第10話 見捨てられし者
エルシュの周りに激しい電撃と凄まじい爆発が起こり、それを見てダイナは嬉しそうに微笑んでいた。だが、すぐに忌々しいモノを見るような表情に変わる。
「あれだけの攻撃を受けてびくともしないなんて」
そこには傷ひとつつかない、むしろ土埃の汚れさえ受けないエルシュの姿があった。ダイナはすぐにまた無詠唱で攻撃を繰り出すが全く効かない。
「あなたがなぜお師さまに見捨てられたのか教えてあげましょうか」
攻撃を受けながらも全く意に返さないようにエルシュが冷めた瞳でダイナを見つめながら言うと、ダイナは怒りで髪の毛が逆立つ。
「まだそんなこと言ってるの!見捨てられたのはお前の方だって言ってるでしょうに!」
怒りに任せてさまざまな攻撃をエルシュに向けるが相変わらず何一つ届かない。
エルシュは片手をダイナに向けた、その瞬間にダイナの周りに無数の爆発が起こる。ダイナは瞬時に防御魔法を繰り出すが防御の結界はあっけなく破られる。
無数の攻撃を受け驚きを隠せない表情のまま空中から床に倒れ込むダイナとは対照的に、エルシュの表情は冷やかだ。
「あなたに私は殺せない、そもそも攻撃すらできない」
淡々と告げるエルシュへ、ダイナは床で呻きながらも憎悪と驚きの眼差しを向ける。
「お師さまはわかっていたのよ。私がお師さまの元へ行かないことも、あなたがそれに準じて私を殺そうとするのも、そしてあなたが私にあっさり負けて捕まることも」
ダイナを見下ろしながらさも当たり前のことのようにエルシュは告げた。
いつの間にか時空魔法は解け、異常な魔法状態を感知した警報が鳴り響く。エルシュは魔法で光の鎖をダイナに巻き付け動きと魔法を封じた。
「さて、助けもせずにただそこで黙って見ていた先輩、そろそろ手伝ってくださってもいいのでは」
エルシュが建物のある方向に向けてそう言うと、柱に寄りかかっていた男は顔だけをエルシュに向けて返事をする。
「俺が手伝う必要なんてどこにもなかっただろ?だから終わるまでこうして待っててやったんだよ」
柱に寄りかかりながら長い足を組み直してラウルはニヤリと微笑んだ。
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