第3話 襲撃

ヒュン


 二人が会話をしていると突然、矢が飛んできてカロンの足元の地面に突き刺さる。


「山賊か!」


「よう、そこの色男さんよ。命が惜しけりゃその可愛い女と金品全部置いていきな」

 崖の上から次々に人が飛び降りてきて、いつの間にか周りを山賊に囲まれている。


「断る」

 ユースが剣を構えて言い切ると、ヒュ〜ゥと口笛が聞こえてきた。


「女の前だからってかっこつけてんじゃねーよ色男。死にてぇなら望み通りにしてやるさ」

 山賊達が武器を構えると、一斉にユースに飛びかかる。



 結果はユースの圧勝だった。あっという間に山賊達を斬り倒し、生き残って逃げ去る山賊から

「お、覚えてろ!」

 という負け犬の捨て台詞までいただくほどだ。



「怪我はないか?」

「はい、大丈夫です。お強いんですね!」


 すごい!と両手を合わせてカロンはユースに笑顔を向けるが、その手は小刻みに震えていた。それを見て思わずその手をそっとユースが握りしめる。


「あ、あれ?いつもはこんなことないのになんでだろう。ユースさんがいるからホッとしちゃったんでしょうか」

 慌ててえへへ、と強がるカロンを、ユースはいつの間にか抱きしめた。


「強がらなくていい。今は一人じゃない。俺を頼ってくれていい」


 抱き締めるユースの背中に、カロンの手がゆっくりと伸びる。


(とても暖かい、ユースさんに抱きしめられるととても安心する)






「あぁ〜やっぱり綺麗!!!」

 ゲラルド渓谷にある採掘場に訪れたカロンは、歓声を上げる。そこには花のように白く輝く雪月光石がたくさん散りばめられていた。


「本当に美しいな」

 ユースもほうっとため息をつく。


「でしょう!この瞬間が本当に最高なんです」


 目を輝かせて言うカロンの姿を、ユースは眩しいものを見るように見つめていた。

(鉱石花も美しいが、この子もとても美しいな)


 フッと目が合うと、カロンは思わず目を逸らした。


(どうして目を逸らしてしまうのか、まだ俺のことが怖いのだろうか)

 ユースの心がなぜか痛む。


「カロン、どうして目を逸らすんだ?」

「はひぃっ?」

 ユースの突然の質問に、思わず変な声が出た。


「え、いえ、あのその、ユースさんとても素敵なので目が合うとちょっとその、無理です……」


 顔を真っ赤にして言うカロンの姿に、ユースはホッと胸を撫で下ろす。


(なんだ、俺のことが怖いわけじゃないんだな)


「あ、あのそういえば、ユースさんは傭兵になって長いんですか?とてもお強かったので」


 採掘をしながらカロンが尋ねと、ユースの顔が曇った。


(えっ、どうしよう、もしかしたら触れられたくない話題だったかも)


「すみません!あの、言いたくないことでしたら言わなくても……」


 カロンが慌てると、ユースはカロンの瞳をじっと見つめて言った。

「いや、いい。むしろ君には聞いてもらいたい。俺は元々騎士だった」



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