第47話



〈おおおお!〉

〈始まったじゃねぇか!〉

〈マジでここ【雷豪】ギルドの道場じゃねぇか!〉

〈ここって確か迷宮の魔石を加工して作ってある超頑丈な場所だよな!?〉

〈マジで武藤と戦うのかお兄様!〉

〈武藤VSお兄様! こんなやべぇ模擬戦、普通に金とれるレベルだぞ!?〉

〈それを無料で配信で流すとか「リトルガーデン」も【雷豪】も太っ腹すぎんよぉ!〉

〈お兄様、早く来てくれ!〉


 【雷豪】ギルドの道場に設置されたモニターには、そんな配信の様子を見ることができていた。

 スマホで撮影する時とは違い、立派な撮影機材まであるのはさすがに大手ギルドなだけはあるな。

 用意してもらった椅子に腰かけながら、その様子を眺めていると、今回の依頼主である【雷豪】ギルドのリーダーである武藤と秘書のような女性がやってきた。


 俺が立ち上がると、俺の隣に控えていた霧崎さんも立ち上がり、すぐに頭を下げる。


「初めましてですね。リモートでは何度か打ち合わせをしていましたが、こうしてお会いするのは初めてましてですね。鈴田迅のマネージャーを務めている霧崎奈々と申します」


 俺も合わせて軽く頭を下げると、武藤さんが微笑を浮かべた。


「こちらこそ、初めまして。私は武藤大志です……それで、君がお兄さん、と呼ばれている人、だね?」


 ちらと武藤さんの視線がこちらを向く。

 ……この人、滅茶苦茶強いな。

 まだ解放していないというのに、彼から放たれている魔力は凄まじいものがあった。

 

「そうですね。よろしくお願いします」

「よろしく……それと、ちょっと私用になるんだけど、うちの秘書が君のファンみたいでね。軽く握手でもしてあげてもらっていいかな?」

「……ええ、別にいいですよ」


 そういうと、秘書は目をぱちぱちとしながら、顔を真っ赤に両手を差し出してきた。

 俺がぎゅっと握ると、


「ひ……っ!? あ、ああああ……うえ!?」


 秘書の女性はその場で白目を向いて倒れそうになり、武藤さんがその背中を支えた。


「……いや、ちょっと。さすがに目の前で気絶しないでくれ……ああ、もう」


 武藤さんは別のギルドメンバーを呼び、秘書を連れて行かせた。

 ……ええ。

 なんだあの人。

 新手のやばい人に遭遇してしまった俺は、できれば二度と会うことがないことを願っていると、武藤さんがこちらへ問いかけてきた。


「あまり視聴者を待たせても悪いからね。色々と話したいことはあるけど、それは配信を行いながらでいいかな?」

「ええ、大丈夫ですよ」


 そう答えてから、俺は武藤さんとともにカメラの前へと移動する。

 俺と武藤さんが映ったことでさらにコメント欄は盛り上がっていく。


「どうも、初めましてです。……凄いくらい視聴者いますね。これ、全部お兄さんのおかげですかね?」

「いや、まあどっちもじゃないですか? Sランク冒険者同士の戦いなんてそうみられるもんじゃないってコメント欄にもいくつも書かれてますし」


 俺がコメント欄を指さすと、武藤さんも納得したようにうなずいた。


「それじゃあまあ、軽く自己紹介でもしておきましょうか。一応、【雷豪】ギルドのリーダーを務めている、武藤大志です」

「俺は鈴田迅だ。お兄さんじゃないからな?」


〈本名初めて聞いたかもw〉

〈お兄さん頑張れよ!〉

〈お兄様応援してるぞ!〉

〈私は武藤さんのファンです! 頑張ってください!〉


 コメント欄にそういうのだが、やはりコメント欄に変化なし。

 俺はもう一生お兄さんと呼ばれていくんだろう……。


「よかった。私のファンもいるようですね。でもやはりお兄さんの視聴者多いですね」

「まあ、一応配信活動していますからね。武藤さんもやっていればこのくらい行きますよ」

「いやぁ……さすがに黒竜を一人で倒すとかはできませんからね」


 武藤さんはそういってちらとこちらを見てくる。





―――――――――――

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