シェアハウス〜廃人の巣窟〜

あおいゆっきー

第1話優雅な一人暮らし

「フフッ、フフフフたのっしー!」


 実家を離れて一ヶ月が経ったある日、私は好きな配信者さんが紹介していたゲームを堪能していた。辺り一面を好きなものに囲まれ、好きなことを好きなだけできる、実家暮らしではできない一人暮らしだからこそできる優雅な生活。


 仕事しろ、彼氏を連れてこい、引きこもってるんじゃない。などと言われることはない。


 もうあんな惨めな思いをする必要はないんだ。

 だが、問題がないわけではない。それは……お金がない!!


 ゲームだって安くないんだよ。そこにフードデリバリーだったり動画配信者へのスパチャをしているせいで今日を生きるのだって、正直厳しい。

 ということで母に頼んだところ仕送りをしてもらえた。まではよかった。

 その、ね。好きな配信者さんが参加型のゲーム配信をするって言うから私もやりたくなっちゃって。

 結果一日もやし一袋でも生きていけない感じになりまして、再度母に連絡したら「ふざけんじゃないわよ。電話してる暇あったら働け」と。

 一人娘に対してこの対応はひどいと思う。一応実家に帰れば知り合いの仕事を紹介してもらえるみたいだけど、戻りたくないよぉ。

 母さんの言ってることもわかるけどさ、これ以上バイトの時間を増やしたら動画を見る時間が減っちゃう。


「どうしよっかなー」


 仕方なく、本当に仕方なくバイトの求人をパラパラと漁り始めると、普段から私と一緒にゲームで遊び、なおかつ何回も相談に乗ってくれる心から信頼できるネットの友達、冬華から連絡通知が届く。


 冬華ちゃんは私の好きな配信者である冬空桃花さんが紹介していたゲームを、配信終了後に練習してたらたまたま野良で知り合いになって、しかも桃花さんファンの同志なのもあって今でもこうしてお付き合いさせてもらっている。


『ねえねえ、ますみんゲームしよゲーム!』


『なにすんの?』


『んーなんかやる!』


『おい!』


 こんな軽いノリで誘ってくれるのは私としてはありがたかったりする。

 砕けた話し方って遠慮しなくてもいいから落ち着けるし、思ってること全部話せるからストレスフリーだ。


『今日も映像とか声撮っていい?』


『もち』


 相変わらずの向上心に笑みが漏れてしまう。録画してまで練習するってよっぽど強くなりたいんだろうね。

 早速パソコンを起動して通話を始める。なにして遊ぶかで多少悩んだものの最終的に遊ぶのはゼロゲッサーという地図上でスポーン地点を当てるゲームになった。


 実は私このゲーム得意なんだよね。

 これで遊ぶだけで外に出た気になれるし、栄えている都市にスポーンできれば私が陽キャとしてそこを歩いている感じがするから。


「ますみん昨日ぶりー! よろしくねー」


 相変わらずの元気な声に私もつられて声のボリュームが大きくなってしまう。


「ふふ、うんよろ」


 冬華め、私がこのゲームを得意としてるなんて思ってもいないだろう。

 金欠のストレスぶつけてやるからなぁ!

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