第51話 ミラの研究室
ふと視線を感じて振り返ると遠くから迷惑そうな顔で図書館の利用者が睨んでいた。
「おっと少し騒ぎすぎたみたいだね、場所を変えよう僕の研究室で良いかな?」
資料を本棚に戻し図書館を出ると、中央にそびえるガラス張りのビルの様な建物へと向かう。
入り口には警備員が立っている、ミラは白衣のポケットから一枚のカードを取り出すと警備員に見せた。
「この子達は僕の連れだ、一緒に通しても良いかな?」
警備員は快く通してくれた、ミラに続いて中に入ると中央に設置されたエスカレーターに乗り、上へと上がっていく。
しばらく移動していると数人の女性達が話しかけてきた。
「もしかして…エミルとリリ!?帰ってきたの!?」
「みんな!久しぶり!元気にしてた?」
「久しぶりだね」
エミルとリリは女性達と楽しそうに話している。
「彼女達は二人の学生時代の友人だよ、今は研究者としてここで働いているね」
「あっ!ミラ先生と一緒に来たんだ!そっちの子は?」
「この子は今私達とハンターのパーティーを組んでるアオバちゃんだよ!」
「可愛い!黒い髪も素敵ね!」
二人の友人達に頭を撫でられたり頬をつつかれたりと激しいスキンシップをされているとリリが割って入ってきた。
「これ以上は駄目!アオバちゃんが困っているでしょ!」
「良いじゃないちょっとぐらい!」
「「そうよそうよ!」」
友人達から不満の声が上がる。
「すまないね君達、僕はアオバくんと話したいことがあるんだ、エミルくんとリリくんは貸してあげるから通してくれるかい?」
「ミラ先生!?」
「分かりました、それじゃあ二人共、あっちで座って話しましょう!」
「ちょっと待って、私は、アオバちゃーーーーん!!」
エミルとリリは友人達に何処かへ連れて行かれた。
少し移動して到着したミラの研究室のドアを開けると中は資料が散乱していて足の踏み場がない状態だった。
「ちょっと散らかっているけど気にしないでくれ、そこの椅子に座るといい、乗っている資料はどかして良いから」
アオバはなんとか資料を踏まないように移動して椅子に座った。
「さて、君に聞きたいことは沢山あるのだがあの二人がいない間に言っておきたいことがある」
「何でしょう?」
ミラが少し真剣な雰囲気を出している。
「二人と仲良くしてくれてありがとう」
ミラが軽く頭を下げる、その表情はとても柔らかいものだった。
「いえ、私の方が二人に良くしてもらってるんです、二人にはとても感謝してます!」
「アオバくんは良い子だね、二人が懐くわけだ」
「良かったら二人の学生時代の話を聞かせてもらっても良いですか?」
「もちろん良いよ」
ミラは懐かしむように目を細めると静かに語りだした。
「二人共優秀な生徒だったよ、特にリリくんは3つの魔法適性があるからね、周りから天才と言われていたよ、エミルくんは座学こそトップの成績だったが魔法は平凡だったかな」
「エミルさんは昔から頭が良かったんですね」
「そうだね、彼女は入学した時からずっと頑張っていたよ、リリくんの隣に立つために…」
「リリさんの隣、ですか?」
二人がどういう間柄なのかアオバはあまり詳しく聞いていない、これから聞くミラの話で何か見えてくることだろう。
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