第62話 現代人は疑い深い
シュヴァリエの国家元首様と冒険者ギルドのマスターの会話をスライム達に教えて貰い、あの冒険者ギルドのマスターがマウリス教国の関係者であることを把握する。これは前に来た刺客のことを、最初から把握していた可能性もあるけど恐らくマウリス教国側の人間ではない。
自分がもう少しアレな人間なら、冒険者ギルドのマスターが「あの刺客はマウリス教国からの刺客だ」と言った段階でマウリス教国を滅ぼしていただろう。魔王扱いされて怒る人は怒るだろうしね。それにも関わらず、素直に教えてくれた辺りはマウリス教国に潜り込んでいた他国のスパイじゃないかな。
潜り込んだ先で再度アリエルの街の監視をしろとスパイ業務をさせられるのは妥当というか適性があったんだろうな。8人にまで分身が出来るキューの情報収集能力と同程度には情報集めているしそういう人だと思う。
この街は、マウリス教国から見た時の北部地域の中心地でもあるし国境付近の街だから大国はここを監視しておけば北側の情報はある程度入ってくる。深くまで潜れるダンジョンもあるし、それなりに人もいる。自分が来る前から重要地域ではあった。自分が来てからは人が更に増えたし、たぶん最重要地域。
そう言えばあの刺客に関して、一度来た後は全く音沙汰ないしこれはあの冒険者ギルドのマスターが必死に止めたのだと予想。何か胃に穴が開きまくって蓮根みたいになってそうだな。多重スパイなんてやるから……。
あと、あの目隠れ王子が持っていた嘘発見機については俗に言う『嘘は言ってない』状態で反応しない代物だったので抜け道はある感じか。
「というか本当にマウリス教国からのスパイだったらもうちょっと上手く対応するよね」
「……まあ察しの通り、マウリス教国の隣国出身だ。国の名前を言うから少し飲み物を口に含んでくれないか?」
爵位として男爵の地位も貰った翌日。ギルドのマスターと1対1で話すため冒険者ギルドの奥の部屋へ入り込む。目隠れ王子との会話について話すとあっさりマウリス教国の隣国出身だということを認める冒険者ギルドのマスター。
……頭の上にはスーがスライム状態でいるし傍らには狐状態のキューもいるから全然1対1ではないな。単騎でも100階突破出来る魔物が2人もいるとかただの脅迫である。
会話をしていると、飲み物を口に含めと言うので出されている紅茶を素直に口に含む。すると、冒険者ギルドのマスターは出身国について話し始めた。
「俺の出身国はマウリス教国の東にある民主主義国家スターリンだ」
「ぶっ」
「吹いたってことは間違いなく転移者か。何がおかしいのか俺には分からん。しかし、そうだろうなとは思っていたがどうやって報告したものか……」
そして民主主義国家スターリンという矛盾塊みたいな国家名を告げたので吹いてしまうがこれ転移者チェックか。この人自身はたぶん転移者じゃないんだろうなあ。おかしい点に気付いてないそうだし。
「ちなみに国家主席はヒトラー・ムッソリーニだ」
「gb、ゴホッゴホッ……」
「おい主様に何をしたのじゃ!?転移者だけに効く呪術ならタダではすませぬのじゃ!?」
ついでにその国のトップの名前を真顔で告げる冒険者ギルドのマスターに、むせる自分。やばい変なツボに入ったかもしれない。これは優秀な転移者チェッカーだ。
というか転移者が好き勝手過去の偉人……偉人?の名前を使ってるのは頭良いな。日本人というか地球出身者である程度の学があれば100%偽名だとも分かる。
いや、ゲームのキャラの可能性はまだ捨てきれないけどこんな真っ向から色んな所に喧嘩売るような名前のキャラはゲームでは出さないだろう。でもその内ヒトラーの擬人化とかスターリンの擬人化をしているゲームは出そうだったし探せばあるかもしれない。擬人化……というか美少女化している同人誌なら見た気がする。
……これ行くべきかなあ。ゲーム自体に転移者が出る場合はラスボス候補筆頭だしマウリス教国の隣国でこの冒険者ギルドのマスターがマウリス教国で重用されてそうなのに元の国の任務の方を優先してそうなのはマウリス教国より規模が大きい可能性がある。
というかゲームの中の転移者だろうがゲームの外の転移者だろうが恐らく日本人が国のトップに立っているというだけでかなりの強国であることは分かる。まあダンジョン攻略は一段落したところだし、行ってみるのはありだな。
「……そのスターリンには馬車とかで何日かかる?」
「馬車なら一月はかかるんじゃないか?かなり遠いから行くならそれこそワイバーン運送に頼むのも1つの手だろう。マウリス教国を北から南東まで縦断しないといけないからな」
距離を聞いてうげえと思ったが、馬車の一日の移動距離が50㎞だとして1500㎞だから日本でいうと東京から鹿児島程度か?……流石に現代日本感覚でも遠いし、行くなら行き当たりばったりではなくちゃんと計画立てるべきか。あとはサウイマ商会のケイトさんに、スターリンについて聞いておこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます