連作短歌「デート未満」

デート未満

夢の中三度は観ている面白い映画、現実にないから君とは観れない

指を組み祈る君が宗教画じみて人の生死が入ってこない

ポップコーンつまむ指先ひとつさえ暗闇で光る　あ、また爆破

映画館入る前は空がまだ明るかったのにねとハイにスキップ

あのシーン、君がボロボロ泣いていて綺麗で二千円の価値があったな

休日のコメダ珈琲のすみっこで、ふたり正解のない解体ショー

いちごタルト、２つ食べても良い？　いいよ、何の確認なんだよ食べな

君のコーヒーと僕のソーダがいつだって逆に置かれるから笑えちゃう

その話（前も聞いたけどオチが最高だから）続き聞かせて

僕らって嵌りそうな形なのに微妙に違うミルクパズルだ

可愛いネイルしているくせに求めてくる感想が「強そう？」なのは合ってるのかよ

見る人が見たら恋人に見えるような距離感の友人になりたいんだよな

タイトルも歌手も覚えてないけれど君が歌うから覚えたアニソン

お互いに劣等感を抱えているから成立している寄り掛かり合い

終末どこ行く？　どこだって君がいればシャングリラだしとりまカラオケ

改札まで見送りに来てくれるから僕はあえて振り向かない

楽しかったって言葉が陳腐で言いたくない、またねの間の言葉をくれよ

ひどかった映画をオブラートに包みいいとこ探しを始める僕ら

マックよりモスのポテトが好きかも　君はバーガーキングのポテト派

映画館の中で買える飲み物をお布施と呼ぶ変わってる君