アッシュグレイブ要塞強襲

……………………


 ──アッシュグレイブ要塞強襲



 アンスヴァルトの口径28ミリ3連装砲がその砲口を魔獣猟兵の高射砲に向けた。


「撃ち方始め!」


「撃ち方始め!」


 一斉に主砲が火を噴き、高射砲陣地を叩き潰す。魔獣猟兵の高射砲と高射砲の砲弾を収めた弾薬庫が爆発し、高射砲陣地が壊滅する。


「依然本艦はレーダー照射を受けています。射撃管制用レーダーです」


「敵の高射砲は壊滅させる。友軍の空中駆逐艦と降下艇の安全補確保しなければ」


 空中駆逐艦はもちろんとして降下艇もまた高射砲で撃墜される可能性がある。そのため高射砲は全滅させる必要があった。


 アンスヴァルトは地上への激しい砲撃を続け、次々に高射砲を叩き潰した。


「レーダー照射、停止しました」


「友軍空中駆逐艦に警戒任務に当たる艦以外の地上支援を要請せよ」


「了解」


 友軍の空中駆逐艦は数隻が警戒のために上空に残り、残るものは地上へと降下した。


「友軍空中駆逐艦は配置につきました」


「よろしい。降下艇発艦準備!」


「降下艇発艦準備!」


 テクトマイヤー大佐が命令を下し、降下艇に葬送旅団が乗り込む。


「いよいよですね」


「ええ。これで戦争の終結に一歩でも近づければいいのですが」


 アレステアとレオナルドがそう言葉を交わして降下艇のシートでベルトを締めた。


『降下艇発艦開始、降下艇発艦開始!』


 降下艇が勢いよくアンスヴァルトから発艦。


 空中駆逐艦が近接航空支援を可能とする高度を維持して援護する中を大型降下艇が次々にアッシュグレイブ要塞の敷地内に降下した。


「C中隊は降下地点の確保だ。陣地の構築を急げ!」


「A中隊、B中隊! 前進開始!」


 ケルベロス装甲擲弾兵大隊は速やかに展開。カラカル装甲兵員輸送車が無限軌道の音を響かせながらアッシュグレイブ要塞を制圧していく。


「戦車前進! 友軍を支援するのだ!」


「了解です、中将閣下」


 アルデルト中将のアイスベア中戦車もケルベロス装甲擲弾兵大隊を支援すべく展開していた。さらにアルデルト中将の指揮下には試作装備である51口径105ミリ戦車砲を備えた2台レーヴェ重戦車が配備されている。


 レーヴェ重戦車はやはりアルデルト中将のゼータ・アルデルト設計局で開発されたものだ。帝国陸軍より魔獣猟兵が使用するルーン中戦車を圧倒できる性能をと求められて作成された。


 ブリュッヒャー教導擲弾兵師団で試験が行われているのみで、実戦は初めてだ。


「シグルドリーヴァ大隊より連絡。要塞において敵の戦車を確認とのこと」


「アルデルト中将閣下に敵戦車の排除を要請」


 シグルドリーヴァ大隊は先行してアッシュグレイブ要塞の偵察を行っていた。彼らは高射砲が本当に壊滅したかと敵の防衛戦力を調査している。


「戦車戦だぞ! 我々の誇る戦車の力を見せてやろう! 進め!」


「了解!」


 アイスベア中戦車は計画名VK35という名の通り35トンの重量がある。ピューマ中戦車はVK30で30トン。軽量であれば機動力と整備性、そして継戦能力に優れるというのがアルデルト中将の考えだった。


 しかし、ルーン中戦車にピューマ中戦車が相次いで撃破されると帝国陸軍はより強固な戦車を求めた。


 そしてVK50計画が発足され、重量50トンのレーヴェ重戦車が開発されたのだ。


 装甲と主砲はともにルーン中戦車を圧倒している。


「敵戦車視認!」


「弾種徹甲弾、撃て!」


 アイスベア中戦車の口径75ミリ戦車砲とレーヴェ重戦車の口径105ミリ戦車砲が一斉に火を噴く。砲弾は拘束で飛翔しルーン中戦車に命中。装甲を貫き、砲塔にあった弾薬を誘爆させて吹き飛ばした。


「おお! 流石は口径105ミリ砲だな! 抜群の威力だ! このまま殲滅せよ!」


 アイスベア中戦車とレーヴェ重戦車はともに前進し、魔獣猟兵のルーン中戦車や機関銃陣地を潰しながら前進する。


「アルデルト中将閣下に続け!」


 そのすぐ後からケルベロス装甲擲弾兵大隊がカラカル装甲兵員輸送車で進み、魔獣猟兵の守備隊を的確に制圧した。


「よし! このままいければ……!」


 アレステアたちもカラカル装甲兵員輸送車で城塞を目指して進んでいる。アレステアは“月華”を握り、シャーロットは“グレンデルII”を構え、レオナルドもいつでも戦闘可能なようにしていた。


「こっちだ!」


 そして、先行していたシグルドリーヴァ大隊と合流。


「死霊術師は確認できましたか?」


「分からん。これから突入する。手伝ってくれ」


「了解です!」


 アレステアたちが位置に古い城塞内部への突入を開始した。


「ブリーチングチャージ、セット!」


「3カウント!」


 3秒のカウントの後にブリーチングチャージが城塞の壁を爆破する。


「行け、行け!」


 速やかにシグルドリーヴァ大隊の兵士たちが城塞に穿った突破口を制圧していく。


 突入口はここ以外にも2か所作られ、それぞれの部位からシグルドリーヴァ大隊の将兵が突入している。


「我々は上階を目指す。行くぞ」


「はい!」


 アレステアたちは城塞の階段を駆け上って上階に向けて制圧を進めていった。


「屍食鬼だ! 接敵、接敵!」


 だが、それを阻むように屍食鬼が現れる。火薬式の銃火器で武装した屍食鬼たちがアレステアたちに銃弾の嵐を浴びせて来た。


「突破します! 援護を!」


「任せてー!」


 アレステアが前に出てシャーロットが後方から“グレンデルII”で援護する。


 屍食鬼が蹴散らされ、要塞の中をアレステアたちが駆け抜けていく。


「進め、進め! 今死霊術師を叩けばソードブレイカー作戦は成功する!」


 ゴードン少佐が指示を叫び、シグルドリーヴァ大隊の兵士たちがアッシュグレイブ要塞を制圧していき、同時に死霊術師ルイーザ・メイソンを捜索する。


「この近くに死霊術師の気配がします! 探してください!」


「了解!」


 アレステアが死霊術師の気配を感じ取って指示を出し、シグルドリーヴァ大隊とケルベロス装甲擲弾兵大隊の兵士たちが周囲を探った。


「ここら辺なのですが……」


 アレステアはそう呟いて周囲を探る。


 そして、ひとつの部屋の扉の前に立った。


「ここです! 間違いありません!」


「分かった。突入するぞ。ブリーチングチャージ、セット」


 アレステアが示した扉にブリーチングチャージがセットされる。


「3カウント!」


 そして、3秒のカウントから爆破と突入。


「目標を確認! ルイーザ・メイソンです!」


 城塞の部屋の一室にルイーザ・メイソンがいた。


 無数のおぞましい怪物たちとともに。


「ふむ。思ったより早く来たな」


 ルイーザ・メイソンがそう呟く。


「あれは……!」


「まさか第12自由ユーフラシア共和国歩兵旅団の……」


 人のパーツを使った人ではない怪物たち。それを構成している死体は第12自由ユーフラシア共和国歩兵旅団の少年兵たちのものであった。


……………………

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