第150話



 俺が世界ランキング二位になった、ことよりも麻耶のこともついでみたいな形ではあるが報道されることが増えたことのほうが喜ばしかった。


〈草〉

〈どんな関係だよw〉

〈向こうは向こうで色々大変なことになってるみたいだけどな〉

〈結局ヴァレリアンに隠してアメリカも色々やってたんだろ? ヴァレリアンも大変だよな〉

〈ヴァレリアンもなんだかんだ利用されてて可哀そうだったよな〉


 ……みたいだな。

 色々と難しい事情があるようだが、俺には関係のないことだ。


「まあ、向こうの事情に関してまでは知らないからな。そういう難しい話には巻き込むな。俺はただの妹推しの冒険者なんだからな」


 政治的な面倒事に巻き込まれたらたまったものではない。

 最近、色々と事件に巻き込まれているが、麻耶の推し活に励むただのしがない一市民なのだ。


〈草〉

〈お兄ちゃんそういうのまったく興味ないよなw〉

〈まあ、それはヴァレリアンの問題だしな〉

〈こうなったらお兄ちゃんには1位を目指してほしいところだな〉

〈1位ってルーファウスだったっけ? あんまり表に出てこないよな?〉

〈ほとんど出てこないな。五年くらい前に、Sランク迷宮を一人で攻略したのが最後だな〉

〈それでも1位なんだな〉

〈一度だけ、ヴァレリアンが戦ったことがあってヴァレリアンより強かったらしいな〉

〈まあでも、災害級ってもはや皆強すぎてよくわからないからなw〉


 世界ランキング1位か。

 あのとき、ヴァレリアンの誤解を解くことは簡単にできたと思うが、それでも俺は少しだけ戦ってみたい気持ちもあった。

 もちろん、世界ランキング1位の者がどれほどの力を持っているのかは気になるところだがまあ、戦うのを目的にすることはない。

 同じ冒険者通り、協力し合って迷宮という脅威から麻耶を守っていければいいんだしな。


「そんな年がら年中勘違いされて襲われたくないって。結局、あのビーチバレーボール大会だってなんとも言えない空気のままやったんだぞ?」


 ヴァレリアンとの戦闘のあと、休憩を挟んでから一応ビーチバレーボール大会は再開した。

 ……ただ、なんとも微妙な空気での進行だった。


〈ビーチバレーボール大会なぁ〉

〈イベント自体は良かったけど、ヴァレリアンとお兄様の戦いの後だったもんなぁ〉

〈あれの最高視聴者数のほとんどがお兄ちゃんの戦いに持ってかれたんだよな〉

〈まあ、あれは仕方ない〉


 コメント欄にもある通り、俺とヴァレリアンとの戦いを見た視聴者の多くが、そこで満足してしまったんだよな。


 俺としては、麻耶の水着姿を拝めたのでそれだけで十分に価値はあったが、それでも不満は残っていた。


 そんな話をしながら歩いていると、ヘビーウェアウルフが跳びかかってきたので、蹴り飛ばして仕留めた。

 配信をしながらも、戦闘で手を抜くことはしない。

 そんな俺の戦闘配信を見ていたコメント欄が、再び盛り上がっていく。


〈……あれ、ここ何階層だっけ?〉

〈131階層からだよなあ〉

〈Sランクの魔物が石ころみたいに蹴り飛ばされて仕留められるの、相変わらずやべぇ光景だなw〉


 初めて見る人もいたようで、彼らの驚きっぷりは見ていて面白い。

 特に外国人の人たちはかなり驚いているみたいだな。


「まあ、そういうわけで、最近は色々あったけど俺の近況はそんなところだ。こっからはマジでコメント見ずに、攻略してくからな。拾われなくても文句言うなよ」


 そう返事をしてから、俺は襲い掛かってくるヘビーウェアウルフたちを仕留めていく。


〈Sランク迷宮の魔物雑談しながら仕留めていくとか〉

〈相変わらずの強さで安心したわ〉

〈迷宮攻略配信でこんだけ余裕感あるの相変わらず化け物すぎるwww〉


 ひとまず、俺の日常配信は問題なく終了した。






―――――――――――

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