第9話召喚組視点 合流と大氾濫
《ヒナノ視点》
私は今森の中を走っていた。
「はぁ、はぁ、待っててくださいねトウマさん!」
汗を拭う時間も惜しんで走った。
後ろからゴブリン達は追ってきては居なかった。
不思議と他の魔物に会うこともなかった。
そのため私は何にも邪魔されず走ることが出来たが街まで距離もあり、体力がない私には走りきれず、とうとうコケてそのまま動けなくなってしまっていた。
「まだ、はぁ、トウマさんが戦っているのに……私がこんなとこで倒れてられない……!」
私は自分を奮い立たせるがどうしようも無かった。
そんな時、目の前にいくつかの影が見えた……
そして影はどんどん近づいてきて……
《シント視点》
「はあ、結局こいつらと行くことになるのかよ……」
「すいません……」
「いや! 藤崎はいいんだが……」
「拙者達のことは気にしないで欲しいでござる!」
「俺様はオーガを呼べるんだぞ?
Cランクが逆らうなよ!」
「むしろ近衛騎士団団長の私がついて行くことに感謝をして欲しいな。
何があろうとも私が居れば解決出来る。
聖女殿は私の後ろに!」
「はあ……まあなんでもいいけどよ」
俺は職業を変えた次の日ギルドに行こうとしたが春風を探している藤崎とその付き添いで来たアレクとかいうおっさん。
後ブタオ達にもついてこられている。
そんな状況でギルドに行くもんだから、まあ面倒なことになる。
ついて受付に行くとすぐに
「え! 貴方は王直属の騎士団を率いる炎の守護者アレクさんじゃないですか!」
とまあアレクが有名らしく一瞬で周りがざわめき出す。
「普通に登録するつもりだったんだが……」
まあ無理だった。
そして藤崎は早速トウマのことを聞いていたが……
「すいません。トウマさんはゴブリン討伐に魔の森に行っています」
と言っていた。
(職業変更もせず討伐に行くなんて勇気あるなぁ)
と俺が思っていたら案の定
「そんな! 冬馬は職業についていないのに!」
と藤崎が騒いでいた。
ちなみにこの間オタク達はずーっと冒険者に絡まれるお約束って奴を待ってたみたいだがアレクがいるから絡まれる訳もなく
「拙者達の華々しいデビューが……!」
と言っていた。
「すいません! アレクさん、トウマを探しに魔の森について来てくれませんか?」
「待て、俺も行く」
勿論俺は待ったをかけた
「え? ついてきてくれるんですか?」
「春風はどうでもいいが騎士団長がいるという事は安全が確保されている。
そんな中で探索できるのは貴重だからな」
という事だ。
「あ! 待って! 私も行くわよ! あんな奴らと居られないもの! 真斗君! いいわよね?」
「え? あぁ、好きにしろよ」
しかしこれにはオタク達も黙ってなく、
「拙者達も行きますぞ!」
「ぼ、僕は僕の美紀を守るために行くぞ!」
「俺様のオーガを試したかったところだったんだ!」
て訳で全員で行くことに。
とりあえず装備を整える事になったがここは聖女パワー。
アレクに金を吐き出させてそこそこイイ物を揃えられた。
藤崎は専用の装備があるらしくそれを使うみたいだが。
俺の装備は魔鋼鉄の槍(槍の先にミスリル塗装)とワイバーンの皮鎧を買った。
初心者どころか中級者でも滅多に使っていないミスリルの塗装がされた槍だ。
アレクを連れてきた藤崎に感謝だ。
そして俺たちは魔の森に来た訳だが…
「全然魔物が居ないな?
魔の森とは名ばかりだな」
「でも、少し安心しました。
「……いや、待て! おかしいぞ? 普通はゴブリンやオークなどで溢れる森なんだ。
少なくとももう既に5匹程度は会ってなくてはおかしい」
そう、俺たちはまだ魔物1匹みかけていなかった。
「だが、出ない分にはいいと思うんだが……」
「いや、昔からそうだ。
魔物が異常に発生した時や、逆に一切居なくなる時は魔物たちが徒党を組んでいる……スタンピードが起きている可能性が高いんだ!」
アレク曰くスタンピードとは魔物の大氾濫。
基本は複数の魔物が入り乱れるが、稀に1つの種類の魔物が集団となって襲い来ることもあるらしい。
後者は指揮官がおり、隊列を組んでくるため厄介だそうだ。
「てことは、これがスタンピードなら今の俺たちはそうだが……春風は相当不味くないか?」
そう、春風は俺たちより先に入り戻ってきていないのだ。
もしかすると既に……
「冬馬は生きてる!」
「……?!」
いつも声を荒らげることなどない藤崎が珍しく大声をで春風のことを呼ぶものだから周りの全員が驚いた。
「しかし、スタンピードとなれば種類にもよるが私1人で守り切れるか……」
「それでもいきます!」
「しかし……」
「大丈夫! 拙者達のチートに全て任せるでござる!」
「……わかった。しかし危険と判断したらすぐに引き返すぞ。」
そして皆が纏まっていく中、前川美紀が声を上げた
「ふざけないで! なんでそんな危ない時に居なきゃならないのよ!
私は帰るわよもう!」
「前川、帰るのも危険だぞ。
ここから一人で帰るとなると……その間出会った魔物に殺されても知らないぞ」
「私にはアイアンゴーレムがいるから大丈夫よ!」
そう言い前川は1人で戻って行った。
しかし藤崎が前川の事が心配というので春風捜索隊と前川捜索隊の二手に別れることになった。
前川捜索隊はブタオ、ガリタ、俺で行くことになり春風捜索隊は藤崎、アレク、オタクということになった。
三人衆でオタクだけ藤崎側なのは障壁があるからだ。
という訳で俺たち3人は前川のいった方向にすぐ向かったのだが……
「おいおい、ここに勇者が召喚されたっつーから来たのによぉ。
なんだコイツら」
前川の首を掴み、持ち上げている全身黒ずくめの男がいた。
《葵視点》
今私たちは冬馬を探して森を探索している。
アレクさんからスタンピードの可能性を聞いてからは逸る気持ちをを押えながら歩くのに大変だった。
しかし魔物もでず、何もすることの無い状況は私の精神をすり減らしていく。
そんな時、
「う、うぅ……」
「っ! 誰かの声がします! アレクさん!」
「あ、あぁ!」
「むむ! もしやあれはクラスのちびっこアイドルヒナノたんでは!」
そこには橘さんがいた。
《ヒナノ視点》
「貴方達は……藤崎さん達!
よかった……これでトウマさんを助けれる……!」
「冬馬? 冬馬がどうしたの! 教えて!」
「向こうで……トウマさんがゴブリンの集団に囲まれています!早く……助けて上げてください……」
「な……! アレクさん! オタクさん行きましょう!」
「もちろんでござる!」
「もちろんだ」
「橘と言ったか、君は休んでいろ」
よかった……こんなとこに皆が来るなんて……
でも待っては居られない!
「待って! 私も行く……」
「ダメよ!休んでなきゃ……」
「トウマさんは私を助けてこうなったんです! 私だけ逃げられないです!」
「……わかった! まだ下手くそだけど…」
《スタミナヒール》
「……! すごい、歩けるくらいには回復しました!」
「一応私聖女だから。
これで一緒に行けますね」
「聖女殿、春風というものは職業につけていない可能性が高い! このままだと確実に死ぬ!
急ごう!」
「はい、行きましょう!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます