刺客な令嬢は今日もあやかしの血の中屍の中 〜 有能な妖退治屋の正体は実は放蕩息子を演じている公爵「令嬢」でした。美丈夫クールな警察隊副官のカレと共に令嬢な私に迫り来る妖たちの秘密を暴いていきます!〜

カヤベミコ

プロローグ


時は大正。

世は妖魔や鬼が常に人々を脅かしており、天下が人のものではない時代。



今日も大都会・東京町の道中では、



「今月で三件目の 、"しかばね百鬼夜行" のお出ましだ」


「今回も妖魔専門の退治屋、『カゲロウ』に先を越されたね」




大日本国警察隊の隊服に身を包んだ二人の男が、大通りに現れた "しかばね百鬼夜行" なるものを見渡していた。


屍百鬼夜行とはその名の通り、大多数の妖魔の死骸が道に連なるよう横たわっている状態のこと。



「でもまあ、しかばねの方で良かった。これが生きてる百鬼夜行なら民たちがまた大騒ぎだよ」




目下に黒子ほくろのある、優しい面持ちの美青年がそう言うと、



「屍でも十分騒ぎの種だ。しかしカゲロウは毎度毎度、どうやってこいつらをたったの一人で音も立てずに清掃しているんだ」




もう一方の、美丈夫だが強面の男が指で顳顬を押さえ始める。



「カゲロウが道を通った後は必ず、妖魔の屍山しかばねやまが出来上がる。でも、その正体は未だ分からない。唯一目撃されているのは、立ち去る一瞬の後ろ姿だけ。全身黒装束に身を包んでいる上、またたく間に消えてしまうから、男か女かすらも断定出来ていないしね」




強面の男はそう話す同僚をちらりと見やった後、まだまだ夜が明けそうにない闇空を仰ぐ。



「奴は一体何者なんだ。我が警察隊と同様に、全民の安全を守るべく奔走している人間なのか?」




が、今度は一気に顔を地へと向かせ、



「それとも……別な目的のもとで動いている、妖専門の殺人鬼か」




彼らの足元に転がる死体らを、再び一瞥する。





現暦は睦月むつき

白雪の散らつく大都会に痕跡を残す、かのあやかし退治屋とは善の英雄か。



それとも 、"人" の皮を被った 悪の罪人つみびとか?


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