エピローグ1 ミラの日記
今日も彼女等は朝から元気にハンターの仕事へと向かった、目的地は魔工学研究の街グルクらしい。
月日が経つのは早いものでもうアオバくんと初めて会ってから3年になる、今ではスチエンセとアムセ王国を繋ぐ街道は大規模な整備を終えて人や物の行き来が激しくなった、この工事が早急に行われたのはローレン王女がスチエンセへと向かう道中に魔物に襲われたのが原因だろう。
街道の工事が終わったのと同時に彼女等がこの国に移住してきたのは驚いた、理由を尋ねるとアムセ王国にある街を全て見て周ったので今度はスチエンセの街を周りたいらしい、本来ならばもっと早く移住するつもりだったらしいがローレン王女に止められていた様だ。
せめて街道の工事が終わり、二国間を自由に行き来できるようになってからと言われていたらしい。
彼女等がこの国に移住してきてもう一年になるだろうか、その間に六回程何かと理由を付けてはローレン王女がこの国に来ている。
もちろんただ遊びに来ている訳ではなく、より親密になった二国間に関する色々な決め事を精査している様だ。
そんな忙しそうなローレン王女とは違い、この国に来てからの彼女等は実に楽しそうだ。
まだ行ったことのない街に行き、依頼を受けてからついでにその街を観光して戻ってくるというのを繰り返している。
彼女等が観光の度に必ずお土産を買ってくるおかげで何もなかった僕の家は今では様々な物が部屋中に飾られている。
あの街にはこんな物があった、こういうところに驚いた、などと彼女等の旅のお土産話を聞くのが最近の僕の楽しみの一つになっている。
特にアオバくんは、僕達にはない視点を持っていて聞いていて面白い。
海洋研究の街メイステルに行ったときの話では、『トンモテ』という海に住む魔物を見て、『ブリ』みたいで美味しそうと言っていた、『ブリ』というのは地球にいる『サカナ』と呼ばれる種類の動物らしいが、トンモテと違って毒針を飛ばしたりはしない様だ。
どうやらアオバくんは魔物の肉を食べたてみたいらしく、どうにか魔力を吸い出す方法を探している様だ、地球に住む人間にとって食事とはとても重要なことらしい。
エミルくんはこの国に来てから昔の知り合いにはどうせバレているからと男装をやめた様だが癖が抜けないらしく、立ち振る舞いや服装は未だに男性らしさを残している。
それと彼女は故郷のズードでとても人気らしく、シュロカを討伐した時の武勇伝から『光速の剣士』なんて二つ名まで付けられている、当の本人は恥ずかしそうだが。
リリくんは相変わらずアオバくんにベタベタしている、エミルくんが男装をやめたためリリくんに言い寄ってくる男が増えるかと思われたが意外にも男達は遠巻きに見つめるだけに留まっている。
その裏には『黒髪女神の騎士団』という謎の組織が暗躍していると言われている、その組織の団長がリリくんだという噂を聞いたが真相は不明だ。
さて、少し長くなってしまったのでそろそろ終わりとしよう。
この日記はこの星の人間視点でのアオバくんの周りの状況と彼女に対する印象をまとめた報告書のようなものだ。
もしこれがアオバくんを観察しているという『管理者』の目に止まり、継続的にこの報告書を書いてほしいというのならば何かしらの合図を送って欲しい。
無駄かもしれないが僕は少しでも可能性があるのなら未知の存在との交流をしてみたいのだ、もちろん他人に話もしない、他に何か協力できることがあるなら要求してもらっても構わない。
どうか検討してみて欲しい、僕はいつまでも待っているから。
ミラ・ユロンソ
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