第9話 騎士と傭兵
ユースがカロンの店の用心棒として雇われてから一週間が経った。
店にいるユースを見て常連客の大半は驚いていたが、おかげでひやかしの客はいなくなった。
「まさかカロンちゃんが用心棒を雇うとはね」
「でもまぁ、その方が安心だろう。変な客の足も遠のいたようだしな。それに、あの変な騎士たちもまだたまに来るんだろ?用心棒がいるとわかれば諦めてくれるんじゃないか」
客たちの会話に、ユースが視線を向けて反応する。
「あ〜、そうだといいんですけど。それより、今日は何の鉱石花をお探しですか?」
カロンは苦笑いをしながら接客をし、客たちは思い思いに鉱石花を購入していった。
客たちが店を出ると、近くにいたユースがカロンを見て口を開く。
「変な騎士たちというのは?」
「ええと、それはですね……」
カランカラン
カロンが説明しようとしたその時、店に客が訪れた。
「やぁ、カロン。元気だったか?」
そう言ってカウンターに肘を付いて騎士服に身を包んだ男が言った。金髪に朱色の瞳、背は高くスラッとしている。その男の後ろには別の騎士がいて店内を見回していた。
「いらっしゃいませ」
カロンが顔を引きつらせて言うと、ユースがそれを見て眉を顰めた。そして、カウンターにいる騎士の顔を見てから目を見開いた。
「カロン、そろそろ俺の気持ちに応えてくれる気になった?こんな小さな古臭い店、さっさとたたんで俺のところにおいでよ」
ニヤリと笑いながらそう言うと、ふと近くのユースに気がつく。そして、騎士は驚いた顔をした。
「は?なんでお前ここにいるんだよ」
騎士の問いかけにユースは答えない。ただ、眉間に皺を寄せて騎士から視線を離さない。
「お知り合い、なんですか?」
カロンが不安げに尋ねると、騎士はさも嬉しそうな顔をして言った。
「あぁ、こいつは昔騎士だったんだよ。出来損ないだったからすぐに辞めたんだけどな。お前、まじで一体何してるんだよ」
「俺はここの用心棒だ」
ユースが地を這うようなに低い声で答えると、騎士は目を見開いてから盛大に笑い出した。
「用心棒!?お前が?ここで?ハハハ!ふざけるなよ、お前みたいな出来損ないがこの店を守ってるだ?てことはカロンといつも一緒に?」
最後の一言だけは顔から笑みを消して真顔でカロンへ尋ねる。カロンが恐ろしさのあまり肩を震わせると、ユースは騎士からカロンが見えないようカロンの前に立った。
「気に食わねぇな。なんでお前みたいな落ちぶれた奴がカロンと一緒にいるんだよ」
「お前こそこんな所で何をしているんだ。騎士のくせに店主を怯えさせるとはどういうつもりだ、ジェダ」
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