第39話 現代人はパターン化が好き

ルーがフェアリーパラティヌスへと進化したことで、前衛はルー1人で済むようになり、一気に80階までガンガン進んでいく。マッピングはもう済ませているし、ダンジョンの壁はスネーク君が溶かせるため、ショートカットも容易。ローがお留守番中に80階へ行くのはちょっとローに申し訳ないけど、ルーがやる気満々だからそっちの意思を優先させた。


というか早く80階のワープポイント解放しておきたかったしね。80階以降にもし良い狩場があればそこを活用したいし。そして80階に到着すると、大きなワンコがお出迎え。ステータスではフェンリルってあるし、ダンジョンでは初となるSランクの魔物か。


対面した直後、自分に目掛けてとんでもないスピードで突進してくるワンコは、スネーク君の土の壁に激突して止まった。いや違う。ルーがワンコの横腹部分に剣を刺して止めてるから壁との激突前に停止してるな。直後、ハルとムーが上空から槍で突き刺し、完全に動きを封じる。アルも蔓での拘束入れてるね。有能。


そしてキューからバフを貰ったスーの光線がワンコの頭を貫きダウン。一応このダンジョン、20階毎のボスは格段に強いのに相変わらず呆気なく終わるな。


「滅茶苦茶早かったのによく剣で止められたな……」

「むしろ遅かったよ!剣を刺したら勝手に斬れちゃった」


致命傷になったのは、ルーの剣が刺さってからも動き続けたため、横腹から尻にかけてざっくり斬られた部分だろう。一番後ろの自分を潰す判断をする辺りこのワンコは賢かったけど、前衛が生存している最中に後列まで攻撃が届くような布陣にはしてないぞ。


「あれ?足に装備あるのじゃ」

「え?

おっ、深層装備ってことはこのダンジョン深くても100階までか。

毛の色と同化してるから分からなかった」

「見せてー!

あ、速度と風属性魔法と対風属性魔法にプラス3つだって」

「……ん?

ルーはなんかステータス的なもの見れるようになったのか?」

「うーん?装備した時に強くなる部分は分かるようになったよ?」


フェンリルを解体している最中、後ろ右脚に輪っかみたいなアクセサリーがついていることに気付くキュー。どうやら深層装備のようで、速度にボーナスのある貴重な装備だということをルーが見ただけで判別する。


装備鑑定的なものを持っているなら、今後は今までの様に毎回検証しなくても良いのか。あと『+3』と言っていたことからステータスは細かい数字が見えているのかと思ったら『+++』のような表記らしい。具体的な数値は分からないって感じか。


まあ鑑定術士がいて自分以外にもステータスが見れる人がいる以上、装備のステータスが見れる鑑定能力というかスキルを持つ存在はいるか。ルーがそうなってくれたのはありがたいし、今後は装備した人に殴ったり殴らせたりして色々と報告させる作業も必要なくなる。


個人的にはこのダンジョンで初めて手に入れた深層装備だし、最初からずっと一緒に頑張って来たルーやムーに渡したいけど、ここはハルに渡す。風属性魔法を使えるのはハルだけだし、速度装備は誰が持ってもパーティーの戦力が底上げされるからね。


個人の感情より、パーティー全体のことを考慮して装備は振り分ける。これがこのパーティーのルールだし、自分がそう決めたルールだ。


あとは毛皮とかそれなりの装備になりそうなので全部解体して持って帰ることに。たぶんこのお肉は美味しい。犬系統の魔物の肉って基本美味しいからね。地球に居た頃はヴィーガンじゃないけど流石に犬肉はなあって感じだったけど、この世界来てからは普通に食べている。あとルーとローとムーの大好物である。こいつら基本的に肉全般好きだけど。


一通り作業を終え、81階を覗いてみると出て来る魔物はヴォルフという犬系の魔物。なんか小さいフェンリルっぽいのでうちのパーティーが苦戦することはないがこいつ一応Aランクの魔物だな。


Fランクのウルフと何が違うんだと思うぐらいにデザインは一緒だけど移動速度はめっちゃ早い。ただうちのパーティーの面子の方が早い。もうそろそろ自分の目では追いつけないから本格的に自分の身の安全は後列にいるスーとキューにかかっている。


そしてリスポーン地点が多いのか、群れでの登場が非常に多い。何ならこれリスポーンした時点で2、3匹はいるな。時々10匹以上の群れで出て来るので前衛がルー1人だと捌き切れないことも。


……しかしまあ、11匹群れが出て来て全員が目にも止まらぬスピードで突っ込んで来るのにその内の9匹は狩れる辺りルーの戦闘能力がおかしい。討ち漏らした魔物もアルとスネーク君が壁を作ってしっかり止めてくれているし。


で、犬系統の魔物の共通点として攻撃力と速度が高い代わりに防御力は低い。スーの極太光線を解禁すれば一発で瀕死になるのであとはレベリングしたい魔物でトドメを刺すだけの作業。これは良いレベリング地点だ。


何というかケルベロスの時とやってること変わってないけど、紙耐久で数だけは多い存在がレベリングには向いているから犬系統の魔物が出てきた時点でそこはもう狩場だ。

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