第13話 おばば様の家
「精霊王直々にか」
「そうです、竜王様」
「驚いたね。ハルは愛されているんだね」
「しょっか?」
「そうだよ、信頼できる者でないと精霊王もそんな頼み事をしないだろうよ」
「しょっか」
と、ハルはおばば様の横にちょこんと座り、果実水を飲みながらクッキーを食べている。
シュシュもハルの足元にお座りをしてクッキーをもらっている。おや、コハルはシュシュの背中で食べているぞ。シュシュの背中にクッキーの屑が落ちていそうだ。
「それにしても精霊樹とはな。おばば様、聞いた事があるのか?」
「いや、初耳だね」
「おばばしゃまんとこにありゅじょ」
「そうかい?」
「ん、きっとありぇら」
「もしかして……あそこかねぇ」
おばば様も思うところがあるらしい。
「おばばしゃまんとこれ1本らけ精霊が沢山寄って、きりゃきりゃしてりゅ木がありゅんら」
「やっぱりあそこだね」
「おばば様、我々にも見えるのだろうか?」
「どうだろうねぇ。長老、あたしとバイロンだとどっちが魔力量は多いか分かるかい?」
「見てもよろしいのですか?」
「構わないよ。良いよね、バイロン」
「長老はそんな事が見られるのか?」
「ええ。ワシだけでなく、リヒトやハルも見る事ができますぞ」
「なんと、ハルもか?」
「あい。れもじーちゃんのはしゅごいれしゅ」
「そうなのか?」
「リヒトが鑑定眼を持っております。その上位スキルがハルの持つ精霊眼です。そして最上位スキルがワシの持つ神眼ですな」
「それは凄い。やはり長老は秀でているのだな」
「いやいや。ワシよりハルですな。ハルはまだ3歳でこのスペックですから」
「なるほど」
「では、見させてもらいましょう…………おや、おばば様もかなりの魔力量ですが、バイロン様の方が少し多いようですな」
「そうかい。なら見えるかもね。あたしは気配が分かるだけだ。その1部だけほんのり光って見える程度さ」
「では、おばば様も木だとは意識していなかったのですな?」
「そうなんだよ。だが、ハルに言われるとあそこかもと思う場所があるんだ」
ハルちゃんがきょとんとしている。話の内容は分かっているよな?
とても微笑ましい雰囲気の中、騒がしい者が入ってきた。
「ハルは来ているのか!?」
ノックもせずにバタンとドアを開けて入って来たのが、南方を守護する紅龍王、ホンロンだ。
「なんだよ、ホンロン。ノックぐらいしなさい」
「おばば様、すまん。ハル! 久しぶりだ!」
「おひしゃしぶりれしゅ」
「なんだよ、またテンション低いなぁ。また俺が乗せて行ってやるからな!」
「ほんりょんしゃま、ありがちょ」
「おうよ!」
と、賑やかな紅龍王が来た事もあり、早速おばば様の家に移動だ。話していた通り、一行は紅龍王の背中にのって移動している。おばば様の家はドラゴシオン王国の中腹にある。最奥にある城からでもドラゴンの背中に乗ったらアッという間に到着だ。
おばば様の家の庭に降り立った深紅の鱗のドラゴン。紅龍王の鱗が太陽に照らされて輝いている。
「ほんりょんしゃまも、きりぇいらな」
「ハル、そうかい?」
「ん、真っ赤ら。きりゃきりゃしてりゅ」
「そうだね。紅龍王だからね」
「ん。おばばしゃまもきりぇいらったじょ」
「おや、ありがとうね」
「とうッ」
紅龍王の背中から突然飛び降りたハル。シュタッと着地してタッタッタッタと走って行く。
その後をシュシュが追いかける。
「ハルちゃん、待って!」
「こらッ! ハル! 飛び降りるんじゃないぞ! じーちゃんまた心臓がキュッとしたぞ!」
「ほら、ハルだよ。俺まで心臓がキュッてしたぞ」
「アハハハ、ちびっ子だねぇ。元気なのは良い事だよ」
何をやらかすのか予測不能のハル。まさかドラゴンの背中から飛び降りるとは誰も思わなかった。リヒト達の心配をよそに、当のハルは目標に向かって元気に走って行く。
「ああ、やっぱりそうなんだね」
おばば様はハルが走って行く先が分かった様だ。
「ホンロン! いつまでドラゴンでいるんだい! さっさと人化しな!」
おばば様は紅龍王にも容赦ない。
「おばばしゃま! じーちゃん! この木ら!」
「ハル、待ちなさい!」
おばば様の家の庭には花や野菜、薬草だけでなく何本かの木が植えてある。その中の1本をハルが指した。ハルの手の甲にある精霊王からもらった印も光っている。確かに精霊樹だ。だが、それは皆には見えていない様だ。
その精霊樹の下に、小さな石碑の様な物が置いてあった。
「おばばしゃま、こりぇ」
「それはね、うちの旦那だ」
「おばば様のご主人の?」
「長老も知らないだろう? 早くに亡くなったんだ。ドラゴンは、ちゃんと墓場があるんだけどね」
ドラゴンは、亡くなる少し前になると自分の寿命が分かるのだそうだ。その時が来たら皆同じ場所へと向かう。そこがドラゴンの墓場になっているのだ。歴代の竜王もそこに埋葬されている。ドラゴシオン王国の1番奥、山手にある一角がドラゴンの墓場になっている。
おばば様の夫は何百年も前に病で亡くなったそうだ。ドラゴン族にしては早くに亡くなった。その旦那様の骨を分骨して木の下に埋めてあるらしい。
「偶々なんだよ。まさか、あれが精霊樹だとはあたしも思わなかったよ」
分骨して家に戻って来た時に、おばば様が導かれる様に精霊樹とは知らずにそこへ埋葬したらしい。
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