第3話 かつての自分
俺の目標は高校で青春を謳歌することだ。そのためには何が必要だろうか。親ガチャ青春リベンジに向けての計画は万全にしておきたい。俺が前世で一番足りなかったものそれは。
やはりコミュ力だ。コミュニケーション能力がなければ恋愛はできない。
あとは、運動もしたい。スポーツ万能のイケメンになれば女子からちやほやされるに違いない。
ということで俺はサッカーと格闘技をすることにしたのだが、どうすれば上手くなるだろうか。
俺はインターネットを使って調べてみた。
サッカー上手い人の特徴 サッカーが上手い人の共通点は、足が速いこと、キック力があること、ドリブルができること、パスが出せること、シュートを打てることだ。
足の速さは遺伝もあるのだろうか。母親もかなり足が速かったと言っていた気がする。
キック力は鍛えれば付くはずだ。サッカーはボールを蹴る競技だからな。
ドリブルは小さいころからボールに慣れておくことが大切だ。
俺は早めに眠りについた。
「この出来損ないが。」
俺の親が怒鳴りつけてくる。また別の声が聞こえる。
「90点?残り10点はどうしたの?」
母親だ。もうやめてくれ。そんなの聞きたくないっ……。
「お前は勉強しか能がないんだから」
最後は中学のクラスメイトだ。
「このぼっちが死ねよ。」
俺は悪夢で目が覚めた。最悪な夢を見たな。もうあんな親も糞みたいなクラスメイトもいないっていうのに。
どうして、こんな夢を見るのだろう。背中にはびっしょりと汗をかいていた。
翌日俺は母親と近所のキックボクシングジムを見学に行った。
「こんにちはー」
元気よく挨拶をした母親は早速体験を申し込むようだ。
「あら、可愛い坊ちゃんですね」
インストラクターのお姉さんが話しかけてきた。
「この子、今度キックボクシングを始めるんです」
「そうなんだ、頑張ってね」
高校生くらいのお姉さんが笑顔を向けてくれる。シャツを肩までたくし上げ、キックボクシングの用具をタオルで消毒している。スタイル抜群ですごく美人だ。チー牛の俺だったら話しかけるのも出来なかったろう。中学生のイケメンの俺にお姉さんのガードもゆるくなる。
こういうチャンスもコミュ力を上げるにはいいかもしれん。
「はい」
「じゃあまずは準備体操からだね」
そう言うとお姉さんはマットを用意してくれた。
「はい、押してあげるから、前にきて」
俺は言われた通り前に行き腰に手を当ててもらう。
「よいっしょ」
ぐいっと前に押され体が伸びた。
「痛ててて」
「ごめんなさい、強かった?」
「大丈夫です」
「はい、終わり。柔軟は大事だよ」
「わかりました」
「まずは、パンチからしようか」
今思ったのだがこの綺麗な女の子はコーチなのか??
「先生、格闘技経験は?」
「私は中学のときボクシングやってたの。今も時々練習してるわ」
なに、この美女ボクサーは、そんな経歴があったのか。これは期待できそうだ。
「グローブつけてみようか。」
俺は初めてつける黒い革製のグローブを手にはめてみた。結構重い。
「おお、かっこいいな」
「うん似合ってる。かっこいいよ」
なんか、この美人コーチ褒めるのも上手いな。これはやる気が出て捗りそうだ。
「よし、次はキックだ」
「はい」
キックミットにローキックを入れる。ドゴッという音がして足に衝撃が走った。
「うわっ」
「すごい音したけど、大丈夫?」
「はい」
「もっと強く打っていいからね」
俺は言われるがままにキックを繰り出した。
「せいっ」
「はい、オッケー」
「次はサンドバッグを打ってみようか」
「はい」
俺はサンドバッグの前に立つ。
「いい、私が合図したら打つんだよ」
「はい」
「ワン、ツー」
ドンッ
「もう一回」
「はいっ」
「ワンツー」
ドンッドンッドンッ「はい、おしまい」
「えっもうですか」
「まだ、始めたばかりだし今日はこれくらいにしとこう」
「ありがとうございます」
「また、来週も来るよね」
「はい、お願いします」
俺は家に帰って考えた。いじめられないため、身を守るためキックボクシングをに身に着けることは大事だ。寝技に関しても何処かで習おうと思っている。
あんな美人なトレーナーなんて幸運だ。しかも体は子供なので気軽に警戒させずに話しかけられる。
「格闘技は毎週2回程度行けば十分だろう。」
あまり習い事や塾に能力を振りすぎてもコミュ能力の伸びに影響を及ぼすから友達との時間も大事にしていこう。
まずはサッカー部で仲間を中心に交友関係を広げていこう。
明日は学校だ。俺はまだ自分のすでに持っている交友関係を把握していない。まずはそこからだな。
翌日登校すると「おはよう」
「あっ、翔くん、おはよー」
昨日俺に加藤が元気よく挨拶してくれた。
「加藤、なんかテンション高いな」
「だって、憧れの先輩と付き合えるかもしれないから。」
「そういえば、お前が好きな先輩って誰なんだ」
「うちの学校の三年生で、サッカー上手ですごくイケメンで優しい人だよ」
「へー、そんな人いるんだ」
「そう、だから、うちの学年でも噂になってるよ」
「その人の名前は」
「田中勇太さん」
その名前を聞いた瞬間俺は愕然とした。なんと俺の幼馴染の名前だったのだ。
「そうか、あいつはイケメンでサッカーも上手いし、性格もいいもんな」
「そう、だから、私も好きになったの」
加藤はサッカー部の上級生で女子からの人気も高い。最近の小学生の女の子は、ませてるな。俺が小学生の時は付き合ってる子いたかなあ。あまり聞かなかった気がする。
クラスでも半分の女の子は彼氏がいるし、よくデートしている。俺も試しにデートしてみるのもいいかもしれない。
「お前、ホントクズだな。」
俺はビクッとして声の方を向いた。
「デブだし、根暗だしうぜえんだよ。」
そこには不良のいじめっ子に囲まれた。いじめられっ子がいた。
それを見て自分の姿を思い出さずにはいられなかった。
「いじめってダサいね」
「あっああ」
加藤も何もできない、これは酷いことだろうか、いや俺は知っている。これが世界なのだ。
誰かが生贄になることで自分は安心でいられる。仮に彼を助けたところで問題は解決するだろうか。
いやしないだろう。彼自身が強くならなければいけない。
格闘技をするでもコミュ力を上げるでも
いじめられっ子は大人になってもいじめられっ子のままであることが多い。
昔の自分を見ているようで気が重い。だが、わざわざ助けてクラスでのカーストを下げようとは思わない。
何のメリットもないからだ。だけど……あの時の自分を見ているようでいたたまれない。
無視しようと思っても胸がギッっと締め付けられる。せめて…少しだけの手助けでも……。
俺はクラスルームの後いじめられっ子の原田に近づいた。
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