第58話 ぴよぴよ

 ワラワラと出て来た精霊獣。黄色にスカイブルーにエメラルドグリーンもいる。色んな色した小さなひよこさんだ。全身がフワフワとした初生羽で覆われ、頭には鶏冠代わりの小さな2枚の葉っぱがある。

 ピヨピヨと鳴きながら、フワフワとしたまぁるい体から伸びた尾羽についている3枚の葉っぱをピョコピョコと動かしハルの周りに集まってくる。

 同じ湿地帯でも精霊獣は違うのだな。てっきり、アンスティノスは層ごとで違うのかと思っていた。


「かぁわいぃ~」

「これはまた……アハハハ」

「可愛いな」

「なあ、シュシュ。今度の精霊獣は何なん?」

「色とりどりのひよこかしら?」

「ひよこ?」

「そう。でも黄色だけじゃないのよ。ブルーや緑のひよこもいるわ。頭に小さな葉っぱを2枚つけているわね。あら、尾にも小さな葉っぱが3枚あるわ」

「なあなあ、シュシュ。可愛い?」

「可愛いわよ。小さくてピヨピヨ鳴いているもの」

「ええなぁ~、見たいなぁ~」


 ヒポポ以外の精霊獣を見る事ができるのは、長老とハル、それにリヒトだけだ。

 エルフは魔力量が多い。なのに、見る事ができない。太古の昔に瘴気を浴びたからだろうか。それとも、もう見る事ができないのだろうか。

 いや、長老の次に魔力量の多いリヒトが見られる様になった。だから、他の皆も希望はある。

 シュシュが説明した様に、出てきた精霊獣は小さなひよこだった。ピヨピヨと鳴きながらハルのそばへと集まってきている。


「かぁわいぃなぁ~。ぴよぴよ、ぴよぴよ~」


 ハルがプクプクの手を出すとその手に止まる精霊獣達。

 ハルはやはり、愛されている。精霊だけでなく、精霊獣にもだ。


「元気におっきくなりゅんらじょ」


 ハルがひよこ達に向かってそう話す。ひよこ達はピヨピヨと騒がしい。我先にハルに近付こうとしている。


「アハハハ、らいじょぶら。ゆっくりおいれ」


 ハルがしゃがみ込み手を出す。

 すると嬉しいのか、小さな羽をパタパタと動かし、ハルの周りに集まりピヨピヨと鳴いている。


「こはりゅ、ひよこしゃんは元気か?」

「大丈夫なのれす。元気いっぱいなのれす」

「しょっか」

「ぶも」


 ヒポポの上にもひよこが乗っている。


「アハハハ、わらわらしてるな」

「リヒト、元気で良かったんだぞ」

「まあ、な。生まれたてなんだろう?」

「今植えたばかりだからな」

「ぶも」


 ヒポポがひよこと戯れている。大きな体のヒポポにピヨピヨと飛び回る小さなひよこさん達。

 そこにハルやコハルまで参加だ。


「アハハハ! わちゃわちゃだな」

「りひと、かぁわいいじょ~」

「おう」

「かえれ、お歌ら!」

「えぇ~! ハルちゃん今度は何なん!?」

「お手々はこうッ!」

「はいぃッ!」

「ひぃよこがねッ、おにわれぴょっこぴょっこかっくりぇんぼ♪」


 ハルがお手々をヒラヒラとさせている。それを真似て、カエデも手をヒラヒラ。尻尾までユラユラと揺れている。

 その周りをヒポポとひよこの精霊獣がピヨピヨと飛び回っている。

 ハルはお手々をフリフリ、ついでにお尻もフリフリ。カエデも尻尾をフリフリ。


「ハルちゃん可愛いぃ~!」


 白い奴が声を上げる。


「フフフ、もう何やってんのかしら」

「精霊獣は見えねーけど、ハルの周りに集まっているのは分かるな」

「そうね。キラキラしているもの」

「ハル、次に行こうか」

「ん、じーちゃん」

「ぶもも」


 ヒポポが何か精霊獣に話している。元気でいろよとでも話しているのだろうか。


「かぁわいかったなぁ」

「ハルちゃんも可愛いわ〜」

「恥ずかしいにゃあ〜」

「あら、カエデも可愛いかったわよ」

「ミーレ姉さん、自分はちびっ子ちゃうからな。さすがに恥ずかしいわ」 

「何言ってんの。まだまだちびっ子よ」 


 ミーレにかかると皆ちびっ子。一体何歳からちびっ子じゃなくなるのだろう。


「100歳は超えなきゃ」

「自分生きてへんで」

「じゃあ、カエデは生涯ちびっ子ね。ふふふ」

「マジかぁ!?」


 100歳オーバーとな!? じゃあミーレから見ればヒューマンは皆ちびっ子なのか!?


「ハル、次だがな」

「ん、じーちゃん。わーりゅろまっぷらな」

「そうだ。見てみなさい」

「よしッ!」


 ハルちゃん、ちょびっと気合いを入れる。そして何故か、また両手を揃えて胸に当てて目を閉じる。


「じーちゃん、反対側か?」

「そうだな。分かったか?」

「ん、ピカッて光ってたじょ」

「アハハハ、そこがマーカーした場所だ」

「なりゅほりょ〜」


 ハルちゃん、今更だ。最初から長老はそう言っている。


「よし、転移するぞ。集まってくれ」


 長老の転移で移動するらしい。

 長老が魔法杖を出し、半円を描く。すると一行は光に包まれ消えていった。


 その一行が転移で移動してきたのは、湿地帯とは反対側にある場所だ。

 アンスティノスの中では少し南側になる。


「なんもねーな」


 長老の転移で移動してきた場所、ハルが言う様に何もない駄々広い草原だった。


「ハル、よく見てみなさい」


 長老がそう言って、草原のずっと遠くを指差す。


「なんら? 山羊か?」

「ハルはヤギというのか?」

「ちげーのか? 肉やミルクらけじゃなくて毛もちゅかえりゅ」

「ああ、そうだ。それだ。カペルという」

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