21 聞き飽きる木々

 少し早めな速さで森の中を歩いてゆく。ハインリヒが進みながら話始める。

 「先ほどの話の続きだ。今回は前回の反省を生かすような戦い方でいく。一番良いパターンとして先に敵を発見してそこから行動を起こしていきたい。最低でも不意打ちを受け、そこからなし崩し的になることだけは何としても避けたい。」


 皆が彼の意見に賛成している。成程確かに奇跡的に防げたが次の相手がそうさせてくれるとは限らない。「それに杖が二つある、これで何度か攻撃は防げるし囮に使うなどの戦略も考えられるだろう。」


 そういいながら足を進めていった。少し進んで行ったところで先頭にいたフランシスコレットが皆のペースを下げてゆく。そしてみんなの前に腕を伸ばして静止の合図を出してきた。彼の視線の先を覗いてみると四人組の班が木の上に魔法か何かで土台を作り佇んでいた。どこの班なのかはわからない。ただ構成としては、女の子が二人。男の子が二人だ。女の子は二人とも耳が長く、きれいなブロンドの髪だ。エルフなのだろう。赤い髪の男ともう一人は金髪?とも茶髪とも捉えられるが少し明るめ?の髪色をしている。


 耳元をひょこひょこさせながらあちらこちらを探している。こちらの場所はばれていないと信じたい。しかしどうだろうか、ばれているのか。あるいは他の班と接敵したか何かで警戒しているのだろうか?


 そんなことを考えている中フランシスが小声で話し始めた。「これからあの班を襲撃する。見た所エルフが二人いて襲いにくそうなところだ。しかし今我々は魔道具を二つ所持している。そのため、見過ごしてくれるとも考えられない。だから襲撃しよう。無理な戦いはしないが後手に回ることも避けたい。」

 

 エーリカさんも小声にてしゃべり始める「その場合配分はどうしましょう、私たちのことだけでなく魔道具についてもです」。その様子はどこか不安定さを払拭した様子であった。


 またハインリヒが口を開く。「それに関してだが魔道具は二人一組を作り分散させたい。そしてできるだけ集中して狙われないように距離は離れすぎないようにしよう」。


 そうして二人一組のペアを作った。私はハインリと組む。そしてエーリカとフランシスのペアが出来た。このペアの理由としてはそれぞれに杖以外の障壁を作ることのできる人材がいることだ。ずいぶん慎重な気がするがそのほうがいいだろう。


 あと何となくだがあちらのエルフが怪しんでいる気がする。まあそれもそうかエルフって結構聴覚が鋭いらしいからね、私もそうな気がするし。


 魔道具をハインリヒに預け、そしてそのまま魔力を練る。あの時の練習した腕前を見せるとしますか。


 それに呼応するようにハインリヒも魔力を溜め始める。ユリアの魔法の思惑は貫通力重視だ。しか彼が放とうとしてるのは爆発する範囲と威力に重点を置いている。


                ▲


 先ほどから近くに一班分息をひそめている奴らがいる。そしてこちらに気付いているかはわからないが、少し遠くにも一班いる。まずは目先のほうから片付けないといけねえな。


  そうしながらあたりを見回すのは第4班リーダー 、クリストス・エントシック・ヴァンサリウス。

 ヴァンサリウス家の期待の男である。この男の特筆すべき点の一つ、それはスキルという能力を持っていることである。


 スキルとはこの世界にある魔力などの説明できる事柄以外の動力、要素をもとにした固有の能力のことである。彼が持つスキルのひとつ聞き飽きる木々ウッドセンスによって木々の近くにあるものを探知している。そしてその木々近くに潜んでいた四人が分散したことを、後方にいる二人組のエルフと赤髪の男に伝える。


 「ライリィ、リリィ近くにいたやつらが動き出した。どちらも旗を持ってる、狙い時だ」

 「ザイン、あいつらが姿を近づいてきたら一気に行くぞ」


 そう支持を出して動き始める。クリストスの班もいくつかの指針を準備していた。その指針の一つとして魔道具を複数持つ者たちがいれば即襲う。その時おそらく分断して行動する。そうしたらそれぞれ連携を図らせないようにすること、そして魔道具の障壁のバリアをすぐに割ることを第一目標とする。


