第18話 メタ爺

 会話をしていそうなヒポポとリヒトを見て、不思議そうな顔をしたルシカがリヒトに聞いている。


「リヒト様、ヒポポの言っている事が分かるのですか?」

「分かる訳ねーじゃん」

「では、どうして?」

「表情だよ。なんとなくだ」


 いやいや、カバさんの表情筋は絶賛お休み中だぞ。

 リヒトらしいと言えば、リヒトらしい。

 紅龍王は王城へと降りる。態々、紅龍王に乗って行くほどの距離でもない。あっという間に到着だ。


「ほんりょんしゃま、ありがちょ」

「おう、また来いよ」

「あい」

「ホンロン様、態々本当に申し訳ないですな」

「いや、俺もハルに会いたいからな。気にすんな」


 そんな話しをしていると、城の中から侍従のナングが出てきた。


「もうお帰りですか?」

「いや、ナング。おばば様に城にも精霊獣がいると聞いたのでな。会いにきたんだ」

「精霊獣ですか? はて?」


 おや? ナングは知らないみたいだぞ。それとも見えていないのか?


「ナングは知らないか?」

「はい、私には分かりません。見えていないのかも知れません」


 竜王なら知っているだろうと、謁見室へと先導される一行。


「ぶも」

「ひぽ、わかりゅのか?」

「ぶもぶも」

「しょっか」

「ハル、ヒポポは何て言っているんだ?」

「ナングしゃんにはひぽも見えてねーって」

「そうか、やはり魔力量だな」

「らな」


 シュシュとカエデが大人しい。どうしたんだ? 珍しい事もあるもんだ。


「だってな、精霊獣って言うてもカバさんやん。シュシュより大きいやん。自分ちょっと怖いわ。あれやで、シュシュの時みたいに本能的なもんやけどな」

「あたしが今までハルちゃんを乗せていたのにズルイわよ」


 いや、今ハルは長老に抱っこされているが?

 昨日ずっとハルがヒポポに乗っていたものだから、根に持っているらしい。

 ネコ科の2人はかしましい。


「まあ、竜王様に聞いてみるか」

「しょうらな」


 と、気軽に曽祖父と曾孫は話しているが相手は竜王。近所のおじさんじゃないんだ。そう気軽に会える人じゃないんだよ。


「精霊獣か?」


 会っていた。とっても気軽にだ。『はいはい、こちらの部屋です』と、ナングに案内された。しかも美味しそうなフレッシュさくらんぼジュースを貰ってハルは飲んでいる。竜王もハルちゃん贔屓だ。


「こりぇ、うめーな」

「そうかそうか、ハルまだまだあるぞ」

「ありがちょごじゃましゅ」

「アハハハ、言えてねーぞ」


 リヒトは相変わらずだ。カッコいいポジを返上してもらおうか?


「精霊獣は確かにおるぞ」

「お、じーちゃん」

「城にですかな?」

「ああ、よく城の中を闊歩しておるぞ。あれは自由だからな。探してみるとよい」


 闊歩しているとは? また、ヒポポの様に大きな精霊獣なのだろうか?

 城の中を探すこと数時間。ハル達はその闊歩していた精霊獣を見つけたらしい。


「お、まじ?」

「確かに闊歩はしておるか?」

「アハハハ!」

「今度は自分も平気やわ」

「あら、綺麗で可愛らしいお目々ね」


 ハル達が囲んで見ているのはその精霊獣だ。


「なんじゃなんじゃ、お前達は? ワシがそんなに珍しいか?」


 どうやらおじいちゃんの精霊獣らしい。しかも、話せる様だ。

 確かに、城の中を我が物顔で闊歩していた。だが……


「つんつん」

「こりゃ、突くでないわ」


 ハルが短い人差し指で突いている。皆で取り囲んで、しかもしゃがみ込んで見つめていた。


「ちっせーな、つんつん」

「こりゃ、突くなと言うとるだろうが」

「ブハハハ!」


 リヒトは相変わらず笑っている。

 誰か、状況を話して欲しい。


「これ、ハル。やめなさい」

「ぶも」

「え、しょうなのか?」

「ハル、ヒポポは何て言ってんだ?」

「リヒト、精霊獣らって」

「いやいや、闊歩って言ったらだな。ヒポポみたいなデカイのがいると思うじゃねーか」

「ぶもも」

「らって尻尾に葉っぱがありゅじょ」


 城の中を我が物顔で闊歩していたのは、体長30センチ程だろうか。綺麗なエメラルドグリーンの体色をした、とかげさんだった。金色の大きな瞳がウルウルしているとかげさん。しかも尻尾の先に葉っぱが3枚生えている。そして、また背中に小さな翼がある。ただし、翼も葉っぱで出来ていた。


「ぶもぶも」

「めたじー?」

「なんじゃ、お前さん精霊獣の言葉が分かるんか?」

「わかりゅじょ」

「エルフじゃろ? 珍しいのぉ」

「めたじー、よりょしくな。つんつん」

「だから、突くなと言うとろぉが」

「アハハハ!」


 ハルちゃん、笑ってるけどちゃんと紹介して欲しい。

 この精霊獣、メタ爺と呼ばれているらしい。

 精霊獣っていうと、おばば様の家の裏にいた綺麗な色をした小さな鳥さんとか、そんな感じを想像しないか?

 まあ、最初の精霊獣が6本足で小さな翼のある大きなカバさんだったけども。

 今度はとかげさんだ。しかも、おじいちゃんだ。


「めたじー、精霊樹もじーちゃんになってりゅ?」

「そうじゃな、ワシと同じ歳だからな」

「元気なのか?」

「まあ、ボチボチだ」


 縁側で番茶を飲んで世間話をしているかの様だ。ハルに任せておくとなかなか話が進まない。

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