第107話 現代人はレベルアップが好き
「トーヤさん!なんとか10階を突破しました!」
「……わりと早いね?おめでとう」
「冒険者ランクもDに上がりましたし、お金にも余裕が出て来たのでいずれ15万円は返しますね」
「いや、マジでその15万は自分にとってはした金だから返さなくて良いよ。あと15階を突破するか素材を売りまくっていたらその内Cランクに上がると思うんだけど、Cランク以上だと戦争が起きた時に強制徴発されるからギルドのマスターに相談するか15階の突破の報告を後回しにするか考えておいた方が良いぞ」
「え、戦争ですか。そんなに頻繁にあるんですか?」
「……もう既にシュヴァリエとリャン帝国は一触即発状態だ」
ササラさんがダンジョンに挑み始めて2ヵ月。無事に10階を突破し、一般的な冒険者レベルの稼ぎと強さを得た。たぶんこれペース的には自分とそう変わらないんだけど、自分の時とは違って滅茶苦茶苦戦したようで魔物が一匹お亡くなりになっている。
自分との最大の違いは、まだテイマー本人が戦闘に参加している点。この子、剣持って戦えるタイプの子だったよ。美少女なのにゲーマーだったことと言い、本当に現代人が怪しくなってくるけど自身がレベルアップして強くなっていくのは楽しいことらしい。
……そしてゲーマーらしく、テイムした魔物について囮特攻をさせている。自分よりも外道というか、心無い人がいるとは思わなかった。具体的には最初に買ったフェアリー以外、わりとポンポン死なせている。
そして実はこれ、滅茶苦茶効率良いんだよね。安い魔物って2000円程度で買えるし、そんな魔物でも自爆特攻をすれば、強い魔物でも一瞬の気を引くぐらいは出来る。本人が強くなりやすいから、力関係で従いやすい魔物が裏切りし辛い等、メリットは多い。
何よりゴブリンとかを低層でテイムして、より下層のオークとかに躊躇なく特攻させる芸当は自分には出来ないことだろう。恐らく支配下の枠が自分の時よりも多いし、才能があるんだろうな。そもそも自分の場合テイムが中々成功しないし……テイムが成功しやすいということは、恐らく魅了値自体がこの子は高いんだと思う。
「トーヤさんって今何階まで潜っているんですか?」
「340階」
「……えっ?」
まあ自分は絶対しない戦法だなと思いつつ、ササラさんの質問に回答する。この2ヵ月間、自分の方は一週間当たり20階層分を突破するペースでダンジョンを攻略している。大体5日かけて20階層分を攻略して脱出、2日間の休日を挟んでまた20階層分を攻略のサイクル。
かなりサクサク攻略出来ているのは、敵が強くなっていく以上にこちらが強くなっていくからだろうね。というか、入手できる深層装備が強い。どんどん種類が増えて行くし、2つどころか3つぐらい二つ名を持っている深層装備も出て来たので装備パズルが捗る。
このお蔭で、レベリングを意識してなくても勝手にレベルがどんどん上がっているんだよね。恐らく適性レベルより下の状態で、でも装備が強いお蔭で攻略している状況。装備の役割が大き過ぎる。
何というか、無限にレベリングが出来る点と合わせて調整不足感が否めない。ぶっちゃけバランスとしては装備が強化されて行くだけでもこちら側が有利なのに、無限レベリング&進化のせいで基礎ステまで上がり続けるから若干ゲーム性が欠如している。
「何階まであるかとか分かります……?」
「元々は100階までだったけど、100階を突破した時に女神が出て来たから願ったら10000階まで増えたよ」
「女神……あ、ということは日本に帰れるんですか!?」
「さあ?」
元の世界に帰れるかは微妙な感じだったけど、この子は帰りたいのかな。ササラさんもステータスが見れて、唯一ステータスとして分かるのはHPだけだった。
相手ととてつもない力の差がある場合は見れないそうなので、キューやスーのHPが見れない時はビビっていたけど……そう言えば自分も女神のステータスを見ようとした時にレベルとかMPとか見れなかったな。
……HPが詳細に見れるということは、MPが見れる自分よりも選択肢は多いだろう。敵の残りHPが分かるとか自分以上にチートな気がするわ。撤退の判断とかもしやすいだろうし、だからこそ10階までのペースは自分と同じだった。
これから先も、本人が戦う戦闘スタイルを貫くならダンジョンは順調に攻略していけると思うけど、適当にテイムした魔物を特攻させる姿が魔物達にどう映るかは分からない。まあでも一番効率的そうではあるんだよな。本人がトドメを刺しやすいだろうし、レベリングも捗るだろう。
「ところで今日トーヤさんの隣にいる人ってどなたですか?」
「ローです。お兄さんの妹です」
「……フェアリーが進化していったらこうなるから頑張れ」
「……お兄さん呼び……うわぁ……」
本日の護衛役がローだったのでローを紹介するけどお兄さん呼びのところにドン引きされた。いやこれ強制しているわけじゃないし、最初はローとルーの声質が似ているから区別しやすいよう、自発的にやってるから趣味ではない。
いつの間にか妹も自称し始めたけど当然血縁関係はない。でもそろそろ現実改変能力とか使いそうな存在だから本当に妹になりそうなのはちょっと怖い。
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