 ズガアァン       バキンッッ


 顔を出した瞬間に二段の衝撃がくる、それに一瞬ひるんだ三人であったがクリストスの思考の再は開早かった。


 スキル聞き飽きる木々ウッドセンスであいつらが何らかしらをしようとしてたのはわかったが爆発の煙で見えねえ。スキルで見てみるとあいつらつかず離れずの距離にいるな。様子見か? 


 「二人は視界を確保してくれ、ザイン行けるときにあの魔法を撃ってきてねえほう行くぞ。」


 エルフの一人が魔法を唱え始める。

 「纏う風の羽衣ウィンディファッション


 すぐさま風のが起こり周囲の煙、埃が晴れてゆく。


 「前方、一番近い木のところから攻撃来るぞ」


 リリィが構える。

 「風の精霊よこの身に力を」

 魔力をためて精霊との魔力を確かめようとした時、異変に気付く。

  精霊が反応しない?いつもならいろんなところにいるのに?森にはいくつもの歌が聞こえる。木々や花、植物の奏でる歌に、土や岩が奏でる歌、魔力のせせらぎ、風、そしていつも通りの無邪気な精霊の歌が、それだけが聞こえない?


 クリストスが話しかける。

 「おい、どうした?また次のが」


 すぐに呼応するリリィ。

 「精霊の声が聞こえない……」


 それにすぐ反応するクリストス

 スキル発動妖精と仲良しフェアリーフェアリー。たしかに反応しねえ、スキルが動いてねえんじゃねえな、妖精自体が反応しねぇい。何だこりゃぁよ。

 「リリィ、ライリィ、ザイン作戦変更だ。アドリブ行くぞ。」続けて言う「二人は俺の近くに、ザインは露払いをしながら守ってくれ」

 そうしてリリィ、ライリィの二人はすぐさまクリストスの元へと駆けつける。そして近づいた瞬間クリストスの腕が二人の肩をそれぞれ片手で触れる。

 「ちょっと、あんたいきなり何してんのよ!リリィにも触れて」

 リリィも不満そうに「動けない、邪魔」と一瞥する。


 それにたいしてまんざらでもないような、あるいはどこか真剣なような表情でクリストスが答える。「ちょいと魔力のほうを手伝ってやるんだよ。待ってろ」。

 そうしてまたもやスキルを使い始める。スキル有線増幅ケーブルアンプは触れている対象の魔力の増幅と補助をするスキルだ。

 「いいぞ打って」。


 魔力を溜めながらライリィが言う。「これで何もなかったら許さないからね」。

 ライリィ、リリィ両者は魔力の高鳴りと制御の感覚を感じていた。制御した魔力を風の属性にしてゆく。いつもであれば比較的低出力の魔法だが、魔力の高ぶりを感じる。

 リリィも同様であった。いつもであれば言動、行動、内心、どれも落ち着いた態度をしているが魔力の高ぶりに驚いている。

 なに、魔力の増幅は。ただの一個人の助力でこんなに増えるものなの?まぁ、いまは気にしているより目の前に集中しないと。とりあえずザインに盾を渡して守ってもらおう。

 そうしてリリィは木属性と土属性を掛け合わせ盾を作成する。いつもであればここまで頑強なものは作れないが魔力の増幅により簡易的だが頑丈な盾を作り出した。

 「ザインさん、これを使って。援護お願いしますね」。

 

 「ありがたい」

 そうして盾を構えながら周囲を警戒する。


 そうしてリリィ、ライリィともに魔力の溜めが終了し放たれる。一つは先ほど二つの魔法を撃ってきたペアのほうへ、もう一つは木の後ろで機会を伺っている二人のほうへ。

 着弾した場所には大きな土埃が舞う。すぐさまクリストスは状況を判断する。


 なるほどな、どっちも魔道具をつかって防御してくるから、障壁の耐久を削りたかったが、別の防御手段があるのか。土属性と、根っこ?木?ドルイド系かありゃ。いまのところもうひとペアの行動が分かんねえが、主な火力係はあっちの方に集中してるな。


