第11話 駅

駅のベンチで60代くらいだろうか。

男性が座っている。

そこで駅員さんがトイレに向かう途中

燕の巣を見つけた。

「おお!いるわ!」

60代くらいの男性が一瞬、目を輝かせる。

「ヒナは三羽か」

「無事育っているみたい」

年を重ねた男性と駅員は鳥で癒されるらしい。

僕は出勤前の一服をしている。

60代くらいの男性はバスに吸い込まれるように立ち上がった。

僕は吸っていたタバコを消した。

駅員に回数券を渡す。

もう、10回、20回ではなく

200、300回は渡している。

ホームに立ち電車を待っている。

「今日が終わると盆休みかー」

僕は一瞬、ホームの掲示板に目をやった。


青春切符の詩の募集のポスターだ。

「試しに応募しようかな」

この駅とは長い付き合いだ。

カシャ!スマートフォンでポスターの

概要を撮影した。

地獄のような勤務時間が終わり

駅で電車を待つ。

「暑いな」

「コーラを自販機で買おう」

財布から120円を取り出して

「ガシャ」

金色の輝く太陽の下で一気に飲み干した。

「太陽の いてつく ホームにて 駅の自販機 大喜び」

パッと詩が沸いてきた。

早速、携帯に記録しておく。

帰りの駅のホームで僕は思った。

「風景も変わるけど、電車の中の人も変わってゆく」

駅員さんがいつや辞めて別の人になるだろう。

「人間はちっぽけな存在かもしれない」

僕はふと胸が苦しくなった。

「駅員の 人は変わって 風景の ホームに立ってる 少年少女」

もう一つ詩が出来た。

すかさず記録した。

朝見たポスターに応募してみるか。

日常にちょっとしたワクワクを感じた。

朝いた60代くらいの男性と駅員さんも

このワクワクのようなものを感じただろう。

鳥でワクワクする人もいれば

公募にワクワクする人もいる。

駅には小さな喜びが秘められているのだろう。

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