第6話
医学部合格から、数か月が経った今。
九月二十六日の今日が一体何の日なのか未だに分からない
何やら、煙が立ち上っていた。しかし、火事とは違う。恐らく宛先人であろうピエール・ド・アズナヴールから目的を聞かなければならない。
目的地付近に着いた。そこにはピエール。そして、
「あ! 希和子ちゃん! こっちこっち」
ナタリアが希和子をこちらへ来るよう誘った。
「はいこれ! かけようね~」
「ちょ、ちょっと……」
ナタリアから無理やり
そして、その後のピエールからの言葉にやっと理解した。
「希和ちゃん。お誕生日おめでとう!」
「\\\\\\おめでとうーー!!//////」
(そっか、私……。今日、誕生日……)
「さぁ、一言どうぞ!」
「えっ!? いっ、いきなり、言われても……。でも、私のためにこんな大勢……。あの……、ありがとう……、ござい、ます……」
「それじゃ、挨拶も済んだところで乾杯と行きましょう!」
「展開が早いわね……」
一同、ジュースやお酒を持ったカップを持った。
「それじゃあ、希和ちゃん。乾杯の合図を!」
「えっ、そこは私がやるんだ……。えーっと、でっ、では……。かっかんぱーい!」
「\\\\\\かんぱーーい!!//////」
人が多すぎるため、顔を塞ぎがちながらも主役である責任を果たした。会の参加者たちは希和子の合図とともに乾杯をし、近くの焼き場にて、思いおもいのバーベキューを楽しんだ。
「ピエール。今日は飲みすぎないでください! これは同居人命令です」
希和子はいつも飲み会などで、泥酔程ではないが寝ながらいかがわしいような行動をとってしまうピエールに飽き飽きしているため、今日こそは事故のようなことが起こすまいと念を押した。それは、鬼瓦のような狂気じみた目をしていた。
「はっはい……」
「希和子さん」
「あっ、メルタ・エーマン先生」
彼女は、陰光大学付属陰光中学・高校の副校長であり、ピエールの遠い親戚でもある。希和子とは高校から少しだけ面識がある程度の関係性。
「ピエールが迷惑かけてない?」
「あー、基本的には……、大丈夫です……。ただ、酒癖の悪さ? がラッキース……」
「ラッキース……?」
「いえ、色々と起こりがちですが……、彼がいないと、生きていて退屈なので……。むしろ、楽しい、です……」
「そう、良かったわ。あなたはこの学校の中でも特に優秀な生徒よ。今回の一件にも大きな支援をしてくれた。今後ともチームサポートをお願いしていただけるかしら」
「私の力は……そこまで、大きいものではありません……。ですが、お役に立てれば、と思います」
「\\\\\\希和子ちゃん//////」
「みんな……」
小児科患者の子供達がプレゼントを持ってやってきた。
「これ……、みんなで作ったの!」
「ありがとう……、みんなも、治療が大変なのに……。ありがとう……。私も……、みんなを助けられるように頑張るよ……」
「\\\\\\うん!!//////」
「希和ちゃ~~ん!」
「ナタさん……」
「私たちからのプレゼントは、これだよー!」
中に入っていたものは、新品のロリータファッションの洋服だった。
「これ……、欲しかったのだ……。ありがとう……、ございます……」
生まれて初めて、こんなにも、多くの人達から自分の誕生日を祝福されたことを。私は社会のゴミ、無駄な存在ではないということを。
希和子の心の中はポカポカした気持ちになった。
「希和子……、十歳の誕生日……、おめでとう……」
ふと、懐かしい声がした。振り返ったもののその姿はない。
しかし、いつかこの現実世界ではないどこかでの再開と、また三人で暮らそうという不透明な希望を抱きながら、今いる大切な人たちの為に生きようと思えた。
「ありがとう……、お父さん……」
「…………」
「ハハハ――――――――、この世の世界全て、黒く染めて差し上げるわ!」
「そんなことはさせない!」
「アテナ逃げて!」
「私はみんなを救うためにこの力を使う! 誰一人、失わせたりしない!」
「…………」
「ハッ! はぁはぁはぁ――――――」
急に見えた光景が頭にこびりつく。
黒い女黒い世界金髪の少女アテナ。そして誰一人失わせしない。
こんなにも鮮明な夢を見るのは、久々のことだった。
父親が亡くなった後はたびたび、陰光大学や付属学校の光景が浮かび上がったが、今回のものはより濃くはっきりと確認できた。
「もしかして……。これは……」
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