幼馴染が女装系YouTuberだった
有田よよ
第1話 私が配信を始めた理由
『今日も学校疲れたよ~甘いもの飲みたい……近所にできた人気のカフェ』と、カフェの写真を添えてりあえず投稿。数秒でイイネが50件。
私は高校に通いながら、夜はネットで配信者をやってる。名前は本名まんま「RICO」。そこそこ人気なのだ。ネットで独り言をつぶやけば何十人から反応がきて、会話も弾む。
たまに変な人もいるけれど、学校の集団生活が苦手な私は、ネットの世界での見知らぬ人との会話がとても好きだった。学校は『その地域』で育ったってだけで大半が集められる。そのせいで当然合わない人も多い。
けれど、インターネットは価値観の合う人が集まるコミュニティが作れる。私はお化粧が好きで将来は美容関係の仕事につきたかったけれど、田舎の田んぼ道にポツンとできた高校ではそんな将来に参考となるような人はいなかった。
お化粧は好きだけれど、別に学校に反抗したいわけではないのに先生に注意され、何かに熱中することが無い周りの子ともあまり話が合わなかった。
女の子は大半はおしゃれが好きだと思うけれど、私はさらに踏み込んで骨格に合ったメイク研究の勉強や海外のメイクが得意な女装する男性、ドラァグクイーンと呼ばれている人達などのアーティステックなものが好きだったけれど、皆は違うようだった。
クラスで私がドラァグクイーンのアートパフォーマンスを友達に見せたけれど、
「ほんと、リコはバカみたいなメイクが好きだね。この人男だよ?」
「キモいしケバいじゃん。リコはメイク上手だけど、変なの好きだよね」
と大声で笑った。
それに合わせて、幼馴染の山田君も、
「ほんとだよな、ウケる」
と調子を合わせてきた。
コイツは私と幼稚園から同じなのだが、どうも性格が悪く私をからかってくるので嫌いだ。母親同士が友達という田舎ではどうしても付き合いが増える間柄のため、いやいやながらお知り合いだ。
顔は女顔で暮らすで人気なのだが、私は嫌いだ。
もう一度言うが本当に嫌いだ。人の夢をバカにするヤツは嫌いなのだ。
けれども私はそれに対して、怒ることも言い返すこともできず、変かな?と苦笑いをして、田舎の高校から見えるでっかい太陽を眺めた。
ここは地獄だ。
そんな過去を思い出しながら、私は田んぼ道を歩いて帰っている。
高校の近くは少し繁華街になっているが、私の家の方角とは真逆なのだ。だから、さっきネットに書いた近所のカフェなんてのはかわいい見栄ってやつだ。
うちの家の裏庭には狸がでるんだけれど、そんなのぜんぜんおしゃれじゃないからネットでは秘密にしている。
「ん?通知?誰だろう」
誰かが私にメッセージを送ってきたらしい。チェックすると、私の個人メッセージにネットで仲良くしている有名コスプレイヤーの女の子、アキちゃんから通知がきていた。
『あの……写真見たんですけど……もしかしなくても私たち、同じ町に住んでるかもしれません!もしよかったら一緒に来週土曜お茶しませんか?メイクのこととかも色々聞きたくて……』
アキちゃんとは私が無名の頃から仲良くしている子で、ことあるごとにネットで相談事を互いにしあっている。お互いに今まで育ってきた環境や、学校に息苦しさを感じていること、メイクやボディーで表現をしたいという考え方が似ていて
今では一番の親友とまで言えるほどだ。しかし、現実で会ったことはなかったのだ。今までそうなりそうなタイミングは合ったけれど、アキちゃんに断られ続けてきたのだった。
けれども、今日は珍しく彼女からのお誘いだ。
……とうとうこの時が来てしまった。
「どっ……!どうしよう……でも、うれしいし。会いたいな」
インターネットで出会った人と実際に会うなんて!と両親に怒られそうだ。しかし、彼女のあげる写真を見るに、同じくらいの年齢だろうし、近所だもの。
そう思って勇気を出して、
「いいよ!じゃあ飛びきりかわいいメイクして、カフェに12時に集合ね!」
と返した。
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