびっ子だ。
「ハルちゃぁ~ん! あたしも~!」
お邪魔な白い奴だ。
ハルがゆっくりとアヴィー先生に話している。こんなところに行った。あんな精霊獣が出てきた。あれが美味しかった。
「れな、こはりゅとばきゅんッしてやっちゅけたんら」
「まあッ! ハルちゃん天才だわ!」
「アハハハ、ハルの発想が良いな」
「ね、私達だと思いつかないわ」
ハルの前世にあったものだからね。ハルはテレビでも見たのだろう。
「おりぇ、こんなに動けなかったかりゃテレビばっか見てたんら」
やはりテレビらしい。
「て、てれび?」
「しょうら。いりょんな番組がありゅんら」
「ばんぐみ?」
今のハルの説明では理解できないだろう。何より、ハルの語彙力が心許無い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます