第233話
無事すべての問題も片付き、俺としては平和な日常が送れていた。
麻耶の配信を見ながら、ごろごろし、昼飯は――アリアが用意してくれる。
唾液を混ぜようとしたら殴りつければ何とかなるしな。
国内の迷宮の問題などは、すべてアリアの部下が処理して。
控えめに言って、最高ではないだろうか?
「……ん?」
のんびりとアリアとともにマヤチャンネルを見ていたのだが、そこで何やら異様な魔力が感じられた。
俺の反応に、アリアもこちらを見てきた。こちらを見るアリアの表情から、おそらく同じことを感じ取ったのだろう。
「……お兄様、気づきましたか?」
「ああ、そうだな。知らない魔力だな」
何か異常を感じた。
膨れ上がった魔力は、まるで迷宮が発生するときのようにも感じる。
ただ、何かが明らかに違う。表現しがたい難しい状況であり、何と言えばいいのだろうか。
未知の魔力があちこちで感じ取られていく。魔力探知による範囲を日本全国に向けてみたのだが、どうやらあちこちでちょこちょこと起きている。
世界では……起きてないな。ということは日本限定?
一体何が目的なんだろうか?
「アリア、これはなにか知ってるか?」
「いえ……日本のあちこちで発生しているようです。……ただ、魔力の種類が別種という感じですが」
「みたいだな」
俺も同じように魔力を分析していたのだが、分からんな。
普段とは異質な魔力を調べるには、自分の目で見に行った方が早そうだ。
麻耶の配信を振り返りたかったが、仕方ないな。
俺はアリアとともに空間魔法でその場所へと移動した。
そのときだった。
謎の魔力が、俺の麻耶の元にも発生していた。
即座に空間魔法の行き先を麻耶の方へと切り替える。
魔力は正確には麻耶を狙ってはいなかったが、近くにいる友達でも助けようとしたのだろうか。魔力に向かって、麻耶が近づいている。
俺が即座に空間魔法を展開し、その場へと移動した。
場所は麻耶の教室。何やら、驚いたような声が響き、教室内は騒然としている。
いきなり俺が現れたことにも驚きはあったのだろうが、今そちらに声をかけている暇はない。
「麻耶! 大丈夫か!?」
近くに、麻耶の姿はない。
魔力を調べてみるが、どこにも魔力は感じられない。
まるで、この世から麻耶が消えてしまったかのようだった。
「ま、麻耶のお兄さん……! 麻耶ちゃんが私を助けようとして……!」
麻耶の近くにいたと思われる子が、体を震わせていた。
俺は一度深呼吸をしてから、その子に声をかける。
「何があったのか、状況を教えてくれるか?」
顔を青ざめてしまっている彼女を落ち着かせるため、できる限り丁寧に声をかけると彼女はゆっくりと話し出した。
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