第120話 現代人は別大陸を警戒する
唐突に冒険者ギルドのマスターが冒険者の緊急招集を始めたので、一応自分も冒険者としてその場を覗く。そろそろ旧リトネコ王国の首都近辺に引き籠るシュヴァリエに引導を渡すのかなと思ったら、どうやらシュヴァリエの方で鳥害が発生したらしい。
鳥害って言葉は初めて聞いたが、ようするに鳥が色々と悪さしているということだろう。どこから鳥が来たのかと冒険者ギルドのマスターに直接聞いたら一言「西」とだけ。
……旧リトネコ王国の西は海であり、近くに島などもほとんどない地域だ。つまり、鳥達は別の大陸から飛んでやって来たのかな。ということはこの世界にも恐らく自転による偏西風みたいなのはあって、それに乗って大量の渡り鳥達がやって来たと。
穀物等を食い尽くしていく上、雑食で人も食べるそうなので蝗害の完全上位互換バージョンである。鳥が迷惑な行為をしてるってレベルじゃないな。というかそれがシュヴァリエを襲ったとかシュヴァリエは国力的に耐えられないだろう。被害者の数も相当多いようで、非常に苦しいはず。
ただ蝗害と違って襲って来るのは鳥のため、肉の量は少ないがその味はとても美味しいようだ。食えるという点は結構大きい。まあ人類にとっては食うか食われるかの戦いだな。
ちなみにダンジョンで出て来る魔物で例えると、5階層ぐらいの強さなので大半の冒険者なら勝てる。一般人だとちょっと厳しい。自分はまあ、深層装備のお蔭で1人でも退治は出来るかな。自分の直接的な出番はないだろうけど。
魔物ではないので魔臓はない。というか魔物か魔物じゃないかの区別は魔臓という魔力を生み出す器官があるかないかの違いだけで、今回の鳥害に関しては相手に魔臓がないからただの鳥である。魔力もないので魔法も使えない。ただ鋭い爪を持っており一般人にとっては普通に危険な相手。
まあ味が美味しいなら参加しようかな。鶏肉は好きだし鳥肉も好き。昔にカラスの肉とかも食べたことあるけど美味しかった気がする。
あ、別大陸から渡り鳥がやって来るということはこの世界には別の大陸もあるということで……そっちの情報も集められるなら集めた方が良いか。もしかしたら向こうの大陸では蒸気船が既に開発されてたりする可能性もあるし。逆に石器時代をやってる可能性もまあまあある。
鳥を見て、どれぐらいの距離を飛べる鳥なのか推察することは難しいし素直に船出すかキューの照魔境の範囲が別大陸までカバーするようになるのを待つか。……後者の方が良さそうかな。キューのレベリングを頑張るというか、普通にダンジョンを潜っていけばいつか届くようになるだろうし。
というか別大陸の存在は意識してなかったな。複数のゲームが混ざっている可能性を考えると、例えばスチームパンクの世界観を混ぜるなら別大陸への配置になるだろう。……別大陸の方が技術進んでました展開はあまり考えたくないな。可能性としては結構高いのが嫌になる。
とりあえず、今は鳥害への対策か。向こうも長時間飛行してたぶんお腹が減っているのだろう。街の外に集まった冒険者達に向かって急降下してくる。結構こいつ等怖いな!?
そして自分達が退治する分に攻撃するのはキューとスーだけである。キューが照魔境でロックし、スーが光線を放つだけで天から光線が降り注ぐのでドンドン鳥が死んでいく。
互いに「L(ロック)」「A(アタック)」とだけ言い合って、連携取ってるから流れ作業みたいな感じで天から光線が降り注ぐな。近場に落ちた鳥はアルが植物の蔦で回収し、遠くに落ちたのはテレポートでルーとローで回収。ぶっちゃけガチで回収しなくても、魔物達や他の冒険者達がいるからルーやローが働かなくても良い。
ムーが魅了でおびき寄せたり、ハルが上空で風の流れを操ってアリエルの街から見て北の穀倉地帯へ行こうとする鳥達を大量に自分達の所へ誘導しているから、たぶんアリエルの街より東で被害は出ないだろうな。
アリエルの街から西ではこの勢いだとかなり被害出てそうだけど、アリエルの街から見て北西部の旧リトネコ王国王都近郊は半分以上シュヴァリエ所属だし別に良いや。
「ちょっと味見してみたいんだけど良い?」
「承知いたしました。ちょっと一匹捕まえますね」
マトンに味見したいと言うと、すぐに腕を伸ばして素手で上空にいる鳥を捕まえたけど生きたまま調理するつもりはない。……要望言ったら一瞬で用意して貰えるの、凄く恵まれているよな。
……あの冒険者ギルドのマスターから美味しいと言われると、ちょっと味の方が気になるので早速アメシストに解体して貰うともう普通の鶏肉である。その後は塩をかけて焼いただけだけど、めっちゃ美味い。
脂は全然ない感じで、溶けるような肉というよりかはほぐれるような肉質だな。それでいて旨味が強いから多少血のクセがあっても美味しいわ。
「お前……こういう時でもアメシストに先に食べさせるんだな」
「自分にとって毒かもしれない可能性があるんだからそりゃ毒見はさせますよ。アメシストかスーが食べて大丈夫って判断してから口に運ぶようにはしてます」
この味見の時に、焼きあがった鳥肉をアメシストに先に食べさせている光景を見て冒険者ギルドのマスターが突っ込んで来たけど、今自分が一番死ぬ可能性高いのは毒なんだから警戒はする。
自分が死んだら色々と不味いことも理解しているから、毎食必ずスーかアメシストが先に食べてるし、自分で出来る自己防衛は極力する。今までなかったからといって、これからも無いとは限らないし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます