第12話ビームっ! ビームですよっ

 今回の自衛隊の防御陣地作成に伴うM.A.Sのデータを元に可動部の最適化や新装甲の開発を行っていた。まだまだ改良できる部分は山ほどあったのでドック内で設計図をシコシコ書いてシミュレーションを何回も繰り返していた。


 M.A.Sの稼働データは新型のロボットを製作する際にかなり有用だ。まりなの専用機の可動部パーツをようやく決めることが出来た。使う機会がなかなか無いが備えあれば憂いなしだろう。


「……珈琲……どうぞ?」


「ん。ありがとう」


 機体や兵器開発を行うドック内部に仮設住居を建てているのだがなぜか知らないが部屋数を追加させられ、四人程同居人……あの四姉妹が住み込んでいた。アメリアちゃんが入れてくれた暖かい珈琲をゆっくりと味わう。


 今の季節は冬の終わり頃である二月だ。まだ少し肌寒い季節だ。拠点は山間部にあり朝梅雨が降りていた。山のしっとりとした空気感がとても好きなのだが彼女達には辛いらしい。アメリアちゃんは早起きして俺に甲斐甲斐しく珈琲を入れてくれていた。


 無口なタイプなのだが意外と世話焼きの気質があるのか彼女と結婚したら夫婦生活はうまくいきそうだな……とボンヤリと考える。


 空間投影されたモニターがアメリアちゃんの後頭部で少し隠れた。どうやら膝の上に乗って来たらしい。膝の上に感じるもちもちとしたお尻の感触が生々しく感じる。


 珈琲を入れてくれたお礼に頭をゆっくりと撫でてあげると後頭部を俺の胸元に押し付けくる。お腹の方に手を回してしっかりと抱き締め撫でてあげる。設計図の改良を行っていたのだが脳波での操作も可能なので問題は無い。


「まだ数日だがこの生活には慣れそうか?」


「……うん。旦那様がいるし……うるさい奴らが一杯だけど…………嫌いじゃない」


「そうか」


 なでなでなでなで。言葉を余り交わさないが抱き締めながら頭を撫でているので身体を全て預けてきている。呼吸音が深くなってきたので少し眠くなってきているようだな。


 それにしてもアメリアちゃんが高校を卒業している年齢だと聞いた時はびっくりした。四人の中でも一番背が低く中学生ぐらいだろうと思っていたのだが……。クォーターらしく瞳の色は少し青みがかっていてクールな印象を感じる。――所謂合法ロリというものか……。


 それにしても俺も少し眠くなってきたな。身体は機巧化してはいるが生命活動は機能している。疑似的な物らしいがそうとは感じさせないな。


 俺個人のある程度戦闘行動のとれる専用のスーツの開発を進めているのだがようやく設計図が書き上がった所なのだが……。そのまま微睡むのもいいかも、し、れな、いな。



 うむ……。状況を把握するにソファーで作業しながら寝て居たようだがこの状況はなんだ? 腕の中にはくにゃりと形を変形させた巨乳。頭は柔らかい膝の弾力に包まれ両サイドから柔らかくも良い香りに包まれている。――暑い。


 騒がずに大人しくくっ付いて来るぐらいなのでありがたい配慮なのだがいかんせん童貞にこの状況はとても。とても辛い。いっそのこと重婚オッケーッ! ハーレムオッケーッ! とでも言ってくれないだろうか? なに、甲斐性はあると……思うよ?


 ぽんぽんとお腹の上に乗っているアメリアちゃんを起こしてあげる。頭を振りながらイヤイヤ言っているのだが君が最初にどいてくれないと起き上がれないじゃないか。


「……おはよう」


「うん……おはよう。それとみんなもちょっと動いてくれないかな? ぶっちゃけ嬉しいんだけど……おっさんで良ければいつでもくっ付いていいからお願いできるかな?」


 もぞもぞと両サイドの小娘と膝枕をしてくれているかおるこの目が開いた。


「仕方がないな……約束だぞ?」


「ふふふふ……こうしてみんなでくっついて寝るのもいいものですね」


「コレがハーレム野郎というやつなんですね? ね? ちょっと勇気がいりましたけど私の専用機を開発してくれているんで前払いですよ?」


 首をコキリと鳴らすと再びイオンスラスターの推力増幅計画と、ドローンの遠隔操作による自動迎撃システムの確立……。取り敢えず裏の山にでも通信設備でも建てておこうかな? 次元保管庫内にマニピュレーターと金属生成ができる3Dプリンターを使用したパーツサイズ限定だけど汎用製造プラント敷設したし。面制圧用のガトリングレールガンとイオン推進増幅装置の設計図をセット……。イオンスラスターは推力が極端に低いのが欠点だけど燃料効率がいいんだよなぁ……。


