第24話 現代人は暗記が苦手

冒険者ギルドのマスターへの報告で、60階踏破は後回しにしようと魔物達にも話をして、今日の探索は打ち切る。そしていつもの受付で、素材を提出するが、魔物達は指示通りグレータードラゴンの素材を提出することはなかった。


しかしながらルーがサキュバスの尻尾やらサキュバスの魔臓やらを提出したために根掘り葉掘り聞かれることとなり、無事ルーが口を滑らせて「61階にサキュバスが出た」ことを喋ってしまう。アホの子であることは認識していたけどここまでアホの子だったとは思わなかった。


あ、いやこいつ確信犯だわ。冒険者ギルドのマスターが机に突っ伏した光景を尻目に、こっち見てニッコリ笑ってたし。まあどうせいつかは話をしないといけないことだったから別に良いか。どうせ明日から61階以降の素材しか出せなくなるんだ。


「……俺がこの街に来てから、この街の60階が突破されたのは初めてのことだよ」

「感覚的に100階か200階まではありそうなんですけど何で60階で詰まってたんですかね?」

「普通はそんな速度で魔物進化しないからなあ……。

1日に何体の魔物を狩ってる?」

「えー……59階のケルベロスは1日500体ぐらいのペースでしたね」

「そこがまずおかしいんだよ……1回の戦闘を何分で終わらせたらそんな効率になるんだ……」

「最短で2秒ですし分単位で戦闘に時間かけるわけないじゃないですか」


ダンジョンは無から魔物が生まれるのだが、リスポーン地点が幾つか存在しているタイプのダンジョンで、そのリスポーン地点からある程度距離を取ると魔物が発生する。


つまりは、ある程度慣れたらリスキルは可能だ。流石にリスポーンしてすぐに攻撃出来る位置を陣取っているとリスポーンしないけど、距離があって視界に映っていなければ問題ないため、さほど移動せずに再戦闘になる美味しい地点が多くある。


グレータードラゴンやサキュバスの素材は普通に売れたため、結構な額のお金が入って来た。どうやって活用するのかは知らないけどドラゴンの筋肉もサキュバスの尻尾もまだ動いていたし何かには使えそう。合計で1憶ぐらいになってくると、Aランク扱いの天引き額とDランク扱いの天引き額の差額がそれなりの額になってくるな。


そしてその1億でローにも魔剣を購入。経済回ってるなあ。ルーの魔剣とは対照的に、魔力消費量が若干増えるけど火力が2倍になる感じの魔剣のため、ローにはぴったりの魔剣だろう。


基本的には倍率を掛け合わせていくゲームだと考えているので、スーとかには魔法威力が倍率で上がるような装備を沢山持たせている。お蔭でレーザーがグレータードラゴンの心臓を貫いていたからきちんと機能はしているのだろう。


そう言えばあの王子と姫と奴隷のパーティーはどうなったんだろうと冒険者ギルドのマスターに聞くと、王都の方へ行ったとか。これはあの宰相がゲームキャラの一員である可能性高いな。結構な色物キャラだったし強そうだったし。


もうここがゲームの世界だと疑ってないけど、ストーリーを推察するのは中々に楽しい。原作知識ない方がこういう考察楽しめそうだしね。しかしまああの主人公属性の王子が王都に行ったということは、この国が中心になって戦争とかしていくのかな。流石に人殺しそのものには抵抗あるけど……戦争で敵対した敵を自分の手で殺すことはないだろうし、魔物達が殺しても「あ、死んだ」以外の感想無さそう。


自宅に帰ると、スライチがずるずると床を這ってのんびりしていたので支配下にある魔物でも支配層がいないと野生化することを把握する。ついでにスライムメイジからの進化は、当分先であることも把握する。下水道だと他の魔物あまりいないしレベルアップ速度は当然遅くなる。


……ダンジョンで言うなら、地下3階ぐらいの深さか?それならダンジョンと下水道を繋げられないかな?そうすればスライム軍団のレベル上げが捗るだろうし、上手く行けばダンジョンの3階をスライムの楽園とかにすることも可能な気がする。


そうなると、冒険者達が3階を突破出来なくて詰むか。いや流石にスライムの軍団ぐらいは突破するだろうからダンジョンを乗っ取るのは難しそうだな。とりあえず、下水道の配置がどうなっているか把握してダンジョンと繋げられるか確認しよう。


あとは、穴を掘るのが得意な魔物が繋げれば大丈夫か。スネーク君とかは結構地面掘るの得意そうだし、土属性魔法を使えるなら何とかなるでしょ。


「出来なくはないですが……下水道に行かないといけないですか?」

「行ってくださいお願いします」


なお下水道行って穴を掘れとスネーク君に言うと、メデューサが持つ髪の毛の蛇達に一斉に睨まれちょっと肝が冷えた。というか寿命縮みそうなぐらい怖かった。あの蛇達噛み付き攻撃も出来るし思っていたより飛距離あるから一瞬で喉元食いちぎられそうなんだよな。


しかしいやいやでも言うこと聞いてくれるのは本当にありがたい。いつも尻尾に乗って移動の楽をさせて貰っているし、戦闘面以外では一番お世話になっている。戦闘面でも目潰しの砂担当して貰っているし活躍の幅が広いから便利過ぎるわ。

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