第52話 現代人は勝ち馬に乗りたい
リャン帝国軍とシュヴァリエ軍の衝突から数日後。無事にライト王子とヘンリエッテ皇女が帰還し、停戦状態となった。どちらの勝利でもないとか何のための戦争だったんだと思ったらヘンリエッテ皇女がリャン帝国軍に対して反乱を起こす。いやライト王子はこれ何をどう吹き込んで洗脳したんだよ。
というか惚れた男のために国を丸ごと裏切って親兄妹と敵対するとか戦国時代してるなあ。しかも紫皇女を慕う軍属の人間が多かったからリャン帝国軍が完全に真っ二つだ。
ただまあシュヴァリエ軍は前の戦争で半壊したようなので再建にはかなり時間がかかるだろう。……あの最初の横陣にいた人はほとんど冒険者上がりの人で構成された軍で、伏兵として伏せていたのは建国当初から付き従っていた人で構成された軍っぽいので結構冒険者側からは嫌われたっぽい。
これをダンジョンの攻略で悪評払拭するのがストーリー展開だったのなら自分のせいで成り立たないな。今だとアリエルの街のダンジョンで20階を突破したところで大半が「ふーん」程度の反応だろう。誰かさんが90階まで攻略しているから冒険者間で話題になっているのはそっちの方だ。
ちなみにリトネコ王国軍は精鋭部隊とされていたとある伯爵の軍の装備が全部なくなったせいでその部隊が解散し、軍力が著しく低下したとか何とか。……スライチ達と蛇に負けていた軍が精鋭部隊扱いだったのはちょっと意外だったし、あの爺さん伯爵は結構偉い人だったんだろうなあ。
「これが前回の輸送で売れた素材と装備のリストだ。各都市でサウイマ商会が9割以上買い取っている」
「あれ、全部買うって話だったのにお残しがあるな?
……ああ、深層装備は全部買うためのお金が足りなかったか」
「むしろこれだけの素材をよく買い取ってくれたレベルだろう。あとリトネコ王国からはセリエル伯爵の軍が私有地を荒らした件について謝罪が来ているが……没収したという装備はどうしたんだ?」
「全部リャン帝国軍に売り払いました」
「……リャン帝国は今北のヘンリエッテ皇女が率いる軍と南のゴルバード公爵が率いる軍が衝突している。どっちへの肩入れだ」
「半分ずつですね」
「…………まあ良い。どちらを支援しようが俺は何も言えん」
なんか結構リャン帝国の人が代わる代わる接触しに来るので、装備の売却は結構スムーズに行えた。あの爺さん伯爵の部隊の人数が200人ぐらい居て、ヘンリエッテ皇女とその対抗馬っぽい人に100人分ずつの装備を売却したらそれなりのお金にはなったけど今回ワイバーン運送で売れた素材の方が数倍高い金額になるし、装備を売った意味はあまりない。
「アリエルの街から自分の持つ私有地までの土地を全部買おうと思ったら幾らぐらい必要です?」
「流石にその規模だと数百億円はかかるだろうな。いや待て、ある程度は正確に計算する。えー、エワル湖周辺の土地からアリエルの街まで、20㎞四方の土地を全部買い取るとなると……ここ近辺の土地が10m四方で1000万円程度だから……理論上は400億円ほど用意すれば買い取れるだろうがもう元の所有者であるリトネコ王国は死に体だぞ?」
「買うという行為に意味があるからお金は払います。その払う先は、リャン帝国かシュヴァリエになりそうですね」
アリエルの街から自分の所有する湖周辺の土地までの価格は大体400億円。これがそこまで遠い金額じゃないから自分の金銭感覚は狂い始めたな。まあ今回の素材売却だけで5億円近い金額になっているし実際そう遠くはない。
……問題は、このアリエルの街を最終的に保持するのはどこかということだけ。リトネコ王国は死に体だけど、王都圏は川以外から侵攻し辛いし、リトネコ王国の国土自体は四角で整っているんだけど、実際は右下部分のアリエルの街へのアクセスは悪い状態。
冒険者ギルドのマスターが大きな権力を持っているぐらいだし、リトネコ王国側からすれば斬り捨てる選択肢もある。まあ守りやすい状態になっただけで、軍力低下しているからそのまま食われそうだけど。となると、リャン帝国かシュヴァリエの2択。
紫皇女がこのまま内戦で勝利して、シュヴァリエに合流する流れならもうシュヴァリエがアリエルの街を保有しそうだしそっちとの交渉で良いかな。
……いやでもあの王子の国がストーリー崩壊した状態で大きくなるとは思えないんだよなあ。ストーリーありきで大きくなっていくなら、自分が意図的でも意図的じゃなくても致命的な邪魔をした瞬間に拡大が終わりそう。まあシュヴァリエが負けそうならその時はシュヴァリエに勝ちそうな国に乗っかろうか。
「……土地を買って、そこで建国するつもりでもないんだよな?」
「……周囲全部が自分を敵だと見なしたら無所属宣言でもします」
あとは今以上に圧倒的な力を手に入れて、誰も手出しできないようにするという手は最後の手段かな。実質建国ルートだけどどこもわざわざ自分と敵対するようなことはしないでしょ。自分も国家運営みたいな面倒なことはしたくないし……ただまあ、無政府状態の国を作るならありかもしれないと思った。
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