第77話

「よし視聴者たち! 今のちゃんと聞いたか!? あとで俺が不当な請求をされそうになったら弁護しろよ!」

〈草〉

〈おう、任せろ!〉

〈お兄様のためならどこまででもついていきますとも!〉

〈全力を見せてくれ!〉

〈まじでやるのか!?〉

〈今日ただのSランクへの更新なだけかと思っていたんだけど、もしかして歴史に残る瞬間を見ているのか!?〉

〈これ普通に冒険者の歴史に残るよな!?〉

〈まじかよ!? お兄様、破壊してくれるのか!?〉


 俺は小さく息を吐いてから、再び測定機に手を近づける。


「お兄ちゃん、私も見たい!」

「任せろ! お兄ちゃんぶっ壊してくる!」


〈草〉

〈さっきまでしぶしぶだったくせにマヤちゃんで一気に乗り気じゃん〉


 俺はすぐに測定器の前へと向かい、そこに手のひらを当てた。

 そして――体内に流れる魔力を放出する。

 その瞬間、すぐに測定器は100の数値を示す。

 そして――エラー音が響き渡り、測定室全体が揺れ始める。


「こ、これは……っ!」

「か、会長……これはさすがに……っ!」


 歓喜の声を上げる会長とは裏腹に、周囲にいた人たちは慌てた様子で声を上げる。

 一度魔力を抑えたほうがいいか? という思考が脳裏をよぎったが、


「お兄ちゃんがんばって!」


 ――そんなものは忘れる。

 麻耶にいいところを見せる。そのためだけに、俺は壊すつもりで魔力を込めた。

 次の瞬間だった。


 激しい音を上げ、機械が爆発した。

 俺は身体強化で破片などが飛んできても無傷だった。背後を見ると、会長が片手を向けていた。

 ……周囲すべてを覆いつくす無敵の結界魔法。

 その結界は、会長の特殊魔法だ。


 全盛期では津波という自然災害でさえも跳ね返すほどの強力な結界魔法を持っている。

 圧倒的な会長の魔法によって、機械の破損以外まるで被害はなかった。


「大丈夫ですか、皆さま」


 笑顔とともに会長がこちらを見てくる。


「あの会長? 結界魔法の範囲に俺入ってないんですけど」

「迅さんは大丈夫でしょう?」

「まあ、別に」


 吹き飛んできた大きな部品を片手で持ちながら俺はそれを足元に置く。

 そして、会長はどこか興奮した様子で機械へ視線を向けていた。

 測定機を壊され、それほどの笑みを浮かべる人はそうはいないだろう。


「……見事、壊してくれましたね」


 会長の笑顔とともに、コメントがいくつも増えていく。


〈ファアアアアアアア!〉

〈マジかよwww〉

〈Sランク冒険者おめでとう! そして災害級もおめでとう!〉

〈これで公式的に日本のトップ冒険者になったなw〉

〈お兄様! これからも配信頼むぞ!〉

〈とうとう日本にも災害級の冒険者が現れたのか! ていうか、ずっといたんだよな!〉


「お兄ちゃん! Twotterとかもすごいことになってるよ!」

「トレンド一位? おお、麻耶の名前もあるな!」

「最強兄妹だって! まあ、でも私はまだまだなんだけどなぁ」

「いやいや! 麻耶に命令されたらなんでもするからな! 実質麻耶の力みたいなもんだ! 麻耶がトレーナーで、俺はポケモ〇みたいなもんだからな!」


 麻耶の名前はトレンド四位くらいにあった。一位じゃないことが気に食わないが、俺と麻耶は手をつないでぴょんぴょんと跳ねていた。

 霧崎さんも微笑とともに俺たちにカメラを回し、そして……会長がゆっくりと口を開いた。


「それでは……本日の測定ありがとうございました。お二人の冒険者カードは、こちらで再作成しますのでしばらくお待ちください」

「あっ、はいはい。分かりました。んじゃ、今日はこれで配信終了で。おまえら、マヤチャンネルの登録を忘れないことと、さっき会長が言っていた機械破壊してもいいってことは絶対覚えておくように。そんじゃ」

〈草〉

〈弁償恐れすぎだろw〉

〈お兄ちゃんならちょっと迷宮潜れば払えるだろうにw〉

〈余韻を堪能する時間がまるでないの草〉

〈まあ、いつものお兄ちゃんだな。次の配信楽しみにしてるからな!〉


 そこで、無理やりに話は打ち切り、今日の配信は終わりとなった。




―――――――――――

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