第81話 現代人は目隠れキャラを警戒する

マウリス教国から東に行ってスターリン、スターリンから南に行ってアマゾネス族の領域、アマゾネス族の領域から西に行ってエルフ族の領域。そこから北へ行ってマウリス教国に戻ってきたんだけどエルフ族と交戦中だったので第三聖女の軍がお出迎え。


「……あなたは何者ですか?」

「うわ。目隠れキャラ、というか目隠しキャラだ。……盲目の聖女か?」

「ふん!」


どうやら聖女によって持っている情報量が違うらしく、目隠しを付けている第三聖女は手に持つ棍棒で殴って来るけど早えなおい。ルーが弾き飛ばすことを選択せず、受け止めることを選択したということは力も強そうだ。


あれ?何でこのマウリス教国視点南の国境に第三聖女の軍がいるんだ?確か元々は西側に第三聖女の軍が居て、スターリンとの戦闘のために東へ送られていたはずだけど。……んー、消耗が激しくなったから一旦撤退して中央に戻ったら今度はエルフ族が隙を突いて攻めて来たから第三聖女の軍で対応中ってところか。


第一聖女や第二聖女とは違い、指輪を大量に付けているのでお飾りではなく前線でバリバリ戦うタイプの聖女なのだろう。あとハチマキみたいな目隠しを付けているから盲目。キャラが濃すぎるしヒトラーさんが言うには3の数字が付く人は大体強いとか言ってた。


ということはリトネコ王国の第三王女も、リャン帝国の第三聖女もヒトラーさん的には『強い』扱いになるんだよな。将来的に、めっちゃ強くなったりするのだろうか。その片鱗は確かに見せていたけど……時間はかかりそうだとは思う。


……指輪を片方の手に5個以上付けていると戦闘ガチ勢なんだよな。指輪は結構大きな装飾付きのことが多いから指の可動域が狭まるし、4個までなら結構見かけるんだけど、5個以上になると親指に付けるか親指以外の4本の指のどれかに2個以上付けないといけない。


こうなると戦闘中に落下の危険性があり、戦闘中に装備が外れる=戦闘中に戦闘能力が大幅に下がるということだから避けた方が無難。うちの魔物達もスーを除いて大体指輪は両手8個に抑えている。


まあスーは数十個つけているんだけど。あと向こうが滅茶苦茶装備で底上げしていてもこちらの装備の質には敵わないしルー1人で攻撃を捌き切れている以上、滅茶苦茶強い存在でもないか。何というか、レベルに関係ない技術力は結構ありそうな雰囲気あるけど。


というかルーが遊び始めたなこれ。元々速度は落としての対応だし……でも、かなり強い人間とやり合えているから楽しくなってきたのか。ただずっと眺めているわけにもいかないのでアルに指示を出して蔓で拘束して貰う。四肢を拘束すると、流石に動きは止まるので人外染みた力は持ってないか。完全に速度特化っぽい。


第三聖女の軍自体はムーに洗脳して貰って停止させたから安全安心。男女関係なく魅了が通じるのはもはやバグキャラである。第三聖女も洗脳するのが一番楽なんだけど、獲物を前に舌なめずりする三流悪役ムーブもしたかったので洗脳は最終手段で良いや。


「な、何をするつもりです……?」

「ルー、ちょっとその布を取って貰える?」

「はーい」

「なっ……辱めるつもりなら殺しなさい!」

「あ、違う違う。その目隠しの方とって欲しかったの」


蔓で四肢を拘束された聖女に対し、目隠しにしている布を取ってと言ったらルーが服を木端微塵にして丸裸にしたけどそうじゃない。というか聖女の着ている服って結構高性能じゃなかったっけ……?


地味にスタイルは良いし、目隠し聖女は人気ありそうなキャラだな。まあ良いや。目隠しを付けているようなキャラの眼がどうなっているのかは確認したかったんだよね。


「……木材で出来た眼じゃな」

「一応義眼も付けているのか。じゃあそれをくり抜いてムーは天使の涙準備」

「え、治すの?」

「元々眼がないのか戦争中に矢が刺さって義眼になったのかとかは分からないけど、眼球が治るのか試しときたいし。その時の視力がどうなっているかは確認したい」


そして無理やり目を開かせると木で出来た義眼が入っている。あまり見慣れている光景ではないけど、こういうものがあること自体は知っているし、盲目キャラならそこまで驚くようなことでもないかな。


治すの?と、ちょっと不満気に聞いて来たムーはそれでも素直に天使の涙を用意して第三聖女のぽっかりと空いた眼にかけていく。すると即座に効果が出て眼球が復活したけど、改めてこの回復薬のヤバさを把握した。この第三聖女が言うには元々生まれた時に目が潰れていたらしいので、先天性の身体障害を持っていたことになるけどそれを治すって万能薬の域を超えているだろ。


産まれて初めて光というものを実際に目で見た第三聖女は、跪いて「神よ……」みたいなこと言ってるけどもうこれ通って良いのかな。さっきまでバリバリ戦闘を仕掛けていた武闘派聖女はどこに行った。何というか、治療して崇拝されるのは悪い気はしないけどそれで好意持たれるのはやだなあ。


その後、無事に国境地帯を通過出来たのでマウリス教国には再入国を果たす。ちょっとした旅行として、わりと色んなところを見れたし今回の旅は充実していたと思いたい。眼球を治した後の視力は、かなり良いみたいだし自分も目薬代わりに使えば視力は上がるかな。

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