第1話

気が付くとレンガ造りの建物と思わしきホールの真ん中に立っていた。


周りを見渡すと、自分と同じようにスーツ姿の同年代と思われる男性が2人と高校生と思われる制服姿の3人が私と同じように周りを見渡していた。


「おっさんここはどこだよ」


高校生グループの中で制服の上からでも鍛えられているとわかる肉体を持った1人が一番年配と思われる男性の胸倉をつかみかかっていた。


「最近の若者は礼儀を知らないのですか?私にわかるわけないでしょ」


胸倉をつかんでいた手を振りほどきながら少年の手を後ろに持っていき拘束してしまった。

あまりの鮮やかさに感心していると、なぜか手をつかんでいない右手で少年の胸をまさぐり始めたため、慌てて私ともう1人のおじさんで引き離しにかかった。


「上半身はいいですが下半身が薄いですね60点ってとこですか、下半身を鍛えたら相手してあげますよ」


「誰がお前みたいなきもい奴の相手なんかするかよ」


「それは残念、それでここは?」


「先ほどから扉を探していますが見当たらないんですよ」


もう1人の男子高校生が先ほどの出来事に我関せず、壁伝いにホールを一周し始めた。


不安そうに一緒にいた少女が少年の服の端をつかみ一緒に歩いているのを横目に周りを見渡しているといきなり床がらせん状にせり上がりだした。


外に向かうほど高くなり、ちょうど少年と少女が居たところが天井に到着すると動きが止まったので、全員であわてて登っていくとそこには、まだ10歳前後のドレスを着た少女と白衣を羽織った中年の男性、その2名を守るように糊の効いた制服を纏い腰には剣を刺した部隊が立っていた。


「あ、残りの勇者さんたちですね。お待ちしてました」


「今回の勇者御一行は年齢が高い方が混じっていますね」


運動不足や歳を言い訳にして息を整えている3人のおじさんを無視して高校生組は勝手に話し始めた。


「お前らか俺たちをここに連れてきたのは、元の場所に返しやがれ」


ガタイのいい少年が白衣に掴みかかろうとしたところ剣を突き付けられてしまった。


「ごめんなさい。元の場所に返す方法がないのです。元の場所では死ぬ運命の方々を呼ぶようにしてますので」


少女が悲しそうにそう告げてきたので、ガタイのいい少年はひるんでしまう。


「そういえば、自己紹介がまだでしたね。ここ、聖プレシア人類圏統一王国第一王女ミラルシア・プレシアと言います」


きれいなカーテシーを行いながら白衣の男性へと目くばせを行う。


「私は、聖プレシア人類圏統一王国第一魔道研究所時空間部門第二室長レイ・ジェント」


なぜか王女と同じように白衣の端をもってカーテシーのまねごとを行っていた。


「あなたは男ですから、カーテシーをしなくてもいいのです。それで勇者様のお名前をお聞かせいただけますか?」


「俺か?俺は立花花火はなびだ。名前が花火だからって女じゃねえぞ」


「その姿から女だなて誰も思わないって。僕は保田山光輝らいと。光り輝くらいとです」


「私は、藤堂ルビー赤色のるびーです」


「ありがとうございます。ところで、勇者様は3名のはずですが、後ろの方たちは」


床に座り込みいまだに肩で息をしている私たちを女王が見てきた。


「王女殿下が話しかけているんだ答えなさい」


「おやめなさい。この階段を上ってきたのです。ふつうのひとなら仕方のないことです。今日は部屋を用意いたしますので、明日ステータス確認を行うときにお話を聞かせてください」


王女が部屋を出ていくとメイドが入ってきてまだ息を整えているおじさんたちに戻ってくる間に息を整えるように言い残すと、残して少年少女を連れて行った。


誰もいなくなったことを確認した後、ぐったりとしていた1番年上の男性が立ち上がり話しかけてきた。


「さて、この状況を理解できる人は?」


「創作物が大好きな私から、断言はできませんが異世界召喚に巻き込まれた可能性が高いでしょうね。あとは、可能性は低いですがここで気が付く前の記憶から考えるに崩れてきた足場の下敷きになり、植物状態の私たちをフルダイブ型のゲームに入れて誰かが監視しているかですかね」


「俺も足場が崩れた後にここにいたから後の方を推したいが、さっき王女が言ってたことが確かならあの時に死んだということか?」


「私も後の方を押したいが、フルダイブ型のゲームに入れたなら何らかのアクションがあるはずだがそれらしいことが起きていないことを考えると先に上げた方が正解に聞こえるが、まだ判断材料が少ないのと、少年少女が簡単に信じたのが不思議なんだよ」


「それは、私も思いました」


「俺も最初は運動不足がたたって、本当に肩で息をしていたが、少年少女の応答の仕方があまりに違和感があって最後の方はわざと大げさになってた」


「やはり違和感を覚えたか。あまりに王女の言葉に素直に従うし、王女の言葉をうのみにするから息が整っても話に加わろうと思えなかったんだ」


「やはり皆さんもですか。そういえば自己紹介がまだでしたね。三船商事の森安健斗けんとです」


「俺はNPO法人クローバーの長瀬大志たいしです」


「私が最年長なのかな?時任組若頭佐藤冬治とうじよろしく」


各それぞれが自己紹介が終わっると見計らったかのようにメイドが現れ話を中断することとなった。






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