第47話 現代人は知識が頭の中にない
ワイバーン運送がサウイマ商会相手に優先的に荷物を運び入れるとして、そのメリットを提示して欲しいと伝えると待ってましたと言わんばかりに色々と優遇することを伝えられた。
「他国との取引も多いですから、その際に搔き集めているという深層装備を入荷して来ますよ」
「うーん、もう深層装備に金かけるよりダンジョンで自力で掘る方が早そうなんだよな……」
「市場が崩壊するレベルの素材を持ち込んで来ても、全て崩壊前の相場価格で買い取ります」
「……サウイマ商会ってそんなに余剰資金あるの?」
各素材の最低価格の設定とかもしてくれるみたいだけど自分で最低価格把握しないとここら辺は頷けないな。しかしまあワイバーン運送が素材を運んだとして、売り場がないと困るのも確かだし基本的にはサウイマ商会に卸す流れになるか。
互いに牽制し合いながらの質問が飛び交った商談が終わった後は、この世界について尋ねてみる。
「……この世界のベースになっているゲームのストーリーについてケイトさんは知っていますか?」
「え?嘘ここどこかのゲームの世界なんですか!?」
「あ、いえ何でもないです。今日は色々とありがとうございました。一旦話は持ち帰って前向きに検討をしていきます」
するとどうやらケイトさんは、この世界がゲームの世界だとは思わなかったらしい。ついでに言うと、この世界のベースになってそうなゲームについて、原作知識はないと。まあ自分にとっても仮説の1つでしかないし、自分も原作分からないけど、ここまでストーリー的なものがあるならゲームの世界で良いでしょ。
ついでに他の日本人を見たかだけ聞いたら数人会ったとのことなので結構居るんじゃないかな日本人。そのわりには蒸気機関とか旋盤とか何も開発されてないけど何やってるんだ日本人。いやまあ自分も蒸気機関作れ言われたら作れないし、技術革新やるつもりないけどさ。下手に発展しまくってそれが元で戦争になったり核開発されると嫌だし。
用が済んだのでアリエルの街に戻ると、自宅前で土下座しているリャン帝国軍の兵士とローの姿があったのでまたトラブル発生したのか。
「今回はどうしたんだ?」
「えーと、この人から話を聞いた方が早いと思います」
「あ、アリエルの魔王よ、此度の戦にリトネコ王国側で参戦しないで欲しい。そのために最高級の盾を持って来た」
「……敵にならないで欲しい、で貢物貰えるようになったのか」
トラブルかと思ったら、単に敵にならないで欲しいと賄賂渡しに来ただけだった。どうやら初回の会戦ではリャン帝国軍が優位に戦い、一時的にリトネコ王国軍とシュヴァリエ軍は後退したらしい。それでこのアリエルの街も戦場になる可能性が出て来たわけだけど、そこで自分の存在を思い出したから貢物持って来た感じか。
……あー、この街誰かさんのせいで城壁の一部が吹っ飛んでるし、守り辛い街だから余計に取った取られたを繰り返しそうなのか。その際に自分が敵対したら詰むから盾を持って来たと。
深層装備じゃないけど恐らく素材はヒヒイロカネ的な金色の金属だな。ルーとローがフェアリーパラティヌスに進化した際、盾の1枚がこれになっていたはずなので相当質の良い装備だとは思う。自分用の盾を更新したかったところだし丁度良いな。
「あー、今回の戦争では敵対行動しないから安心してくれ。でも長期戦になって延々とこの口約束が続くのは嫌だから……まあ1ヵ月間は敵対しないわ」
「ありがとうございます!」
あ、今思い出したけどこの人紫皇女のすぐ後ろに居た人でスーの砲撃範囲外ギリギリにいた人だ。あの紫皇女に直接指示出されていた気がするし軍でもそれなりに偉い人のはず。それが土下座して貢物持って来るとか自分以上に自分達の強さを把握してそう。正直ここまでされるとは思ってなかった。
そしてリャン帝国から貢物を貰ったということでリトネコ王国とシュヴァリエ側に衝撃が走ったのか、リトネコ王国側からも税の免除を言い渡される。納税しなくて良いから敵対しないでくれってもう国家としての最終手段じゃないかそれ?あとどちらかというと破壊した壁や家屋の賠償金額減らす方が効果的ではあると思う。
「あれ?冒険者って天引きが納税みたいなものじゃないんですか?」
「いやそれとは別途、収入から税は決まるぞ。お前はもう納税しなくて良いようになったが」
「……それ抜け漏れ滅茶苦茶発生しません?というかそこまでしなくても基本的に喧嘩売られない限り敵対しないと思いますが」
「どちらも敵対しない理由というか、ある程度の確証が欲しいんだろ。
……またリャン帝国軍が攻めて来る可能性は高いから、一応冒険者ギルドのマスターとして、避難を推奨しておく」
「それで家が燃えたら嫌ですしリャン帝国軍も貢物持って来たのに喧嘩売るなんて出来ないでしょうから大丈夫ですよ」
何というか、一個人が国家規模の戦力を持つと動き方が難しいなあと思った瞬間である。というかリャン帝国ぐらいの規模が相手ならもう勝てるだろうしね。Aランク冒険者の数は、リャン帝国で9人。一桁しかまともな相手になる人がいないなら、まああの魔物達を止めることは出来ないだろう。
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