第86話 現代人は他人の不幸が他人事

久々に領地に帰って、門の前でキャンプをしている人の数にちょっとビビり、領内の環境を変えないために1日に1人だけ入れてあげるよと言ったら暴動が起きた。あとついでにその入れる1人は毎日村人に惨殺されるか、子供を産める女なら奴隷にされるかの悲惨な末路しか迎えない状況になった。


まあ元々は無法地帯だし、村人達同士に関しては規律が出来て、村内のルールや村同士のルールも構築されつつあるようなので領内は比較的穏やかになるんじゃないかな。その内、外から来た人間が殺されて魔物の食糧になったり奴隷になるというのは噂で流れそう。別にそれで困らないからそれで良いけど。紛れもない事実だし。


「スターリンまで行って帰って来るのに一月かかってない上にアマゾネス族の村やエルフ族の村までよく観光出来たな……?」

「空路と陸路を比べたらダメでしょ。陸路だと結構迂回しないと行けなさそうなところも、空路だと直線で行けるし。空を飛べるならぶっちゃけそこまで遠くもないよ」

「ワイバーンでも結構時間はかかるんだがな……」


久々にアリエルの街の冒険者ギルドのマスターと会ったけど相変わらずこの窓口だけ人が来ない。他の受付嬢は大体美人さんだけど……おっさんが対応しても結果は変わらんだろ。あ、そうだ。天使の涙を恒常的に販売するなら幾らになるか聞いておこう。もうマウリス教国の教皇には5回分売ってるし。


「……飛行石10個は価値として高いが5億もあれば買えるだろ?1回目のオークションで800億の値が付いた天使の涙と同程度の価値ではないんだが」

「でも流通量が増えたら下落するでしょ。最終的には1億ぐらいの価値観になると思うけど」

「どうやって量産してるんだ?」

「……洗脳してひたすら泣かせているだけだけど?」


飛行石10個と天使の涙1回分の取引は、圧倒的にこちらが損だと何故か怒られたけど飛行石60個はマウリス教国が手放せるギリギリの数だったみたいだしそのギリギリの数を手放させたことに価値があるから別に良いんじゃないかな。どうせこっから先は天使の涙の価値が下がり続けるだろうし。


魔物達も久々に戦闘をしたがっていたので、アリエルの街にあるダンジョンに入り、フェンリルのいる109階で犬っころを殺戮して回る。アリエルの街のダンジョンは久しぶりだけど、旅先でもちょくちょくダンジョンには潜っていたから、腕はなまっているどころか楽に狩れているし、そろそろキューに続くSSランクへの進化ラッシュも始まりそう。


ついでにショゴス作りを再開したところで、ふと気づく。この作者はクトゥルフ神話を知っているんだなって。シュヴァリエと花騎士でも、異世界ギルドストーリー2の話でも、クトゥルフ神話の話は出ていなかったことを考えると確実にもう1作は混ざってるな。


まあ創作活動をしてたら一回ぐらいはクトゥルフ神話に触れるだろうし、かなり昔からゲームを作っていたところから考えるとクトゥルフ神話TRPGとかに嵌っていた世代ではなかろうか。


今のところはショゴスだけで、他のクトゥルフ神話生物は出て来ないのが不思議という感じ。ミ=ゴやらイゴーロナクやら、それこそクトゥルフ本体が出て来てもおかしくはないのが怖いな。


この世界に転移者が多い理由について、もしもこの世界にニャルラトホテプがいるならたぶんそいつが犯人。……アザトースとか出て来たら諦めるしかないけど、ニャルラトホテプなら勝てないだろうか?いやでもうちの魔物達とクトゥルフ神話生物達で大戦争って未来になると、自分が生き残れる気は全くしない。


「……装備更新した甲斐はあったな。フェンリルの群れでその魔力の壁を突破出来ないか」

「うん!もっと下の階層でも通す気はないよ!」


オークションで色々と買ったが、その後に装備を入れ替えルーは壁役に徹することになった。一応水属性魔法での攻撃も出来るけど、基本的には魔力の壁を作って相手側の攻撃をシャットアウトするのと同時に、こちら側の攻撃は通す役割。


そしてこちら側の攻撃は、ハルやムーの中列が矢や魔法で攻撃しているけど火力と速度が上がっているのでフェンリルが丸焼きになっている。……もう何か焼けた肉の匂いで美味しそうとか思ってしまう辺りかなりこの世界に染まったなあ。


「神に選ばれし星砕く腕輪、ですね」

「ステータスは?」

「攻撃と速度にプラスが5個。もう1つの速度もプラスが5個。防御と魔力に3個。スキルに速度1.1倍、攻撃力1.1倍、全ステータス30%アップです」

「……速度1.1倍と攻撃力1.1倍はよく被るからいらないけど、全ステータス30%って何?各ステータスの30%と重複するならぶっ壊れ確定。そうじゃなくてもぶっ壊れ装備か」


ローが拾った深層装備について、とうとう二つ名も中二度が増して神に選ばれしとかついているけど中々にえげつない性能をしている。こういう装備がこれから先もっと増えて来るならオークションに参加した意味は少なくなったな。


現状、120階ぐらいまでならノーダメージで行けそうだけどレベリングは欠かさずに、ある程度戦闘してから下に行くことを繰り返そう。10000階まであるらしいけど、まあ気長に進むか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る