Last Christmas

@Suurin

第1話

“今日はクリスマス、私のイヤホンからはまたこの歌が流れている。

「Last Christmas, I give you my heart.」

この時期になると、私はいつも自分の胸を触ってみる。まだあるようだ。

私とこの歌には何の縁がなかった。この歌との出会いは、彼女からの……ええと、どんな言葉で表現すればいいのだろうか。贈り物、プレゼント、それとも遺品。

私の家の隣には電車の駅がある。その隣には、彼女の家がある。

小駅は地上に建っている。私はその電車の駅の姿をはっきりと覚えている。線路で二つに分かれていて、こっち側は左に行く、あっち側は右に行く。

でも私はあまり電車に乗る機会がなかった。普段は、ただそこに立っていて、私が足元を通り過ぎるのを見ていた。学校へ行く道を。

マンションから隣の中学校までの道は、毎日登校と下校の時間になると少し混雑していた。歩道には歩いている生徒たちがいて、歩道の下には送迎する車がいた。人混みの中にはいつも見慣れた姿があった。それは私の同級生だった。幸い私の存在感は低く、イヤホンをつけて楽しそうに帰宅する彼女の後ろに静かについて行くだけだった。邪魔をしなかった。

縁は奇妙なものだが、その時知らなかったことは、奇妙な縁ほど消えやすいということだ。

中学最後の席替えで、彼女は私の隣になった。

彼女を良くも悪くも言える生徒だと思っていた。良いというのは成績が優秀だからで、悪いというのは校則違反のmp4を持っていたからだ。

自習時間になると、彼女はまたmp4を取り出した。

「聞きたい?」

彼女は私の視線に気づいた。

半ば強引に、私は片方のイヤホンをつけた。彼女はもう片方をつけた。

イヤホンから歌声が流れてきた。私はその歌を聞いてみた。

「Last Christmas, I give you my heart.」

その時私はChristmasという単語しか聞き取れなかったが、画面を見れば歌詞の大意はなんとなく分かった。

私は画面の中の金髪の美男子を指して言った。

「これが歌ってる人?」

彼女は頷いて、そして存在感が少ないが多くもない影の薄い人を指さした。

「彼ら二人は一組だったよ。Wham!というバンド。」

「でもなんで一人しか歌ってない気がするの?」

「だって彼がボーカルだからさ。」

「その後は?」

「バンドは解散した」

「なんで?」

「知らない。」

「彼ら二人の間に何か確執があるとか?」

「ないよ。」

「変だね。じゃあ彼ら二人はまだ歌ってるの?」

「うん、この人。」

彼女は手で画面の中の金髪の美男子を指さした。

「彼は何枚もアルバムを出して、すごく成功してる。」

「じゃあ彼は?」

私は影の薄い人を指さして聞いた。

「知らない。」

「才能が才能がないんだろうね。」

この言葉を聞いて、私は少し悲しくなった。天才の光に照らされて、普通の人はいつもこんな風に消えてしまう。

中学最後の時期、彼女はmp4で私にたくさんの歌を聞かせてくれた。でも私が一番好きだったのは、やっぱりLast Christmasだった。

時計の針が一周して12に戻り、この日を終わらせた。冬が去り夏が来て、私の中学生活も終わった。夏休みが過ぎて、高校に入る時期になった。私と彼女も再び出会った。

高校は私の家からとても遠かった。高校は彼女の家からもとても遠かった。だから、私たちは電車に乗って学校に行く必要があった。

私と彼女は一緒に電車の駅に向かった。でも私が階段を上がる時、彼女は立ち止まって、あちらを指さした。

「私はあっちに行くんだ。」

彼女は笑って、あちらへ階段を上がった。

私はその時初めて気づいた。ああ、私たちはもう同じ学校ではないんだ。

私は階段を上がって、線路の向こう側にいる彼女を見て、手を振った。

「じゃあね。」

私は電車の左側の道を覚えている。この駅を過ぎると電車は地下に潜り込んで、もう太陽の光を見ることができなくなる。ガラス窓の外は真っ暗だった。私も右側の道を覚えている。電車はずっと高架橋の上を飛ばしている。ガラス窓の下には行き交う人や車が見える。

私は左へ行くことになる。暗闇の地下に入ることになる。

その日残りのことはあまり覚えていない。私はふらふらと高校生活の最初の日を過ごした。郊外の高校周辺には人気がなくて、朝夕の時間になっても、私は簡単に電車に乗ることができた。私が暗闇から出て、電車から降りる時、遠くの太陽はまだ一本の指で地平線をしっかりと掴んでいて、なかなか沈もうとしなかった。

私の方の電車は郊外から帰ってきたばかりで、降りる人はあまりいなかった。でも向こうの方の電車は市内から帰ってきたもので、人でいっぱいだった。駅に着くと、まるでゴミを捨てるように人々を捨てた。溢れ出たゴミは駅の半分を汚染し、騒音を占領した。私はこっちに立っていて、向こうの人々を見ていた。彼女の姿を探そうとした。

でもそれは無駄だった。私は後で知ったが、管理が厳しい進学校の放課後自習は一時間遅く終わるんだと。

微小な縁はすぐに散ってしまう。天才と普通人の臨時コンビもやがて幕を閉じる。

私には何の不満もなかった。あんなに幸せな時間を持てただけでも、私にとっては十分な幸運だった。

その後も彼女に会うことはなかった。一度もなかった。高校を卒業して大学に入った。大学を卒業して家に帰ってきた。仕事をする街へ行く前に、この美しい思い出をくれた街に別れを告げるつもりだった。

今日はクリスマス、私はもう一度あの電車の駅に行ってみた。電車に乗ってみた。せめて一度だけでもいいから、私の人生と逆方向へ行く電車に乗ってみたかった。

イヤホンから流れるのはやはりLast Christmasだった。私はあまりにも歌声に没頭していて、誰かが私を叩くまで気づかなかった。

私は振り返った。彼女だと気づいた。

「あなた……」

「ごめんなさい、間違えて乗ってしまいました」

閉まるドアのチンチンという音と共に、私は電車から飛び降りると、その場に立ち止まった。電車が駅を出て行くのを見つめていた。遠くへ行ってしまうのを見つめていた。

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