「ん……どこいくの?」


「あーちょっと裏の山に通信施設を建造しに……ね。立てて置けば仲間内で通信する事やインターネット回線が爆速になるよ? 違法だけど」


「ゾンビ狩りは行かないの……?」


「そうだねぇ……危ないよ? できればある程度担保できる機体や装備ができるまで戦って欲しくないと思っているけれど……不満?」


 ちょっと悩んでるみたいだね。アメリアちゃんは戦闘狂か? H.P.M.S着用の上に今、製作しているまりな専用機みたいな機体が出来れば考えてもいいんだけどね。


「そうだね。一週間くれたら機体をそれまでに用意しておくから少しだけ我慢できるかな? 色々と考えがあるようだけど……慕ってくれる君の事大切に想っているから言ってるんだよ?」


「…………むふぅ……わかった。旦那様……すき」


 う~ん。可愛い。核融合炉にイオン推進増幅装置に兵装関連とM.A.Sの各パラメータの調整か……大変だな。ついでに頭を撫でておこう。


「む……私も専用期待が欲しいぞ? ここは箱庭のように平和だが今もなおゾンビに襲われている人間を助けたい……と傲慢な事は言えないが相応の力を手に入れられるのならば協力させて欲しい。アメリア一人ではジンベエさん……ジンベエも心配だろう?」

 

「う~ん。希望者がいるのなら機体製作設計するけれど……その代わりVRバイザーに戦闘シミュレーター入れておくから訓練してね? コクピットタイプのシミュレーターがまだできていないからさ」


「私も結構暇してて太りそうなんですよね……訓練なら運動になりますし……拠点の皆にも告知していいですよね?」


「楽しそうなシミュレーター待ってますよぉ!! 超リアルそうで楽しみです!」


 盛り上がってしまったなぁ。まぁ、拠点の子達も暇を持て余して娯楽も少なかったみたいだし色々ソフトでも作っておこうかな。シミュレーターなら機体との調整もしなくて済むしね。



 五十メートル程の通信設備を敷設完了。見晴らしのいい頂上だからかなりの距離の通信強度を確保できそうだ。イオン推進増幅装置の応用で光学系の兵装の開発に弾みが付いたし楽しみだなぁ……オーバーキルの可能性高いから飛行系の装置を完成させたかったのに兵装ばかり完成させているな、俺。


 次元保管庫で組み上げていた遠隔操作型ドローン。兵装は小型ガトリングレールガン。次世代型高性能バッテリーに推力増幅型イオンスラスター。加速力についてはある程度問題解決したけれど長時間航行機能さえあれば問題ない。高速戦闘をする予定でもないし敵に飛行するロボットが出てくる時にまで何かしら開発できていればいい。


 推進剤に固形キセノンを使用して十台ほど用意してある。自動航行プログラムを起動――学習型AIに処理を負担してもらおうか。空間投影モニターを出して観測記録開始。――行け。


 異文明の知識の解析と製造に回していた思考を遠隔操作するドローンに割く。並列思考でドローンを操縦して遠隔射撃プログラムを随時更新する。うえっ。ちょっと酔いそうだな。まだジャイロセンサーがうまく稼働していないな……。


 目標捕捉。レティクル内にゾンビの集団を捕えた――撃てッ!


