第84話 現代人は質を求める

今回のオークションで、武器防具は基本的に二つ名のある深層装備だ。深層装備イコール二つ名がある装備ということだけど、ダンジョンの最下層付近でしか出ないから基本的には貴重品。


そんな貴重品が、今回は出品が多いと聞いたから参加したのに、大体が自分の売り捌いた深層装備だった時の心境は凄く複雑である。既に上位互換があるために売った装備達だから、買い戻す価値も薄い。


それでも時々は自分達が売ってない、持ってない二つ名があるから買うけどね。でも大半が自分で売った奴だし数倍の値段で買い戻す気なんて起きない。こりゃ参加しなくても良かったかな。


とか思ったところで『風を制するアダマントの王冠』が出たので買いに行く。ミスリルの次がアダマント装備になるわけだけど、自分達でも現役の装備は多い上に風属性の消費魔力が半減であろう二つ名がついているならそりゃ買いに行く。


張り合う人も多かったので「5億!」「10億!」「15億!」と3回叫んで落札。やっぱり軍資金多いと楽だわ。改めて見ると結構綺麗な冠で、渡される予定のハルはご機嫌である。


それ以外も指輪やら帽子やらを買ってある程度は装備の更新が出来たかな。同じ数値のステータスだと重複装備の意味がなくなるから、違う二つ名の方が重要になってくるしミスリルだろうがメタルだろうがアイアンだろうが深層装備なら買いたくなるのは多い。


オークションが終わったら、例のエルフの第三公女と目隠れ王子ことライトの逢引をキューの照魔境で覗く。


……奴隷を買った初日に男女の営みをしないのはライトさん結構我慢強いね。ケイトは手を出していたところを見るに、そこで一歩踏みとどまれるのは流石主人公。


というか今までエルフ族には苦戦していたから第一聖女を置いていたのに、今になってエルフ族で結構な地位にいる人を奴隷に出来た理由って、どう考えても例の第三聖女の眼を開眼させたからだよなあ。間違いなく原作ブレイクしてるわ。もう気にしてないけど。


恐らく人類基準だとあの第三聖女は化け物レベルだろう。盲目というハンデがあったから何とかインフレを抑えられていたのに解き放ってしまった感あるな。……ヒトラーさんよりも強いだろうしスターリン軍は頑張れ。大砲と銃で何とか出来なさそうな敵だけど頑張れ。


「あのエルフって強い?」


何となくあのエルフの第三公女について、強さが気になったので魔物達に聞いてみたらルーは素直に「弱いよ?」と答え、ローは「お兄さんよりは強いです」と当たり前の事を言う。


「サキュバスとしての直感だけど、たぶん魅了や洗脳への抵抗は強いかな?」

「……何か変な水晶みたいなものを持っているのは視えたのじゃ。禍々しいのじゃ」

「キューが禍々しいって言うことはもう特級厄物だろ……」


あのエルフの後ろ姿を見て、何かストーリーが勝手に進行しそうだと思いながらオークション会場を後にする。何だかんだで30億ぐらい使ったけど懐的には痛くも痒くもない。


さて。自分は自分で飛行石を多く買えたので空飛ぶ城を作って行こうか。浮遊城というか、空飛ぶ城ってやっぱり憧れるよね。まあ飛行石の数的に城サイズは無理なんだけど。


というか家サイズも怪しいので結局馬車の荷台部分を飛べるように改造するぐらいだな。魔力を込めると浮くというか、一定方向へ進むという感じなので上昇に16個、左右前後に4個の設置をすれば一応自由自在に動かせるかな。


「……上空から降ろすのって自由落下と緩い上昇を繰り返すのか。結構怖いな」

「これ普通にハルか私が飛んだ方が良いと思う」

「速度も微妙だし飛行石があと30個は欲しい。

……どこの国が一番持ってるかなこれ?」


色々と工夫しながらDIYを続けると、どう頑張っても飛行石20個は少なかった。これに6億も払った馬鹿はどこのどいつだ。流石に国相手に略奪はしたくないが、国が管理しているなら交渉次第で手に入らないかな。


まあ飛べるだけマシか。魔力の込め方次第でホバリングは出来るし非常に便利であることには間違いない。あと30個ぐらいあれば小さな家程度は浮きそう。


「飛行石をかき集めている貴族が居たはずなのじゃ。

確か、リャン帝国のゴルバード公爵なのじゃ」

「……誰だっけ?

あ、紫皇女の対抗馬で今はリャン帝国の元帥になってる人か」


そしてこの飛行石をかき集めていた人物について、キューが情報を持っていたので帰りにリャン帝国へ寄るかちょっと迷う。……元帥になるような人がかき集めているということは、空挺部隊でも作りたいのかな。


確か、リャン帝国もワイバーンの部隊は居たはずだし飛行石さえあれば空から強襲することも可能ではある。戦略の幅は広がりそうだな。そしてこういうのは1人だと意味がないから、部隊分の飛行石をかき集めているはず。


30個ぐらい持ってると良いなーとか考えながら、マウリス教国を縦断。結局空中に浮いた荷台をハルが押す形になっているので元とあまり変わらない。そうこうしている内に聖都が見えたので、一旦立ち寄ろう。例の第二聖女がいるっぽいし、たぶん第二聖女の軍もスターリンとの戦争に投入されるんだろうな。

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