 「リリィ、ライリィ攻撃をあっちの元気な方に集中させろ。もう片方はザインと俺の指示で抑え込む」。


 「わかった」「もう片方ちゃんとしてよね」

 

 その後ザインが盾を持ち木の後ろに控えている二人の元へと向かう。

 「ザインダッカートだ」

 接敵して開口一番名を名乗った。勇ましく見えるがこれも時間を稼ぐための彼なりの策略である。


 そうすると赤紙の男と小柄な女が口を開く。

 「そっちの魂胆はわかっているぞ。フランシスコレットだ、言葉は不要だろう?」

 たどたどしいような態度でこちらの女も口を開く。

 「エーリカです。じゃあ、やりましょうか。」

 そうしてすぐにエーリカが魔法を放つ。できるだけ早く魔法を発動する。樹木や木の根が彼の足元を襲う。また縦方向にも樹木の根が伸びてゆく。さながら彼のことを檻に捉えようとするかのように。


 そしてそれに続いてハインリヒも攻撃をする。コンパクトな体さばきに蹴りや魔法を交えて牽制してゆく。さながら前衛職の様に。


 それにザインは気づいていた。

 この男が前衛の様に立ち回こちらをとらえようと後ろの女が魔法を組み立てる。いい連携だ。しかし、安全な策をとっているのが目に見えているぜ。

 すぐさま盾でハインリヒを押し倒す。彼の重心を崩し、そして足元を強くけりこみ土埃を上げる。

 エーリカの援護が途切れた瞬間、ハインリヒの体の懐に潜り込み魔道具に手を掛ける。

 ハインリヒも抵抗するが伏せられてしまった不安定な状態では抵抗できないほどザインの力は強かった。


 奪った後、盾で押し付けていたエーリカに体重を預け、その押し付けの反発する作用で一気に体を離し、体を反転させて逃げ出す。それももう二人組とは距離を取るようにだ。


 焦る両者

 くそっこのまま追うと二人との距離が離れる。追わないと盾を持ちにけざれる。


 一方その頃ユリア・ハインリヒのペア。

 どちらも少し驚いていたが焦り動けないほどではなかった。冷静に魔法の軌道を弾く、曲げるなどしていなすユリア。もう一方は視界を邪魔しながら相手に牽制を加えるハインリヒ。


「ユリアさん、ありがたい、狙いやすいよ」。


 ハインリヒに目を配りながら魔法を行使していく。焦りはなかったがとある思考が彼女にはあった。


 飛んでくるヤツはなんとかできる。問題は距離感だなー。一応練習してるけど、まだまだ範囲を操りきれないから下手に重力の魔法を乗せられない。いなすのも下に叩き落とすか曲げるかだけでもっと上手くやれそうなんだけど、技量が足りない……もどかしい。

 それに結構威力高いから、このまま加減しながらいなすのは結構やばいかも。ハインリヒも結構頑張ってるけど、あせってるなー。熱くなってなんか、二連射してない?

 その予感は見事的中する。一度攻撃を曲げた後、すぐに二方向から攻撃が飛んでくる。

 やばっ、曲げたせいでこっちにっ……

 「ハインリヒッッッ」

 一方ハインリヒも手一杯であった。攻撃は激しくそれに釣られて彼は杖と魔道具二つの道具で攻撃を放ってしまった。その場面を逃すような4班ではなかった。後ろで指示を出していたクリストスが前に乗り出る。

 

「もらった!」

 

 魔力を貯めて杖から攻撃を放つ。障壁を展開しようとする二人だが既に遅かった。魔法が放たれ、それが着弾。爆風と共にユリアとハインリヒの二人は吹き飛ばされ意識を失ってしまった。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

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