風光の祭


「あと一回だけ止まる。その時にもう一回頼む」


「分かりました」


「たまにはペノも手伝えよ」


「ボクは頑張って応援してるよ?」


「っち、ムカつくウサギだぜ」



ブラムが舌打ちする。

もちろん、ペノが動じることはなかった。

むしろのこうなることを期待していて、この状況を楽しんでいる。

手伝うことで愉快な時間が短くなれば、ペノとしては本末転倒なのだ。



「もうすぐ追いつかれそうだね! どうせ一回休むなら、もう一度ライラが大暴れしてみたら?」



ペノがクアンロウたちを見ながら笑った。

ライラとブラムは苛立ったが、ペノに同意した。



「ライラ。光る魔法道具は、もういらねえ」


「どうして?」


「二回目は慣れちまってるに決まってらあ。その代わりに風の魔法道具を乱発しろ」


「ブラムが滅茶苦茶に吹き飛ばされちゃいますよ??」


「なんとかする。それで距離が取れたら、もう一度治療してくれ。いいな?」


「や、やってみます」



ライラは頷き、息を飲む。

ライラの返事を受け、ブラムが再び速度を緩めた。

翻り、迫りくるクアンロウを見据える。


ライラはすぐさま、風の魔法道具を構えた。

力を込め、魔法を発動させる。



「撃ちます」


「おう」



ブラムが応えた瞬間。

道具の先端から青白い光が生まれ、弾けた。


クアンロウに向けて、風の塊が三つ。唸りながら飛んでいく。

一発目が、二匹のクアンロウを吹き飛ばした。


つづけて二発目と三発目。

クアンロウが避けた。

予測していたのか。避けられるようになったのか。

ライラを睨み、奇声を発しながら飛び掛かってくる。


迫りくるクアンロウの鋭い爪。

ライラは恐ろしくなって目を細めた。

しかしその爪がライラたちに届くことはなかった。

魔法の反動で、ブラムが三度、吹き飛ばされたからだ。



「うおおおおおおお!!」



森の中で吹き飛ばされるブラムが、雄叫びを上げた。

後ろ向きになって吹き飛ばされているのに、器用に木々の間をすり抜けていく。

時折、すれ違う木を蹴り飛ばしていた。

吹き飛ばされる方向を変えているらしい。



「どうやって避けてるの??」


「うるせえ!! 気が散るだろうが!!」



ブラムが凄まじい形相で怒鳴った。

どうやら魔法の力で感覚を研ぎ澄ませているらしい。



「もっと風を撃て!」


「木にぶつかって、私をぺちゃんこにしないでくださいよ?」


「さっさとやれ!!」



ブラムが再び怒鳴った。

この鬼のような形相。村の人には見せられないなとライラは苦笑いした。

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