第113話 現代人はスキルチェックをする

キューの照魔境に関しては色々と便利になったし考えることが増えたけど、問題はキュー以外の能力がどこまで育っているか、よく分からないことだ。


……いやまあ大体の威力とか防御力とか速度は把握しているんだけど、特殊な能力については曖昧な部分が多い。ムーとか視線が合うだけで洗脳出来るということは把握しているけど、それ以外を細かく見たことはない。


というわけで魔物達に対して能力を新しく獲得しているか確認させたけど、とりあえずムーの声を聴くだけで男女問わず絶頂するの怖い。巨大なオーガが、一瞬触れただけで枯れ果てるの怖い。


あと「何か出来るようになってた!」とルーが言って、ローも使えることに気付いたけどこの2人はテレポートを使えるようになっていた。距離無制限のテレポートって強すぎないか。いやまあ2人ともフェアリーだしテレポートみたいなこと出来るのは納得ではあるんだけど。おとぎ話の妖精って急に消えたりするし。


アルラウネのアルに関しては光属性魔法を受けると回復することが判明。……いやそもそもアルの位置が中列で、敵の攻撃を押し込めていたから実戦ではほとんど攻撃を食らわない位置だったし判明してなかったのは仕方ないけど、一属性でも『吸収』があるのはかなり強い。


何が強いってこれで光属性ダメージ2倍という超デメリット付きの強い深層装備をデメリット皆無で装備出来るということだよ。というかフェニックスのハルも火属性魔法で回復するようになってた。この2人に関しては耐性が高くなったとは把握していたけど、回復するとまでは考えてなかった。


スーはいつその耐性を得たのかすら謎だが、状態異常にならないっぽい。あとナージャはいつの間にか運を操れるようになっていたらしいけど……サイコロで6を10連続で出せるレベルで運を操れるって何?


マトンはマトンへの進化時に色々と検証はしていたが、追加で伸縮と分離を複数回出来るようになっていた。ロケットパンチを出してそのまま腕が分離しながら伸びて拘束するみたいな芸当も出来るようになったということだし、加速魔法をどうやら自身単体とパーティー全体の2種類を使えるようになったみたいなので戦闘面での強化は多い。


最後にアメシストだけど、人に寄生することが出来るようになっていた。……いや違う。自身を食べさせると、意識を乗っ取ることが出来るようになっていた。怖すぎないかそれ?というか自分乗っ取られてない?いろいろな小道具に変身できるということは、食べ物にも変身できるということで、乗っ取れるチャンスは非常に多い。


「……乗っ取ってないよね?」

「私がご主人様を乗っ取っていたらもう既に私と○○○や○○○○をやって私の虜になっています」


ちなみに乗っ取るテストは例の人肉供給マシンの中に入ってる人で実施。テスト後の震えは尋常じゃなかった。まあ自分ですら怖いからそうなるのは当然である。やろうと思えば街全部乗っ取れるんじゃないかな。もうこの能力1つで世界征服可能なレベルだ。


そして自分が『もうこれ以上知りたくない状態』に陥ったので能力把握を打ち切り、装備の最適化が終わった結果、501階の巨大な俊足オーガ達が蹂躙されていた。……レベルアップもしてないのに戦力2倍になった気分。特に前衛2人が短距離テレポートを連続使用し始めたのでえげつない動きになっている。


というかやっぱり速度は正義だな。マトンが加速魔法を2種使えるようになり、それらが重複した結果、敵魔物も早くなっているけどそれ以上にマトンの速度が異常という状態。


……そして自分は特に何も出来ることが増えていないことも再確認した。パーティーにいるだけでレベルは上がってるけど、たぶんMPしか増えていない。MPが増えるだけマシ、と考えるようにしないと結構悲しい。


「……魔物の能力報告って冒険者の義務ですよね」

「……ああ。万が一使役者が死亡、または裏切られた場合、使役していた魔物を抑えるのに必須だからな」

「聞いただけで絶望しないことを誓ってもらえませんか?」

「いや、大丈夫だ。既に絶望している。そもそもお前の魔物達が60階を突破した時点で抑えるのは諦めてる」


テイマーは、ギルドに魔物を登録しておくルールがある。その時にどういった戦い方をするのか、どういう能力があるのかを把握している場合、報告する義務もある。


理由は使役者死亡で魔物達が暴れ出した場合や、魔物達が脱走した場合に抑えるため。だけどもう自分も冒険者ギルドのマスターもそうなった場合は共通認識として『世界は滅亡する』だし一々報告する必要性があるのかは疑問。まあ他のテイマーの参考にはなるか。


「……アメシストって水にもなれるよな?」

「元がスライムなので当然です。スーも水にはなれますよ」

「つまり、井戸に入ればこの街をほぼ一瞬で乗っ取れると」

「もう既に自分の街なのに乗っ取る必要あります?」


やろうと思えば街1つ乗っ取るのも出来るけど、乗っ取ったところで次にやることがない。ただ自分は気を付けた方が良い。そういうことを出来る存在が、この世界には発生する可能性があるということだし。

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