 パァンと破裂音が炸裂する。丸みを帯びた弾頭がゾンビの胴体を粉砕した。しかし、発射の反動でドローンが激しく揺れ数秒ほど操作不能になる。


「クソッ。欲張って威力を上げ過ぎたな。電力量を調整しよう。しまったな……射撃しすぎると航続距離に問題が生じてしまう……要改善だな」


 イオンスラスターの自動姿勢制御プログラムの更新……。遠隔射撃プログラムのデータ解析っと。残りのドローンへとアップデートを行っていく。


「弾数の限界と重量が問題だな……いっそ光学系を搭載するか? 電力問題は超小型核融合炉を搭載して……少し疲れるけれど……やってみるか……次世代型バッテリーを兵器転用するには難しい問題が発生したな」


 小一時間程ゾンビを狙ってデータの収集を行う。次に飛ばすドローンに試作型光学兵装:オプティクスライフルと超小型融合炉を搭載する。ドローン操作を行いながら≪万能の鍵≫で超小型核融合炉を生成していく。ハンドメイドの方が精度が段違いに良い。


 実験を行ていたドローンに帰還命令を出して作り出した新しい遠隔ドローンを飛行試験を開始する。できればうまくいって欲しいが……。全長が二メートル程のそこそこの大きさになっているので目立つなぁ……。ステルス装置を積み込むことも考えないとな。


 電力の消費を考えなくていいので先程よりも加速が早い。数分程で東京都心に到着する。オプティクスライフルは二門装備してあるので交互に遠隔射撃を行っていく。


 ドローンから放たれたビームはゾンビの胴体を貫通して地面を穿つ。そしてゾンビは焼け焦げて小さな残骸に……威力最小にしてこの威力はヤバイ。人間にかすめようものなら燃え尽きてしまいそうだ。だが実用性のある兵装にニヤケ顔が止まらない。だってビーム兵器だよッ!? ロマンの塊だよ!? 素量子物理学や粒子加速・圧縮理論や安定させるのにどれだけ苦労した事か……。


 次々とゾンビの撃ち抜いて行き残骸を量産していく。遠隔射撃プログラムのアップデートも上々だ。イオンスラスターに組み込んだ推力増幅装置も問題ないようだし帰還命令を出す――はっ? なぜ自衛隊のヘリに銃撃を受けなければならない?


 ゾンビを攻撃はすれども人間に対して何もしていないのに……軍事ヘリの射線の計算等余裕だ。回避しつつも攻撃の停止を待つが……そろそろ我慢の限界だ――死ね。


 二門のオプティクスライフルからビームが放たれるとパイロットを貫いた。そのまま燃料に引火すると炎上しながら墜落していった。


「クソが。通信帯が分からなくても警告ぐらいしろよ。どうせ目新しい兵器にでも目が眩んだどっかのバカ命令だろう。M.A.Sのデータとセキュリティチェックもしておかなければいけないな……」


 新型のドローンが帰還して来ると回収してドックへ帰還した。ここの自衛隊指揮所に何か報告でもいっているかもしれないな。ああ、これだから兵器の提供には二の足を踏んだんだ。あまりにも救助が間に合っていないしこのままでは全滅の可能性が高かったからな……。拠点の移動も考えないといけないか……。



 ドックに戻るとM.A.Sの自分専用のフレームを取り出す。


 超小型核融合炉:推力増幅型イオンスラスタ:レールキャノン:オプティクスライフル:積層ハニカム構造型特殊合金装甲:次世代型高性能補助バッテリー:全天周型コクピットブロックを換装していく。


 ああ、ミサイルランチャーも背部ウェポンラックに装備しておこう、それと【潰人カイジン】もな。この剣は自衛隊に配備した【鉄板刀】よりも高品質な合金を限界まで圧縮した殺傷能力の高い鈍器のような剣だ。分類を剣かソードか悩んだがなんとなく剣の方が良さそうなのでそう分類している。平たく長方形の形をしているので盾としても役に立つ逸品だ。


 この機体の全体的なシルエットはスリムな人型。胸部はコクピットブロックやジェネレータ、バッテリーを内包しているので少し盛り上がっている。腰元は捻り動作を可能とする為細く、剛性の高い合金を使用した油圧式のダンパーだ。


 人型ロボットの代名詞である顔は……まだデザインも考えていないので首なしだ。M.A.Sと違って本格的な戦闘行為をできるロボットを目指して作った為にA.A.S(アグレッシブ・アームド・スーツ)と名付ける。カラーリングは夜間戦闘で視認し辛い艶消しブラック一色だ。厨二病とでも言うがいい。


 色々と機能を盛り込んだり小型化できていない機能が多かったので全長が十メートルにもなってしまった。まぁ、人を軽く踏みつぶせるのは利点だろう。


 機体のOSチェックとエクシアさんにサポートして貰いながら各パラメータの調整を終わらせていく。火器管制装置FCSも問題ないようだ。

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