第180話
「世界ランキング四位……ゴルドさんは、ブラックブレードマンティスによって一撃でやられました。……その相手を、どうにか鈴田さんに押さえてほしいのです」
レイネリアの視線がこちらに向いた。
事前に聞いていた作戦の通り、俺が押さえている間に全員が脱出という流れだ。
……まあ、ただ――それはあくまでできればの話だ。
「分かりました。まあ、倒せそうなら倒しますね」
「……そ、それは。本当に危険な相手です。とにかく、油断しないでください……っ」
「ええ、もちろん分かってますよ」
レイネリアが慌てた様子で叫んだが、どうやら俺が相手を舐めているのだと考えているようだ。
少し怒っているようにも見える。
そんなレイネリアをなだめるように、武藤さんが声をかける。
「そこの判断はもう次元が違いすぎて、我々にはできません。そこについては、鈴田に任せましょう。……問題は、敵の存在ですね。ブラックブレードマンティスの居場所がわからないとなると、救助活動を開始するのは危険ですよね……」
武藤さんの言葉を聞きながら、俺は資料に書かれていたことを思い出していた。
おびき出すための作戦はいくつかある。
どうにもブラックブレードマンティスは、俺たち人間を島から出したくないらしいからな。
逃走しようとすれば、おそらく姿を見せるだろう。
……ただ、それだと飛行機や船の近くで戦闘することになるから、被害が出る可能性もある。
なら、やるとしたらもう一つだな。
「とりあえず、暴れてきます」
「へ? ど、どういうことですか?」
俺が指を鳴らしながら言うと、困惑した様子のレイネリアの問いかけが返ってくる。
「ブラックブレードマンティスはたぶんですけど、優秀な部下を育成してるんですよ。将来の夢は地球全体の支配とかですかね? まあ、詳しいことは分かりませんが、とにかく強い個体を増やしたい。なら、その個体たちをつぶしていけば、何かしらの行動を起こす可能性があると思います」
「で、出てくるでしょうか?」
「実際、ゴルドのときもそうだったんじゃないですかね? まあ、このまま増え続けられたら面倒なんで、数減らしてみますね」
ブレードマンティスたちも強いと聞いているからな。
黒竜の迷宮の100階層以降の魔物と比較して、どのくらい強いのか知っておきたいしな。
俺は三人をその場に任せ、結界へと歩いていく。
何やら背後からは不安がるような声が聞こえてきたが、結界の前までたどり着いて足を止める。
結界はかなりしっかりとしている。
これを破壊して中へと入ってしまうと、再展開が大変そうなので俺はレイネリアへ視線を向ける。
レイネリアはとても不安そうな表情だったが、それでも結界の一部に穴を開けてくれた。
その出口の近くでは、仲間を喰らって肉体を強化していくブレードマンティスの姿があった。
迷宮内で魔物同士でいざこざがあることはたまにある。彼らも人間と同じで魔物を倒せば成長するらしい。
いわゆる、ユニークモンスターといわれるものだ。
ブラックブレードマンティスもそういう意味でいえばユニークモンスターなんだろうな。
だが、ユニークモンスターに先導されたからといって、他の魔物までユニーク化するという事例は聞いたことがない。
よほど、このブラックブレードマンティスが珍しい魔物なんだろうな。
スーパーユニークモンスターといったところか。
「シャアアアア!」
俺に気づいたブレードマンティスは歓喜の声をあげ、こちらにとびかかってくる。
人型をしたそいつらの両腕は、窯のようになっていて、それが俺へと振り下ろされたが――吹き飛んだのはブレードマンティスの首だ。
「――俺は麻耶以外で待てはできないからな?」
近くで息をひそめているであろうブラックブレードマンティスに伝えるつもりで、俺はそう独り言を呟き、戦闘を開始した。
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