2話 普通のおじさん、Nyamazonにハマる

『お買い上げありがとニャーン』


 上空から、ポテっと『ファイヤースターター』が落ちてくる。


 ネイビー色をした大きな鉄の塊。重ね合わせて火花を散らして、火をつけるものだ。

 縁には炎を扱う三毛猫のイラストが描かれている。うむ、可愛い。


「よいっしょっと、さて、これで火が着くといいんだが」


 私がこの世界に転生してから三日が経過した。

 幸い、いや本当にありがたいことに赤い石をいくつか見つけることができた。

 食料はもちろんだが、まず寝床の確保が欲しくて、キャンプ用品を揃えた。


 Nyamazonにキャンプ応援セールというものがあり、それほど高くない金額でテントと小物を購入したのだ。

 だが火をつけようと思ったら肝心の着火剤がなく、購入しようにも『金額が足りませんにゃあ』とお預けを食らっていた。

 2日間もこの日を待ちわびていたのである。


「意外に難しいな……」


 キャンプは趣味だったが、いつもバーナーを使っていた。だが燃料を考えるとこれが安上りだったのだ。

 カチッカチッと金属を擦り合わせること数十分、小さな火花がやがて火となり炎となった。


「よし、何とかなったな」


 今すぐに必要がなくなった『ファイヤースターター』は、空間魔法のブラックホールに放り投げる。

 24/100


 他にも使えそうなものをいくつか入れているが、その時、アナウンスが流れた。


『空間魔法のレベルがあがりました。レベル2――24/120』


 おお、こいうのもあるのか。

 ということは……ステータスオープン。


 名前:キミウチシガ 28歳

 レベル:4

 体力:E+

 魔力:E

 気力:C

 ステータス:やや快調、寂しがり、

 装備品:作業現場ワーカー上下(やや安い)、安全靴(やや硬い)

 スキル:空間魔法Lv.2、New:解析Lv1、

 固有能力:超成熟、お買い物、多言語理解


 気づけばレベルが上がっている。

 朝から晩まで石を探していたからだろうか、だが歩くだけで?

 もしかして超成熟が機能してるのだろうか……?


 空間魔法を右手でクリックすると、所持品が映し出される。

 先日購入した釣り竿、ナイフ、そしてファイヤースターター。


 ひとまず生活は出来ているが、問題は赤い石を使い切ってしまったことだ。

 近くの川には魚がいるのを確認したので、そこで食料を得るしかない。


 釣り具セットを構えて移動し、小川に腰を掛けようとした瞬間、後方から気配がした。

 何とも言えないが、気配察知というスキルが発動したのを直感で理解したのだ。


「ガウウウウウウ」


 狼のような大きさで、私に牙を向けている。狼に似ているが圧倒的に違うのは、頭部の尖がった角だ。


 ――魔狼まろう


 直後、心の奥底でこの世界が異世界だと信じ切れていなかったのか、心臓が鼓動し始める。

 明らかに敵意を向けられているのだ。怖くないわけがない。


 釣り竿を急いで手放すと、腰のナイフに手をかけた。

 

 構えは適当だが、戦うという意思を見せつける。


 だがジリジリなんて易しさは持ち合わせていなかったらしい。

 魔狼は、勢いよく飛び掛かって来た。


「ガウッ!」


 ナイフで牙を受け止めると、身体を翻して必死に振り払う。

 魔狼は小川に倒れ込み、水を吸ったのか明らかに身体の動きが鈍くなった。

 偶然だが、これで幾分か有利になったことは間違いない。


 再び仕掛けてきたが、明らかに遅い。

 なぜだかわからないが、頭が冴えていく。

 突き出したナイフが、獰猛な口の中を突きさし、そのまま頭部まで貫通した。


「ギァアアアアアア――グン」


 だがすぐに絶命はせず、私は返り血を浴びた状態で数分、いや数十分も魔狼を突き刺し続けた。

 やがて浅い呼吸を繰り返した後、完全に息絶える。


「はあはあ……――ッ!」


 その瞬間、ハッと回りを見渡す。


 狼は群れで行動するものだ。

 だが幸いなことに気配はなかった。


魔狼ルイウルフを討伐、超成熟スキルが発動、EXPボーナスが入ります。レベルが7になりました。短剣術Lv1を習得しました。並列思考Lv1を習得しました。冷静沈着Lv1を習得しました』


 その時、何処からともなく流れるアナウンス。

 ステータスを確認してみると、体力や魔力が上昇していた。


 ゲームのようだが、倒れ込んでいる魔狼は本物だ。

 超成熟は、やはり私が思っていたスキルだったらしい。


「はあはあ……だがこれは……肉……か」


 ここへきて三日目、私の脳も随分と野生味を帯びていた。

 命のやり取りをした後、魔狼を貴重な食糧だと思ったのだ。


 だが解剖なんてしたことはないし、そこまでの知識はない。


 空間魔法で収納するか悩んだが、もしかしたら、とお買い物を呼び出し、ブラックホールに入れてみる。


『計算中、計算中、――850円にゃあ』


 ……まさかだった。


 だが金額にするとおにぎり五つ分……命を懸けた値段とは思えないが、とにかくこれでお腹が満たせる。

 高鳴る心臓とは裏腹に、今まで味わったことのない高揚感が溢れ出た。


 とりあえず、今夜は晩酌にしようと思う。


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