第132話



〈草〉

〈相変わらずだな〉

〈変わりないところがお兄様の魅力よ〉

〈でも、お兄ちゃんの周りには色々な女性いるけど、そこんところどうなんだ?〉


「じゃあ、ちょっと質問なんだけど、麻耶ちゃんが堂々の一位は仕方ないけどじゃあ二位はどうなの?」

「別に特にないな」

「うわ、それはなしだよ。ほら、周りに結構女性いるでしょ? 誰が一番接しやすかった? 魅力的だった?」

「いや、そういう順位は別にないな。それぞれ皆魅力的な部分はあるし……やべぇ部分あるし」


〈お兄ちゃん、かっけぇ〉

〈草〉

〈最後の絶対レイナのことだろw〉

〈いや、シバシバかもなw〉

〈確かにあの子やべぇからなw〉


 ……やべぇ部分に関して。確かに玲奈もそうなんだが……最近は違うんだよな。

 まあ、流花も凛音もあまり配信ではそういった姿を見せていないので、俺も何も言うつもりはないが。


「へぇ、それじゃああーしも魅力あるって感じ?」

「ああ。そりゃあそうだ」

「うえ……あっ……まあ、知ってるけどー」


 有原は先ほどまでのからかっていた表情から一転、恥ずかしそうにしている。

 ファンの人たちが喜びそうな表情であり、カメラに映してやりたかったが、あいにく有原の手の中だ。

 ていうか自分で聞いておきながら恥ずかしがるというのはどうなのだろうか?


「それで、さっきのコメントにあったけど有原はチャンネル作らないのか?」

「ちゃ、チャンネル? チャンネルかー。っていってもあーしそんなに時間取れないし。それこそ作るだけになっちゃうし、まー、たまにお兄さんのところにお邪魔させてもらうくらいでいいんじゃない?」

「俺は別にそれでもいいけどな」


〈それはそれで楽しみだ〉

〈俺も行きてぇぇ!〉

〈美也ちゃん、別に冒険者配信だけじゃなくてもいいんやで?〉


 コメント欄でも期待する声は結構あるようで、有原もまんざらではない様子だ。

 まあ今後どうするかとかそもそも事務所の方針とかもあるだろうし、俺もそれ以上は追及しない。

 ちょうど扉の前に来たところで、有原が問いかけてくる。


「お兄さん、第五階層突破のための仕掛けはどんな感じなの?」

「そうだな……。ここは人は使わなくてもよさそうだな。ただ、この入り口にあるパズルを解く必要があるらしい」

「パズル?」

「ああ。このエリアにいる魔物が稀にドロップするパズルの欠片をここにはめると、突破できるそうだ。協会の人曰く、五十体くらい倒すと入手できるらしい」

「え、めんど。何そのクソみたいなルール」

「だな。必要なのは全部で五つ。まあ、ゲームのレアアイテムみたいな感じでドロップ設定されてるんだろうな。協会の人たちも倒しまくってもまったくでないときもあったみたいだ。あと、入手したパズルの欠片は五階層を出ると消滅するらしい」

「えー……じゃあ一回で突破しないとじゃん。下手したら数日かかるかもしれないし、泊まり込みセット必須ってことだよね」

「だな」


 ……これはある意味一番人員がかかる作業かもしれないよな。

 こんな面倒なギミックのために、ここに出現するデモゴーグたちを倒しまくる必要があると。

 そして、奴らは自爆してくるため……疲れたときに油断して巻き込まれる可能性もある、と。

 最悪では?


〈それってつまり運が悪かったら一生手に入らない可能性もあるってことだよな……〉

〈ゲームだとそういうギミックたまにあるよな〉

〈まあ、でも普通は倒せば倒すだけ確率はあがっていくもんだよなw〉

〈せめて天井システムが欲しいところだな……〉


「それじゃあお兄さん。すべてのパズルの欠片を集めたってことで進もっか」

「そうだな。いやー、集めるの疲れたなー」


 そういいながら扉を蹴りつけて破壊し、俺たちは先へ進んでいく。


〈草〉

〈お兄さんwww〉

〈もうちょい迷宮さんに優しくしてあげてw〉

〈迷宮涙目すぎるなw〉

〈これだからお兄さんは……最高だぜ〉


 それからも様々なギミックの用意された迷宮をちょっとした茶番を繰り返しながら破壊し、俺たちは十階層へと到着した。

 これまでとは違い、十階層はボスフロアのような造りとなっていた。

 まるでコロシアムのような円形のそこに到着した俺たちは早速周囲の様子を確認する。


「ここが最終階層って感じ?」

「かもしれないな。もともとそんなに深くないと思われる迷宮って話だったし」


 一応ギミックの攻略情報は七階までは載っていたが、それ以降はない。

 協会で調べられたのがここまでだったそうだ。

 すたすたと歩いていくと、俺たちの進行方向……ちょうど十階層の中央付近に霧が集まっていく。

 ひときわ大きな霧はデモゴーグの姿となったが、これまでに遭遇してきたものより一回り大きいな。

 デモゴーグキング、とでも名付けようか。


「ボス、って感じだね。……さすがにあーし結構戦って魔力もきついから、お兄さんの撮影がかりに回るよ」

「そんじゃ……一瞬で倒すのと演出重視、どっちがいい?」

「一瞬で倒してる姿みてみたいな」

「了解」


 デモゴーグキングがじろりとこちらを見てきたところで、俺は地面を踏みつけた。

 懐へと入り、魔力を籠めた一撃を叩きこんだ。

 俺の拳は、デモゴーグキングの腹へと辺り――未だ戦闘態勢に入っていないそいつを吹き飛ばした。

 そして――霧となって消えた。



―――――――――――

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!


『楽しかった!』 『続きが気になる!』という方は【☆☆☆】や【ブクマ】をしていただけると嬉しいです!


ランキングに影響があり、作者のモチベーションの一つになりますのでよろしくお願いします!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る