第26話 眷属と無双
ヤンに『チェーンソード』を渡し、僕は
今回はフルタイムでライブ配信を最後まで行うと決めている。
:テレテレテッテッテェーッ!
:ヤンが仲間になった。
:いいね!
:華が増えた
:拍手、パチパチパチ!
:チェーンソードもカッコイイ
:黒兄、結構センスいいよね?
:厨二感が満載w
:ワイは好きやで
:ヤンたんにこれを!
:黒兄、クリア頑張れ!
【スパチャ】
・《眷属》スキルを獲得しました
・《増強》スキルを獲得しました
おっ、視聴者さんからスパチャ貰ったぞ。
ヤンは性格とスタイルの良さもあって好評だからな。
えっと、《眷属》スキルは
おいおい、まさかヤンを僕の眷属にしろって言うのか?
でもまぁ、眷属となったら恩恵としてレベルアップ時の
また遠隔で配信者と意志の疎通が図れるようになるようだ。
僕がグランテラス王国で学んだ限り常人がレベルアップする際は平均+10値くらいで、転移者は+20値~30値だと聞いている。
そう考えればかなり脅威的な上昇数値だろう。
ちなみに
そしてもう一つ獲得したスキル、《増強》は相当ヤバイ。
30秒間ほどレベル・ブースト化され、全能力値が×2の二倍となる能力らしい。
僕は今レベル25であり、全能力値:1250なので二倍強化=2500となる計算だ。
一日1度しか使えないスキルだけど、一騎打ちならたとえ格上相手でも互角以上に戦えるかもしれない。
こりゃまた、いいスキルを頂いたぞ!
「視聴者さん、【スパチャ】あざーす! 有難く使わせて頂きまーす!」
「……ユヅキ殿は時折、妙なテンションになられるっすけど、何か意図があるんっすか?」
ヤンはチャット板に話かけている僕に向けて首を傾げている。
無理もない。異世界では
僕と月渚を追放したアナハールとミザリーは密かに知っていたようだけど。
頭が可笑しいと思われるのが嫌なので、
視聴者さんに神様疑惑がある点だけは伏せて、匿名の協力者扱いとした。
何せ、彼らは自分のことを言及されるのをとにかく嫌がる。
ヘソを曲げられフォロワーを外されたら、僕のレベルダウンになってしまうからな。
性格の良いヤンは「ふむ」と頷き理解を示した。
「なるほど。自分も117歳生きているっすけど聞いたことのない職業っす。族長も知らないと思うっす」
「まぁね……だから戦闘じゃ経験値が上がらない。こうして視聴者さんにチャンネル登録してもらってレベルアップするしかないんだ」
「ふむ、強大な力ほど何かしらリスキーな部分があるのが世の常っす。わかりました、ユヅキ殿! ウチは貴方様と《眷属》の契約を結ぶっす!」
「え、本当? いいのかい?」
「はいっす! その代わり条件があるっす!」
「条件?」
僕の問いに、ヤンは真っすぐな瞳で見つめ首肯する。
「――この戦いが終わったら、ウチもユヅキ殿の旅に同行させて欲しいっす!」
「うん、僕は別にいいけど……理由があるんなら聞いてもいいかい?」
「はいっす、村を出て兄貴を探したいっす!」
「お兄さん? 確か魔王軍に拉致されたんだっけ」
「そうっす! 勿論、ユヅキ殿達の邪魔にならない範囲で捜索できればと思っているっす」
なるほど、そういう理由か。
僕もヤンの想いは痛いほど理解できる。
正直、魔王軍とは直接対立はしてないけど、風評を聞く限りじゃ仲良くなる連中ではない。
それに月渚の《捕食》スキルの件もある。
妹が魔王候補である限り、いずれ魔王軍とは何かしらの形で相まみえることもあるだろう。
どうやらヤンとは利害が一致しているようだ。
「わかったよ、ヤン。それじゃ《眷属》の契約を結ぼう!」
「了解っす!」
僕はヤンと向き合い、彼女の額に手を添えて《眷属》スキル発動する。
すると額に烙印のような『眷属紋章』が刻まれて、フッと消失した
これでヤンは僕の眷属となった。
ステータスも見放題で、ネムと同様に不要となったスキルの《譲渡》も容易となる。
どれ、さっそく見てみるか。
【ステータス】
名前:ヤン
レベル:25
職業:エルフ戦士
体力:250
魔力:300
攻撃:150
防御:130
命中:350
魔攻:100
魔防:130
敏捷:350
固有スキル:《必中》《軽量化》《軽快》《隠密》《聴覚》
魔法:精霊魔法
レベル25か。
流石、村一番のダークエルフ戦士と言われているだけあり能力値が平均的に高い。
高い戦闘力に加え、精霊魔法が使えるのは魅力的だ。
今後は彼女も獲得するスキルが増え、レベルも爆上がりすることだろう。
「これからは眷属らしく、ユヅキ殿を『ご主人様』と呼ぶっす!」
「え? まぁ……そうなるのか。別にいいけど、なんだか恥ずかしいな」
黒子猫だったネムとは事情が異なるだけに余計だ。
「ヤンちゃん、よろしくね!」
「よろしくミャア!」
「勿論っす! ルナ殿にネム殿、不束者ですがよろしくっす!」
うん、妹達とも気が合うようだし良い仲間を得ることができたぞ。
こうして束の間のインターバルを終え、僕達はダンジョンのボスを斃すべく攻略を目指すことにした。
奥へと進む度に洞窟内は整備されており、人為的に加工された岩に覆われた空間になる。
それに伴い強力なモンスターが待ち構えるようになり、僕達の行く手を阻んできた。
「『スパルトイ』っす! 気をつけるっす!」
ヤンが『チェーンソード』を構え叫ぶ。
目の前に進路を塞ぎ群がるのは、騎士のような鎧を身に纏い手には剣と盾を武装したスケルトン達だ。
本を読んだ記憶によると、スパルトイは古代に活躍した戦士の骨を触媒とし竜の牙を
したがって下手な戦士より強力だと言う。
そのスパルトイが50体ほどおり、僕達に向かって一斉に襲い掛かってきた。
「どうやらダンジョンの『
僕は《神速》で一気に距離を詰め、『
付与された風系魔法の最上級レベルとされる《竜巻》を放った。
それは名の如く、凄まじい
ざっと半数のスパルトイを無に帰した。
残りの敵は、ヤンが『チェーンソード』を振るって鎧ごと真っ二つに両断し、ネムは素早い動きで翻弄しながら《連撃》を与え斃していく。
月渚も
そして数分後、たった四人によって50体のスパルトイ軍団は殲滅した。
:もう無双やんwww
:最強チーム誕生ぉ!
:ヤンたんが加入し、いい意味でボリューム感が増したわ
:美少女達に囲まれる黒兄w
:ハーレム化しとる
:羨ましいじゃねーか
:黒兄そろそろ代わっか?
:それよりダンジョン主が気になる
:死霊魔術とか使うところからして正体アレじゃね?
:ネクロ的な?
チャット欄で、視聴者さんから戦闘後の評価と考察が飛び交う中、いよいよ僕達は最終地点である『祭壇』へと到着した。
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