第72話 現代人は婚活をしない

金髪スレンダーな修道女に聖都の中心部にある聖堂に呼ばれたので凄く面倒なことになりそうだという予感を感じながらも、昨日は性能の良い深層装備を3つも貰ったので行くことにする。この金髪スレンダー聖女も丁寧な対応だったし、周辺で1番強い大国と呼ばれるマウリス教国と何かしらの繋がりが出来るなら良い事なのだろう。宗教興味ないけど。


ちなみにこの人は普段南の都市にいる聖女で軍事力はトップらしい。マウリス教国の南に魔物と蛮族達のテリトリーがあるみたいだからその対応も兼ねているのかな。


東には民主主義国家スターリン。西にも大国があるのにこの国が栄えているのは軍事力があるからだろう。というか北、南、東、西にそれぞれ聖女を置いている辺りゲーム的にはかなりシンプルな構図だろうな。


そして教皇が呼び出した理由は、独身なら第一聖女(金髪スレンダー聖女)か第二聖女(爆乳聖女)を嫁にしないか的な話だったので速攻で断る。うちの魔物達が殺気を出していたので、自分がこの国に来てから、恐らくマウリス教国が一番危機的状況に陥った瞬間だったと思う。


というか第一聖女の方は教皇の娘でそれを嫁に差し出そうとするとか、どんな手を使ってでも味方に引き込みたい意思を感じる。それで国が滅ぶ寸前まで行ったのは笑うしかない。まあ魔物達が主人の結婚に猛反発するとか、1回直接会っただけじゃ流石にわからなかったか。


「というか娘を差し出してでも味方に引き込みたかったって、味方に引き込んで何をしたかったの?」

「……近年、スターリンとの戦闘が激しく、兵の消耗が以前よりも早くなっている。早々に終止符を打たないとマウリス教国は破綻するだろう。そうなる前にアリエルのダンジョン狂いの助力を貰いたかったのだ」

「お父様!それ以上は」

「あー、はい。絶賛戦争中なのか。そりゃ力は欲しくなるわな」


どうやらこの国はスターリンと戦争中のようで、西にいる第三聖女の軍は東に移動して第四聖女の軍と一緒にスターリンと戦争しているらしい。第一聖女の軍と第二聖女の軍も動かせよと思ったけど、大国だと一極集中は難しいか。隙を突いてリャン帝国や蛮族が仕掛けて来ないとも限らないし。いや、南にいる第一聖女がここにいるってことは南の軍も動かすのかな?


しかしまあハニートラップが露骨過ぎる。こちとらクイーンサキュバスに誘惑されてそれに耐える訓練をしているから余裕で耐えられたけど、普通の男なら堕ちそう。爆乳聖女とかわりと男の夢的な体型してるからな。


その後は隣国のスターリンについて聞くけど、まああの冒険者ギルドのマスターが言っていたことと一緒だ。十数年前に出来た国で、一応民主主義で、貴族はいないらしい。というか革命の時に貴族は全員殺されたとか何とか。


だけどスターリンを名乗っているだけあって、思想はわりと赤い。累進課税制度を取り入れているみたいだし、自分がスターリンの国民だったら収入の9割は税で持って行かれそう。というか収入上限年10億円って何?何でこれで国民の支持率がめっちゃ高い民主主義国家になれているの?


……これ、スターリンの国民は他人の足引っ張るのが大好きな国民性なのか。国民総中流を目指すとかどこかで聞いた言葉だな。間違いなく転移者がトップだし、その側近とかも漏れなく転移者っぽいからこその国作りだと思う。


この後はスターリンへ旅することを伝えると、教皇含めマウリス教国の人達はわりと絶望顔をしていたけど別にスターリンの味方をするつもりもない。勝手に争えという奴である。どっちが勝とうが自分の生活は何も変わらないだろうし。将来的にスターリンがこの大陸を統一したとして、自分には関係ない。ということに出来るだけの力はあると思う。


一応、収入の5割程度までなら税金払う意思あるけどそれ以上は却下だよ。もし10億円以上の収入は全部国に納めろとか自分に言って来たら、その時点で国を滅ぼす自信あるわ。……これ、資本家が存在しなさそうだな。共同所有の法律出来てそう。


例えば何かしらの事業を始めるとして、全従業員が一定割合で出資し、全員が株主にならないといけないとかなら利益はかなり平等に配分される。本当に建国から十数年で大国の1つにまで成長しているならどうなっているのかは気になるところだ。


「戦争中ってことは、気軽に国境超えるのは難しそうだな」

「あの冒険者ギルドのマスターが話ぐらい通していると思うのじゃが?」

「……手紙が片道1ヵ月はかかるとなると、たぶんアリエルの街にヤベーのがいる、ぐらいの報告で止まってそうなんだよな。それ以降のはたぶん追い抜かしてる」


とりあえず南東方向にある国境にまで移動するけどまた300㎞ぐらいは飛ばないといけないので今度はムーに任せる。ハルも飛び続けられるけど、ずっと飛び続けさせるのは申し訳ないからね。


そしてムーの方が飛行速度は速い模様。フィジカルも強いサキュバスは飛ぶスピードも速い。300㎞ぐらいあるのをたぶん5時間で突っ切ったから時速は60㎞ぐらい出ている。


ただ、スタミナはない感じなので300㎞飛んだ後は疲れてそうだった。普段は空高くを飛び続けることがムーはあまりないししょうがない。……それにしても民主主義国家スターリンの国境にある城の門の上、大砲っぽいものが見えるんだけどマジかよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る