第121話 現代人は別大陸を確認したい

鳥害が終了し、街の至る所で鳥肉料理が出るようになった頃。自分達も鳥肉料理を食べながら、別大陸を探すために世界地図を作成中。鳥肉は塩漬けジャーキーみたいな加工をして食べているけど相変わらず美味い。


「主様の世界の知識と照らし合わせると……この大陸は惑星全体の1/8もないのじゃ」

「あれこれ今宇宙空間と繋がってる?絶対鏡を開けるなよ?」

「分かっているのじゃ。というか向こう側から引っ張る力が強すぎて数分も保たないのじゃ。毎回仕舞う必要があるのじゃ」


キューの照魔境の映し先をひたすら上へ上へとすると、無事宇宙空間からこの星を見ることが出来たけど地球に似た緑の多い惑星だ。そしてたぶんこの大陸は、南半球にあるけど詳しくは分からないな。星全体は流石に見れない。


恐らく地球で例えるとオーストラリア大陸ぐらいのサイズ感。……アリエルの街と、マウリス教国と、南の蛮族エリアで大して気候が変動してなかったからこの惑星が大きいのかなというのは察せたはずだったわ。


というか南の方が若干寒かった気もするし南半球に位置していることぐらいは察せたはずだった。偏西風って南半球にも確かあったし……地球が元になってる、ちょっと地形が変わった惑星ぐらいの差。


今いる大陸の形も分かったけど上側に小さな四角、下側に大きな四角がある感じの見覚えのない形をしている大陸だ。小さな四角が今まで北方地域と呼んでいた地域だね。南側は、中央で区切って上がフェルミン共和国、マウリス教国、スターリン。下が蛮族領域って感じ。


「別大陸は照魔境で視認出来ずってことは海岸線から2000㎞は離れているか」

「あの渡り鳥達は随分な距離を飛んでいるのじゃ」

「渡り鳥がどのぐらい飛べるのかの知識は持ってないなあ……」

「記憶を掘り返しましょうか?」

「それはやめて」


自分が一度見た知識について、アメシストに頼めば思い出せるようになったけど口から触手突っ込まれるのは嫌です。……アメシストによると、人間は基本見たものは全ての事を記憶しているそうだけどそれが色んな要因で思い出せなくなっているらしい。まあ世の中には完全記憶が出来る人もいるし、人間の脳を弄り回せるアメシストが言うなら説得力あるわ。


別大陸を確認する方法として、ルーやローが短距離テレポートを繰り返しながら別大陸まで飛んで行くというのも手だけど負担が大きそうだし途中で魔力切れたら怖いな。あ、そろそろ浮遊城が完成するからそれで行けば良いのか。


「というわけで浮遊城が完成したらちょっと別大陸行って来るんだけど何か情報ない?」

「正直この大陸で手一杯だったのに別大陸のことまでは考えてなかったな。というかヨーロッパの位置じゃなくてオーストラリアの位置だったのか」


スターリンにいるレーニンさんにキューの照魔境を通じて話をするけど向こうも別大陸の意識はあまりしてなかったらしい。でも蒸気船っぽい船を作って海軍も増強していた辺り、植民地帝国を築く気満々だったよねこいつ等。


……そして向こう側でもエワル国が暴れ始めたという情報は察知されていたのでその辺を突っ込んで聞かれるけど、その内スターリンにまで税無し無政府の概念が伝搬するだろうからその時がちょっと楽しみではある。


「そう言えば前にアマゾネス族の村を略奪した際、アマゾネス族に捕まっていた男の中に転移者が居たから回収と保護をしている。原作知識がありそうなのだが精神が回復していない上に薬漬けだったから喋れない」

「何されていたのかは大体想像付くけど……とりあえずこっち持って来たらそいつ回復出来ると思うから連れて来て。あ、いや、キューの照魔境で回収するわ」


原作については、ヒトラーさんとレーニンさんとは何か新しい知識が得られたら互いに共有することになっている。その協定のお蔭でアマゾネス族に精神を破壊された転移者の存在を教えてもらったので、キューの照魔境で回収をすることに。……いや本当に照魔境が万能だな。空間を繋げる魔法だから万能なのは当然なんだけど。


キューの手によって回収されたのは、中学生っぽい子供。なお常にビクンビクンしていて虚ろな眼をしている模様。「あうあう」としか喋れないとか薬漬けのせいで精神崩壊してますわ。……というか常時勃起しているあそこがやたらと大きいのがもう何か怖いわ。


たぶんアマゾネス族に子種役として囚われていた感じかな。一応若くて、しかも可愛らしい顔だから男の娘として現代日本でも人気出そうなルックス。ちょっとイラっとするけど今の状況があまりにも哀れなので嫉妬も出来ない。


自分達も全部の村を見て回ったわけじゃないから見逃したんだろうな。こういう転移者がいるとは思ってなかったし。でもよく考えたら蛮族領域に転移する可能性というのも十分あり得る話で、自分はそうならなくて本当に良かった。


アマゾネス族の男とか文字や言葉すら教えられていない家畜以下の扱いだったし、捕らえられたこの男がどういう扱いをされていたのかは大体察せる。とりあえず天使の涙で回復させようか。精神まで元に戻る万能薬だからたぶん治せるでしょ。

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