第31話
すべて終えて一呼吸ついたところで、私はクラスへと戻った。
教室に到着すると、クラスメートたちの視線が私へと集まると、落胆される。
……どういうこと?
「凛音ー! お兄さん一緒に連れてきてないの!?」
それが、がっかりされた理由みたい。
まったくもう。
私をお兄さんとの引換券か何かと思っているようだ。
「……もう仕事は終わったからね。帰っちゃったよ」
「で、でも……私はお兄様に触れられて……ああ、幸せ……もう一生この手は洗わないわ……っ」
「真奈美ちゃん、汚いからやめて」
真奈美ちゃんは自分の手に頬ずりをしている。それは彼女だけではなく、他の人たちもだ。
私のクラスの人たち、大丈夫だろうか?
それから、先生が入ってきて、今日あったことについて各自しっかりと継続して訓練しましょう、という話だった。
……そう、お兄さんはあくまで成長するためのコツについて教えてくれただけ。
ここから能力を伸ばしていけるかどうかは、各自の努力に左右される。
私はそのことをすでに理解していたけど、まだ行動に移せていなかった。
……まだ、お兄さんに指導をしてもらってから、私は一度も水魔法を使ってないから。
ホームルームが終わると、笑顔とともに真奈美がこちらへとやってきた。
「ねえ、凛音。今日は一緒に迷宮潜らない?」
「……うん、大丈夫だよ」
普段以上にやる気にあふれた顔だ。これも、お兄さんの指導の影響かもしれない。
「よし決まり。それじゃあ、行くわよ」
クラスメートたちも、それぞれパーティーを組むなどして迷宮へと向かう準備を整えている。
これがこの学園の日常的な光景。
校庭に出ると、私たちと同じような人たちで溢れていた。
その光景は、校庭に出てからも同じだ。
迷宮の近くにいる人は多くいた。
「うわー、今日はなんかいつも以上に人多いわね」
真奈美ちゃんが苦笑を浮かべている。
……これだと、学園内の迷宮を利用するのは厳しそうだ。
「お兄さんの指導を受けたあとでモチベーションが高いのかもしれないわよね。あたしだって今日は戦いたい気分だし」
「もうすぐ中間試験もあるしね」
「あー、それもあったわね」
中間試験では、基本的な科目とは別に冒険者としての試験も行われる。
だから、試験前などは迷宮に潜る人も増えてくるものだ。
「まあ、確かに今日やる気出さなかったらいつやるんだって話よね。仕方ないし、学園外の迷宮にでも行きましょうか」
「うん……そうだね」
真奈美ちゃんがそういって学園の外へと歩き出したときだった。
……何か、強烈な違和感が肌に伝わり、私は思わず足を止める。
なんだろう……この、嫌な感じ。
「どうしたのよ?」
足を止めた私を不思議そうに真奈美ちゃんが見てくる。
「……真奈美ちゃん。なんだか、嫌な感じしない?」
「嫌な感じ? 特にしないけど……」
「……」
気のせい……? そう思ったときだった。
「うわあああああ!?」
悲鳴が、聞こえた。
それに反応して振り返ると、悲鳴の理由はすぐに理解できた。
「……っ! 迷宮爆発だ!」
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