やめちまえ、死ね、カス。

エリー.ファー

やめちまえ、死ね、カス。

「これは、戦争だ」

「あぁ、分かってる。そして、止められないだろうな。悲しい限りだ」


「魂だ」

「違う。命だ。そして、思想だ。自由であるべきだ」


「生き方だ」

「そうだな、その通りだ。誰もが当たり前のように悩む指針だ」


「在り方だ」

「そうだな。そうかもしれない。いやぁ、すまない、俺は寝るよ。明日に備えないとな」


「戦いだ」

「一方的な蹂躙だよ。勘違いしてはいけない。ただの戦いではなくて、負け戦だ」


「勝負は残酷だ」

「あぁ。そうだな。その残酷であるという点に、大いに期待している自分がいる」


「何を見る」

「見たくもない」


「何が見える」

「さっきも言った。見たくもない。何もかも、視界に映したくはない」


「勝利だけがすべてを肯定してくれる」

「そんなわけがないだろう。どれだけの死体の上に立っていると思っている。肯定なんてものはやってこない、すべて、否定だ。人生が黒く塗りつぶされ、勝利なんて生易しいものじゃ、人生は変わらない。赦されたいと思っているのに、いつまでたっても世界は変わらない」


「相手に絶望を叩きつける」

「絶望を叩きつけるんじゃない。希望を奪うんだ。ただ、今の状況は最悪だ。絶望を叩きつけられ、希望を奪われているのは俺たちだな。全く、参るよ。こんな人生を送るつもりじゃなかった。寂しい限りさ」


「爆撃機が来る。怖い。危険だ」

「来ないよ。ここは大丈夫だ。だから、ここまで逃げて来たんだ。そうだろ、相棒」


「もう、死が目の前にやって来ている」

「大丈夫だ。パニックになるな、大丈夫。今から医者が来る。お前は助かるんだ。小説みたいな、都合の良い展開に興ざめかもしれないが、大丈夫だ。俺がついてる。おまけに、神様だってついてる。俺たちは助かるんだ。生きて帰れるんだよ」


「駄目だ、もう、駄目だ」

「おいっ、気をしっかり持て。大丈夫だって言ってるだろ」


「帰りたい。帰って、寝たい。布団で寝たい」

「おい、落ち着けよ。大丈夫なんだって、帰れるんだよ」


「戦争なんて、戦争なんて」

「あぁ、そうだな。戦争なんて最悪だ。間違いない」


「勝てなかったら、戦争は駄目なものになる。勝てれば戦争万歳だ」

「お前は本当に、嫌なことを言う男だ」


「戦争アレルギーを揶揄すべきじゃない。正しい反応だよ」

「戦争アレルギーか、面白い言葉だ」


「もしも、だ。戦争が起きていなかったら、この世の中の不幸は少しくらいは減っていただろうか」

「かなり減っていただろうな。だが、新種の不幸も爆発的に増えていただろうな」


「戦争は文化を壊した。そして、文化を創ってしまった」

「戦争万歳って話か。下らない」


「文化は平和なんかに興味がないのさ」

「残念ながら同感だ。人間の顔色を伺う文化に価値はないが、人間の顔色を伺わない文化は冷酷だ」


「どうでもいいんだろうな。人の命なんて。潰えたところで、次が来る」

「まぁ、そう言うなよ。気にしちゃダメだ」


「さようなら、さようなら、またどこかで。いや、あそこで会おう」

「バカ。助かったんだよ。」

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