第33話 不穏な朝
朝から不穏な空気を吸い込み、黎明に目が覚めてしまった。何か、人生において大きな変化の波がやってくるとき、こうやって、朝早くに目が覚めてしまうときが何度か、あった。辺りは露草色で染められ、清涼感のある朝焼けがふんわりと包んでいる。
10時には記者会見が始まるんだ。新倉蒼さんは車いすで登壇するという。何を語るのか、私はその会場のホテルで待ち合わせなのだ。かつて、私が16歳でデビューしたとき、待ち会の喫茶店が階下にあった因縁のホテル。フラッシュバックするかもしれない、その場所で私は邂逅する。いいじゃないか、またセカンドチャンスを得ても、誰も指差しをしない。誰だって落ち込む機会なんてごまんとある。
日が高く上り、その帝国ホテルに行くと、周到するマスコミ関係者で混雑を極めていた。報道陣がいきり立つような沈鬱な表情で続々と中に入館する。ネット上ではさすがに記者会見を強要するのは惨いのではないか、とある意味、手のひら返したかのような発言も多く、多くの世論が同情票を入れていた。確かにやったことはスキャンダラスで、前代未聞だが、自死を追い詰めさせるほど、我々は喧騒状態に陥ってしまったのでは? と冷静に分析する識者もいた。
新倉蒼がやった過ちは醜聞ではあるが、命を絶たせようとするほどではない。もし、彼が誰かを殺害したら別だけど、あそこまで追い詰める必要性はなかった。会場で私はネットニュースをタップする。
『ゴーストライターって意外にいる?』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます