グロバリジア共和国物語
広瀬妟子
序幕 革命は始まった
大陸暦1021年 フランキア王国 王都ウィリニア近郊
フランキア王国は、大陸中西部に位置する内陸国である。この世界の言葉で『偽物の海』と呼ばれるフィクマリネ湖が西部に面し、東や北を遊牧民の住まう大地や半島国家に接し、南は龍城山脈によって遮られているこの地は、多くが広大な森林と肥沃な土地に覆われ、住民は開拓によって森を切り開き、畑を耕し、自給自足の暮らしを送っていた。
その暮らしが変わり始めたのは500年前の事。集落はやがて都市へと発展し、リーダーを務めた者の家族はやがて貴族へと変化。都市国家間の交流や対立を経て、一つの国家へと統一されたのである。
フランキア王国は、亜人の総称を与えられた者達と交流と対立を繰り返し、やがて優れた技術で他の種族を圧倒。フィクマリネを挟んだ場所にある国とも交流を深め、龍城山脈を越えて伝来した宗教を国教とし、ヒト族を中核にした大国へと変じていったのである。
彼らは教義に従って亜人を排斥し、龍城山脈をも支配下に置き、優れた技術で新たな産業を生み出す。その中には別の世界から得た技術を由来とするものもあり、文明の発展は驚異的であった。
そして建国から500年以上が経ったこの年、王都ウィリニアは戦場と化していた。
「王国軍、壊滅しました。このまま市街地へ入城致します」
装甲車の車内にて、エルフの兵士が報告を上げ、黒髪の青年は小さく頷く。彼が乗る装甲車の周りには、十数両の戦車や装甲車が、彼を守るかの様に展開しており、物々しい雰囲気を醸し出していた。
「このまま進軍し、王族及び反抗的な貴族を捕縛して下さい。我らの目的は虐殺ではなく占領ですので。決して、自分たちの求めるものを見失わないで下さい」
「分かっていますよ、シンイチさん。俺たちだって連中と同じ外道に成り下がる必要は無い」
シンイチと呼ばれた青年は、傍に控えるドワーフの男の言葉に苦笑を浮かべる。そして目前の都市に向けて進む装甲車両の集団を見据えながら、彼はこの世界に来て、それからの行動を振り返るのだった。
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